短編集
【短編用】名前変換
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「名無し、もう朝ですよ?いい加減起きたらどうです?」
「んぅ…う…ねむい……って宗!?」
重い瞼を開けると、ドキッとした。
私の顔を覗き込んでいる宗次郎。
…もとい、私の想い人。
片恋だけど…
「起きて、名無し。」
「な、なんで部屋にいるの!?」
「だって名無しが起きてくれないんですもん。仕方がないから起こしに来たんです。」
こどものように口を尖らせる宗次郎。
可愛いんだけど…
「ごめん、あと五分、いや三分…」
「今日は一日たくさんお仕事、でしょ?早くしないと僕も志々雄さんに怒られちゃいます。」
「だけど私、昨晩も仕事だったんだよ?…ふあぁ…」
のんびりとあくびをし、再び夢の世界へ旅立とうとすると、
「こら!起きてください!」
「きゃっ!?やっ!ちょっと//」
「名無しが起きるまでここ、動きませんから♪」
宗次郎が馬乗りに…!
心臓は破裂寸前。
もう、こう言うしかない…
「ごめんなさい!今すぐ支度します…!」
「はい、よく言えましたね♪」
にっこり、と笑顔が返ってきた。
…多分宗次郎は私の気持ちなんかに気付いてはいないんだろうな。ただの同僚、友達…
でもそれはとっくに自覚してるし覚悟もしてる。
だからこそ、冗談のつもりのこの行為は…宗次郎を好いている私にとっては嬉しくもあったけど、ずるいと思っちゃう…。
だけどいいの。
宗次郎といることが幸せなんだから、これ以上のものはいらないもん。
「名無し?」
「は、はい?」
思わず声が裏返ってしまう。え、なに?宗次郎、そんなに見られると恥ずかしいんですけど…
「…後ろの方の髪、すごいことになってます。」
「えっ?」
「手がかかるなぁ。はい、座って。」
宗次郎は座りながらぽんぽん、と床を叩く。
「ほら早く。直してあげますから。」
「は、はぁい…」
流されるように宗次郎の前に座ると、優しく頭に触れる手。
…あれ、これ、どういう感じ?宗次郎の方がこういうこてしてるって。な、何してるんだろう…。
それに、近いし…//
ようやく緊張し出すもお構いなしに宗次郎の指先は髪に触れていく。
「名無しの髪、綺麗なのにな。」
「う、えっ?」
「柔らかくてさらさらしてて。」
「そ、そっかな…?」
「なのに寝相が悪いせいでこんなになっちゃうなんて残念だなぁ。まあ、でも、」
「し…仕方ないじゃん//」
「……僕は好き、ですよ。」
ひと息ついて、囁かれた言葉。
その響きに息が止まりそうになって、一瞬聞き返しそうになってしまった。けど、
(違う違う…//髪の、話…!//)
「名無し?」
「…ちょっと、嬉しいな♪ちゃんとさらさらに保てるように頑張るね!」
──本当!?私も、大好き……
慌てて出そうになった言葉をしまい込んだ。
でも、嬉しい気持ちはたしかにあったから、思わず笑顔になっちゃった。
…それくらい、いいよね?
そしてまた、触れていく宗次郎の指先に密かにドキドキしながら、この一瞬の幸せを噛み締めるように過ごしていった。
…今でも、十分幸せ。
もっともっと、近付きたいけど。
今はこれでとても幸せ。
──彼女の髪を梳きながら…
宗次郎は笑顔を浮かべながら、時折、寂しげに眉を緩めるのだった。
(…まだ、僕の気持ちに気付いてないかな。)
──半分、告白だったのかもしれない。
思わず口にしていた。
(けどまあ、もう少しかな。もう少し待ちますか♪)
寂しさ半分、けれどこのひと時を嬉しく思う気持ちも持ちながら。
淡い思いをほんの少し表情に滲ませながら、愛しい思いをそっと胸に刻み続けていった。
恋の端っこを摘まみながら
(寄せては離れ、寄せては離れ。でも、あと少し?)