彼に食って掛かられる
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こんにちは。
実は今日…四乃森さんに告白をするのですが、つれてきた宗次郎に色々食って掛かられておりました。
改めて真面目な状態へと戻していきたいと思います。
「食って掛かられるって、なんですか?」
「そのまんまの意味です。」
「やだなあ。名無しさんなんて煮ても焼いても食えないじゃないですか。」
「怖いこと言わないでください。」
……改めて真面目な状態へと戻していきたいと思います。
「まあ、そうだなあ。」
「?」
「緊張したって、緊張しなくたって。結果は同じですよ。」
「そ、そうだよね!きっと大丈夫、大丈夫…」
…そうだよね、宗次郎いいこと言うじゃない。そうだ、緊張に気を取られてたって何もいいことはない。全力を尽くすことに意識を向けなきゃ。
と気を取り直して前向きに感心してたら、まさかの言葉が返ってきた。
「え?まさか成功するとでも思ってるんですか?」
「…!応援してよ。」
肩を並べながら歩く二人は、蒼紫の部屋へと向かっていた。
「四乃森さんお部屋にいるかな…」
「さあ。名無しさんがストーカーするから出て行ったかもしれませんよ。」
「ストーカーなんてしてないもん。」
「だって脳内で逢い引きして興奮してたでしょ。」
「!してないもん!!」
「もしくは変な病気の名無しさんに関わりたくないか…」
「まだ膀胱炎引きずるのかあなたは。」
「弱いくせにやたら口が動くじゃないですか。」
「泣いていい?」
…ああ、宗次郎について来てもらったら緊張が解れるんじゃないかと思った私が馬鹿だった…。
いやまあ、ある意味解けたけど…コレジャナイ感。
「うーん、四乃森さんいるんじゃないかなぁ。」
「うう…そうかなぁ。」
「鼻血出さないでくださいよ。」
「人をスケベみたいに言わないでください。」
「汚したらちゃんと弁償させますからね。」
「え、まじで?」
「…あ。」
宗次郎の声に振り向くと。
四乃森さんが部屋を後に立ち去るところだった。
「あ…」
「…名無しさん、どうしたんですか。行ってしまいますよ?」
「あ、う、うん…!」
準備は出来てたつもりだったけど、つい出鼻をくじかれると身も蓋もなかった。
そうしている間にも、四乃森さんはこちらには気付かずそのまま回廊に向かっていく。
「じれったいなぁ。呼び止めてきますから待っててください。」
「う、ううん!大丈夫っ…」
思わず出た言葉に宗次郎はこちらを振り返った。
「お…追いかけて渡してきます…!」
ぎゅっと恋文を持つ手を握りしめる。
様子を見てた宗次郎は溜め息を漏らし告げた。
「また弱腰にならないでくださいよ?」
「が、頑張る…!」
張り切ってますね…お手紙ぐちゃぐちゃになりそうだなぁ。あ、気付いたみたい。慌てて持ち直してる。
「い、行ってきます。」
「…失敗したら奢るって話ですけど。」
「?」
「“成功したら”に変えておきますね。」
「!恩に着ますっ。」
恥ずかしげだけど満面の笑みがこちらを向く。励ましてくれてありがとう、なんて言って彼女は駆け出した。
そんな彼女を見送った後には、仕方ないなぁという言葉が出て来た。
…うん、仕方ない。なんだかそういうすっきりした気持ちになってしまった。
というわけだから。そう、何のお菓子にしようかな。
…唐辛子入りなんてどうかなぁ。
ほろ苦さと幸福感
(あの笑顔はなんだか、ずるいなぁ。まあ、もういいや。)