彼に食って掛かられる
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
初めて名無しさんと会った時のこと。
「宗、今度名無しに会わせてやる。」
そう志々雄さんが言ってたのは覚えてる。
「名無し?…ああ、この間志々雄さんが雇ったっていう方ですか?」
「ああ。…まあ雇ったというより、」
「?」
「拾ったって感じだな。」
人を拾うなんて初めて聞くなぁって思った。その翌日に名無しさんと対面して、なるほどと思いましたけど。
「初めまして!お世話になってます、名無しと申します!宗さんのこと志々雄さんからよく聞いてます。」
「…初めまして。」
「うわぁ…宗さん女の子みたい!初対面なのにすみません、でもすっごくかわいいですね…!」
…初対面の人に宗さんなどと呼ばれたのは後にも先にもこれだけだった。他にも色々突っ込みどころがあったけど、あまりこれ以上余計な情報を入れたくなかった。
そう思ったところに、
「宗、ここのこと名無しに教えてやってくれ。」
「…え?」
「あと、まあこいつ少々世間知らずなんだが、ついでがあれば一般教養も教えて鍛えてやってくれ。」
「宗さん、よろしくお願いしますっ。」
こうしてこの日から僕の日常は変わった。
名無しさんは腕も立たないし、物覚えも悪かった。始めは僕もあれこれ言おうとはしなかったけど。
それはある日を境に変わった。名無しさんと一緒にどこかに出掛けた時だった。
「宗さん宗さん。」
「?何か………」
「わーい、引っ掛かった、引っ掛かった♪」
振り向いたら名無しさんの指が頬に刺さり、彼女は歓喜してました。
「……」
「宗さんって意外と隙だらけですね♪」
「…あはは、本当ですね♪」
「…でも、名無しさん。」
「?」
「あなたは欠陥だらけですけどね。」
「!いったああい!ほっぺ、ほっぺ千切れる!」
「それは名無しさんが弱いからですよ。」
「どういう理屈!?」
ほっぺを抓んでみたけど、なんか心なしか気持ちよくて少し強めに抓んでた。
「いひゃい、いひゃい!」
「え、なんて言いました?よく聞こえませんね。もっとはっきり言ってください。」
感触と困る顔がなんとも面白くて楽しんでいた。
「いたああ…これ表情筋死滅した…」
「1が0になったくらいで大袈裟だなぁ。」
「点数?顔面点数?…本当はそんなキャラなんだ…」
「名無しさん限定ですよ。人にこんなことはしませんよ。」
「あいあむあひゅーまん!」
すごく爽やかで素敵な王子様だと思ってた…ドSだなんて聞いてない…私Mじゃない…とか何とか聞こえてきました。
意味はわかりません、翻訳の方が必要だなぁ。
「ところで、名無しさん。」
「はい?」
「……前から思ってたんですけど、気持ち悪いから呼び方変えてくれません?」
「うーん、じゃあ宗やん!」
「」
「瀬田氏!瀬田くん!」
「」
「坊や!」
「殺しますよ。」
「宗次郎様!」
……はあ。
「面倒くさいなぁ。」
「真面目に考えてますよー。」
「もういいや。もういいです。何もつけなくていいですから。」
「じゃあ…」
宗次郎、と呼ばれた。
「それでいいです。ただし身分は弁えてくださいね。」
「はーい。」
まったく…一緒にいるだけで著しく疲労しますね。親の顔が見てみたいなあ。
「宗次郎はさぁ、」
「はい?……」
振り向こうとすると、彼女はまた人差し指を突き出していた。
「あ、引っ掛からなかった。」
「……何なんですか。」
「宗次郎はさ、甘いもの好き?」
「…は?」
「いや、あれ…美味しそうで。食べていかないかなぁと思って♪」
彼女が指し示す先には甘味処。店先で主人が運ぶ蜜豆が目に入った。
「私今手持ちないんだけど…今度返すから!ね、一緒に行ってください!」
「…今日だけですよ。」
「わーい♪ありがとう!」
キラキラと輝かんばかりの笑顔。
妙な生き物だなぁと思ったけど、まあ退屈はしないかな。
僕なりにしっかり調教していくとしますか。
Hello, crazy
(あ!!志々雄さんに貰ったお小遣い、全部使っちゃったんだった!やばい、宗次郎に返せない…!)