短編集

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名無しさん…」

「ん…あ…ッ…//」

「もっとちゃんと唇をこちらに…」

「で、でも…」



目の前でくすり、と可愛らしく微笑む彼。

二人を結ぶ甘くほろ苦い芳香と絡んでいく味覚にくらくらと眩暈を感じそうになりながらも。
追い打ちをかけてくる彼の言葉に自制心が必死に顔を覗かせる。これ以上、彼の前で彼の中で溺れるのが、堕落した恥ずかしい様を見せてしまうのが、怖くて。

そんな様をもどこか楽しそうに見守りながら。宗次郎は名無しの頭を撫でて、さらに甘く、甘く囁きを落とす。
酔いの元であるショコラを唇に僅かに滲ませながら、“せっかく名無しさんがくれたショコラなのだから”と。



「ほら、あまり離れてしまうと溢れてしまいます。」

「…っ、ん…//」



未だに初心なのか、それとも宗次郎の行為を受け入れ切るのにもう精神が持たないのか、或いはその両方なのか。真っ赤に震えて、恥ずかしい、と目で訴えかけている名無し



「…だってこちらの方が、名無しさんも好きみたいですし?」



甘い顔で少しからかうように囁くと、頬を染めたまま困ったように視線を逸らす。

動かさない笑顔の下で“ああ正直だなぁ”──そんな風に宗次郎は思いながら、名無しの身体をもう少し深く抱き込み、唇を寄せて彼女の下唇を啄んでみせる。
暫くもの間何度も何度もそうしてみせると、やがて名無しの唇はゆっくりと開かれていき、宗次郎を誘い込む。



(可愛いなぁ。)



堪能するように暫し見つめて。そして、焦らすようにそっと舌先を這わせ──少し溢れそうになるショコラ。
“ん”と鼻に掛かったような名無しの艶めく声が漏れる。やがて唇を塞いで舌を絡ませると彼女の肩が揺れた。



「は…っ、名無し。」



もう半分以上溶けてしまったその元を名無しの咥内で貪り、はあ、と宗次郎は彼らしからぬ吐息を漏らした。
名無しはぎゅう、と宗次郎の背に回していた手に力を入れる。

二人の空間に満ち満ちているショコラの甘い香り。
彼女の名前と愛を囁く宗次郎の吐息も、それを受け入れた名無しの吐息も唇もその芳香に酷く濡れていて。酔い痴れたような瞳をしているのも名無しだけではなく彼も同様だった。



「…その顔、堪りませんね。」



彼女の唇の端を拭うように軽く舌を這わせながら。宗次郎は呟いた。
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