短編集
【短編用】名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「名無しは、まかろんってどうなんです?好き?普通?苦手?」
「へ?」
甘くて美しいだなんて
それまで私達は何気なく、本当に何気なく会話を交わしていたのだけれど。
ふいにそう尋ねてきた彼に私の思考は停止していた。…非常に簡単な問いだとは思ったのだが、私が直感的な印象は「意味がわからない」だった。
「好きですか?あまり好きじゃないですか?」
「いえいえ…意味がわからないのですが。」
透き通った目が人懐っこく見つめてくるも、戸惑ったものは戸惑ったものだ。
私だって問われている言葉の意味くらいわかる。彼が何故そういう話をするのかという事くらい。だって、この時季にって、きっとあれだ。あれ。
ただ、現状が現状だ。だって今、私は彼に押し倒されているのだもの。優しく、手首を重ねられて、そっと、のし掛かられて。いつものように他愛のない話をしながらじゃれ合って。だからそういう質問が飛び出る事を予測出来るはずもなかった私の思考は止まったのだ。だから尋ねざるを得なかったのだ。
「意味がわからない?」
「ええ、仰る意味が。」
「そのまんまの意味ですよ。」
「いやいや、それはわかるんですがこの状況がちょっとよく理解出来ないんで、丁寧に訳してくださいよ。」
「どう訳せと?殺しますよ。」
ああ、怖い。そのままの調子で無邪気に笑ってるものだから底が知れない。じっとこちらを見つめ、手持ち無沙汰なのか私の頬を片手で包む。視線が熱い。なんだか目を反らすのは逃げのような、悔しいような気がする。
「…なによ。」
「待ってるんですよ。さっさと答えればいい話じゃないですか。」
「だって、宗次郎が空気を乱すんだもの。」
「…恋人が聞いているんですよ。わざわざ。」
「……ぷっ。」
なんだか真剣さが垣間見えてしまって、吹き出してしまった。途端に面食らったような顔。…だって、あの間。
それに、普段はえげつない言葉をしれっと言うくせに、こういう事はごく自然に聞けないなんて。…彼なりに真剣に聞いてくれてるんだとわかったら、嬉しくて、可愛らしく思ってしまって。
「なんですか、その態度。」
「だって…ふふふ、だって宗次郎がなんだか。」
「犯しますよ。」
「別に構わないけど?」
とんとんとん、と苛立ち気味(なのかどうか本当のところは私にもわからないけどそう感じた)に頬に当てられた手の人差し指が一定の拍子で肌に当たる。そんな調子で促されたら、かえってなんだか緊張感がなくなってしまった。模範的な彼女なら促されて彼の言葉に向き合って考えざるを得ないのだろうけど。
「好きよ?」
「……あ、そうなんですね。」
「なに、さっきの間。」
「なんでもないですよ。」
「私、あなたをからかったのよ。犯せば?」
「犯しませんったら。」
さっきと言ってたこと逆じゃない、とは思ったけど、もう私は口にしなかった。彼の甘い瞳、愛しくて堪らない、とでも言うような醸し出されている甘い雰囲気に吸い込まれたから。どちらともなく口付けを交わし、彼の細くて、だけどやはり男性らしくしっかりした首の付け根に腕を回したら、耳元にそっと囁き。
「これでも恥ずかしかったんですよ、僕だって。」
仄かに赤く染まった頬に、あらためて見惚れた。
「…ありがとう。愛してる。」
甘くて美しいだなんて
(甘い愛の調べだけでは物足りない)
END
ホワイトデー話です♪宗次郎さんといちゃいちゃも勿論したいけど、出し抜いたり駆け引きしたりもしてみたいなぁと思います(笑)
ここまで読んで下さりありがとうございました♪