彼に食って掛かられる
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「名無し、見ーつけた。」
(宗次郎…!!)
思わず笑顔になりかけたが、はっとした。
(…どんな顔を向ければいいわけ…!?)
さっきまでの余裕もなんのその、先程まで吹っ掛けられてた疑惑のせいで、すごーくものすごーく意識してしまう。
(そ、宗次郎にまで、私が宗次郎のこと好いてるとか思われたらおしまいだ…!身の程知らずも底無しですねとか言って、微塵切りにされるに違いない…!)
(そうだ!いかにも好きじゃないっていう顔をすれば!)
「……何してるんです?」
「えーっと…………死んだ魚の目の練習?」
「その辺の溝に突っ込んであげましょうか?」
きらきらきらとした笑顔で殺気を向けられた。気がした。
「ふうーん…どうやら。」
宗次郎は辺りを見回す。
「…名無しさんを襲うなんて物好きもいたんですね。」
「は?」
「てめー、いきなり現れて何言ってんだ?」
あ?という顔をするチンピラの皆さん。……そりゃそうだわと私は同情した。これは説明しないと。てか、説明しないとわかんないよね。
くいくい、と宗次郎の袖を引っ張る。
「ごめん、ヒーロー現る!みたいな場面で悪いんだけどさ、宗次郎。私が襲ったの、この人達のこと。」
「は?」
「でも、なんか許してくれるみたいだから、余計な茶々入れないでくれないかな?」
「……」
目を丸くして、ちょっと待ってください、と宗次郎は考え込んだ末。
「え?四乃森さんに振られて…もう誰でもいいやと自棄になって?」
「いやいやいや!邪推しすぎ!」
宗次郎は周りをもう一度見渡し、何やら思い当たった末。イラついた様子で私に尋ねた。
「…なんで名無しさんが襲ってる側なんですか。そろそろ空気読んでください。」
「ああよかった、軌道修正できた!」
「なんで名無しさんが襲ってる側なんですか。」
さっさと答えろと言われた気がした。
「…ああ、なかったことにするのね。だってね、仕方ないじゃん。」
「いい加減にしてください。そろそろヒロインらしく振る舞ってもらえます?」
「え?ヒロインらしく?」
「ロミオとジュリエットとか知らないんですか?」
「ロミジュリ?え、なにそれおいしいの?」
「もうちょっと女の子らしくするとかあるでしょう?」
「充分女の子じゃん!だってこの人達、私をナンパしようとしてたんだよ!他の誰でもない、この私を!!」
どや!と胸を張った瞬間。……暫くして、何かいらない墓穴を掘ってしまったような気がした。
否、掘ってしまったに違いなかった。
宗次郎は聞こえよがしに三、四人の男の人達に告げる。
「ほら、あなた達。名無しさんに手を出そうとしたんですよね?」
「え、結局俺らが悪いのか?」
「このタイミングでまた吹っ掛けんのかよ?」
……ああああ。怖い!なんかオーラが黒い!なんか笑顔も何もかもが真っ黒!!もう見てらんない!
思わず目を覆うと……
あれ?体が宙を浮いた。
「ふえ?」
「……」
……え?宗次郎さん?宗次郎さん?
目を開けると少々たまげた。
何か、抱えられてるんですけど。
それも、犬っころみたいな持たれ方なんですけど。
…ヒロインしろって人に言うなら、ここは普通お姫様抱っこしない?
いや、そんなこと言ってる場合じゃないない。
「え?宗次郎さん?は?」
「……」
え?なんで無言?
え、なんでそんなピリピリしてるわけ?
っていうか!
「ぎゃー!変態!おっぱい当たってるって!!」
「は?ないものを触ってるように言わないでください。」
「はあ!?」
暴れようとすると、
「もう黙っててください。」
「!もがっ!?」
口を塞がれた。もがもごしている内に宗次郎はにこにことチンピラ達を見やる。
「彼女に目を付けるとはなかなかですね。」
(訳・こんなじゃがいもに)
「お見逸れしました。」
(訳・こんな貧相なじゃがいもに)
「うん、そうだなぁ。分けてあげたいけれど。」
(訳・こんな貧弱なじゃがいもで飢えが凌げるなら)
(殺す…宗次郎は私の手で殺す!)
けれど、宗次郎は颯爽と言い放った。
「でも…これは僕のだから。あげません。」
……。
「さ、行きますよ。名無しさん。」
「え、あっ……」
そう言うが否や。
全身を襲う風の勢い。…縮地かなぁと感じた。
次々に迫り来る情景がぶつかりそうで、また目を瞑らざるを得なかった。
そして、ぎゅうっと宗次郎にしがみついた。
──なんかちょっと…ドキドキしてしまっていた。
She is mine
彼女は僕のもの。
(ね、宗次郎。ちょっと…速過ぎて怖い。おろして。)
(……)
(…ねーってば!そんなに怒らなくてもいいじゃない。)
(……(そんなに抱き付かなくたって。僕だって男なんですけど。))