短編集
【短編用】名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「名無し、ただいまぁ。」
「あっ!宗次郎、お帰りなさい。」
愛らしい少女がぱたぱた、と足音を立てて宗次郎を出迎えた。
宗次郎の恋人、名無し。
「あ。」
彼の姿を見た名無しは目を丸くする。
──宗次郎はぽんぽんっと肩の上に積もっている雪を振り払った。
「雪、降ってたの?」
「ええ、綺麗でしたよ。」
「…寒くない?大丈夫?」
何か拭くもの取ってくるね、部屋に行ってて、と言い残して名無しは宗次郎にくるりと背を向けたものの。
ぱしっ
気がつけば、宗次郎に左手首を掴まれていた。
「宗次郎…?」
「名無し、行かないでください。」
「え、でも…」
彼の身体を見つめる。
ひんやりと冷えた彼の手。
かかった雪は払い除けたけれども。髪や肩や背中が少し濡れている。
「宗次郎が風邪ひいちゃうよ。」
名無しは手首を掴んだままの宗次郎の手に戸惑う。
「だって…名無し。」
「?」
「こうしたいんです。」
宗次郎は後ろから包み込むように名無しの身体を抱きしめた。
「わっ//ちょ、ちょっと…」
「しばらくこのままでいたいんです。」
「…///」
強引ながらも、濡れて冷たくなってる箇所が自分に触れないようにさせているあたり。
強引になりきれていないな、と名無しは微笑ましく思って笑みをこぼした。
「…あれ?なんかにこにこしてます?」
「んー?なんだろうね、宗次郎のがうつったかな。」
「ふーん…?」
宗次郎の手が名無しの手に絡み付く。
「冷た…」
「名無しの手、あったかいですね…」
「だって、ずっと室内にいたから…」
「そっかぁ。」
……。
「うー…やっぱり落ち着きます、名無しとくっついてると。」
「わ、あ…っ///」
「はぁ。」
お腹のあたりを抱えるように腕が回される。
肩に彼の顎が乗せられ、距離の近さに慌てる。
「…ねっ?宗次郎、せめてお部屋に入ろう?」
「はぁい。」
せめて少し暖かいところで、と諭すも、相槌のような間延びした声が耳元で響く。
「……動けないんだけど。」
「ああ、そうですよね。」
にへら、と微笑まれて、それがあまりに無邪気なものだから名無しはつい照れてしまう。
「…あ、今照れました?」
「……!」
「あ、図星ですか。当たっちゃいましたぁ。」
にこにこ、と微笑まれる。
そのままぎゅうっと抱きしめられる最中、ふと気付いた。
「…わかった、宗次郎。あれでしょ?私で暖とってるんでしょ?」
「……わかりました?」
あはは、とあっけらかんと声を漏らす彼に、こちらも笑みがこぼれる。
「なんかべたべたしてくるなぁと思った。」
「…もちろん、名無しにくっつきたいのもありますよ?」
「……」
「あれ?呆れられちゃいました…?」
少し声のトーンを落としながら、こちらの顔を覗き込もうとする彼。
垣間見て振り返り、お返しにえいっとばかり抱き付いた。
「わっ//」
「違う、照れてんの…//」
「そう…ですか。」
少し動揺したような宗次郎。
「…私が暖めてあげるね。」
名無しは優しく微笑んだ。
淡雪に滲んだ愛嬌
(…ね、宗次郎。そろそろ自分で歩いてくれない…?)
(今日は名無しにおんぶに抱っこするって決めたんです♪)
(引きずって歩くの疲れたぁ…)