短編集
【短編用】名前変換
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「宗次郎、trick or treat!」
「はい♪」
満面の笑みで宗次郎に問い掛けた名無しだったが、アッサリとキャンディーを渡されてしまい肩を落とす。
「…ありがとう…」
「…なんでがっかりするんです?」
「もしかしたら宗次郎、お菓子持ってないんじゃないかと…それならいたずらできるんじゃないかと思って…」
「ああ、そういうことですか。」
なるほど納得、なご様子で微笑む。
「上手くいかなくて残念ってところですね。」
「うん…みんな結構ちゃんとお菓子持ってたんだねぇ。由美さんはお見通しって感じにお菓子くれたし。」
キャンディーの包み紙を剥いて頬張る。
「志々雄さんはお菓子持ってなかったけど…なんかその……」
「ああ、なんだか想像つくなあ。」
「気迫がすごくていたずら出来なくて…」
「鎌足さんはさ…逆に吹っ掛けられて焦ったんだけど、由美さんにもらったお菓子でなんとか切り抜けたんだよね。」
「……」
『宗次郎、trick or treat!』
…期待の眼差しで見つめてきた名無し。
なんだか期待を裏切ってしまったような気がしなくもない。
たまには乗っかってあげればよかったかな、という思いと、悪戯心が高まってきた。
名無しはいちいち可愛いのだ。一生懸命なところが。
だから何かとからかいたくなってしまう。
そんな思いに宗次郎は囚われていた。
「はーあ、でもやっぱり、宗次郎に仕掛けようなんて100年早かったってことね。」
朗らかに苦笑いを向ける名無しだったが、そんな彼女を宗次郎は見つめる。
「…そんなにしたいのなら、してみます?」
「…えっ?」
咥内の飴玉を思わずこぼしそうになるも一瞬の間に手を引かれ、指と指が絡み合うように繋がれる。
「…!」
「どういうのが好き?」
「えっと、宗次郎これは…?//」
「名無しに譲ってあげます。」
覗き込むように顔を近付けられ、思わず強張る。
「腰が引けてますよ?やりたかったんですよね、いたずら。」
「いや、あの…//」
絡み付くように蠢く指と、向けられた笑顔に感じられる妖艶さに名無しはどきどきした。
「いたずらってあの……私は、例えば、パイ投げとかくすぐるとか…そんな、感じのを…//」
「パイ投げ…?」
暫し固まる二人。
「あはは…」
「それはやだなあ。」
「…だよね…っ、そう、そんな感じのを考えてただけで…」
「さすがにパイ投げは乗ってあげられないや。でも。」
ぐぐっ、と顔が寄せられる。
手を取られていて身動きが思うように取れない名無しの頬に、首筋に、吐息がかけられる。
「…!//」
「そんな緩いのよりも、もっと楽しいことをしてみては?この際。」
唇に指が添えられ、名無しが瞬きをする間に咥内の飴玉を取り出し、舐め取った。
名無しの唾液が宗次郎の唇へと糸を引き、彼の唇の端を微かに濡らす。
「ぁ…っ、」
「それなら歓迎しますよ。」
上半身は宗次郎の方へと引かれて傾いているが、足は固まったまま動かない。
いざとなると、何もできない。こういう想定していなかった状況に戸惑うだけ。
固まる名無しにさらに追い討ちがかけられる。
「こんな機会そうそうありませんよ?」
「そ、それはそうかもしれないけど、でも、こんなの…//」
視線の位置に困り、宗次郎の胸元へと落とすも、囁き続けられる言葉に興奮は上り詰める一方。
「僕がされてもいいって言ってるんです。どうぞ好きなようにいたずらしてみて?」
とん、と宗次郎の背中が壁につく。
導かれて、引っ張られて自然となってしまった体勢であるものの、まるで自分が盛って宗次郎を追い詰めているような錯覚に陥り、名無しの顔が赤くなる。
「…あ…」
「ほら、どうぞ?」
ちろ、と誘うように舌を覗かせる。
そして言葉とは裏腹に、獲物がかかるのを嬉々として待ち侘びているような瞳。
その妖しい魅力に名無しは惹き付けられるしかなかった。
押さえ込むように、けれど優しく身体を重ねる。
そして繋がれた手と手を壁に押し当て、赤い舌に自らのそれを絡ませていった。
(かかった…)
次第に陥落するように潤んでいく名無しの瞳と熱い吐息。唇を行き来しこぼれ落ちる飴玉。
満足そうに宗次郎は笑みを浮かべた。
Would you like sweet trick?
(甘い罠、甘い誘惑。)