短編集
【短編用】名前変換
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※夫婦または許嫁感覚で緩くお楽しみください。
※遠出していた宗次郎が帰ってくるお話。
※後書きに北海道編ネタバレあります。
「名無しさん、ただいま。」
「!おかえり、宗次郎。」
愛しい人の声が響く。
──待ちに待ったその笑顔がようやく沢山見られる。
宗次郎は頼りになる人だと知りながらも、どこか子供のように純真なあどけなさも持っていることも知っているから、彼が帰らぬ間なんだか気が気でなかった名無しは、充てられたように忙しなく勝手口に向かうのであった。
「…おかえり、宗次郎。」
目にしたのは変わりない大好きな笑顔。
何度も何度も夢見ていたのだけれど、ようやく目にするとどう動じればいいのか一瞬のうちに見失った。
──沢山言いたかったこと、聴きたかったことがあったはずなのに。先程の言葉は名無しの唇がようやっと紡ぎ出せた言葉だった。
「…」
「…ふふっ、大丈夫ですか?」
「えっ…?」
くすくす、と笑みを漏らす宗次郎。
少しだけ伸びてさらさらと揺れる前髪。その下で柔らかく開いた瞳。
「さっきも聞きましたよ。おかえり、宗次郎って。まったく一緒の言葉。」
「…そうだっけ。」
「まさか僕のこと忘れてたなんて言いませんよね?」
「そんなわけないでしょ…ただ。」
「ただ?」
「嬉しくって…何を言えばいいのかなと混乱しちゃって。」
何を馬鹿な話ばかりしてるんだろう、と我ながら呆れ返りながら胸の内を呟いていくけれども。
安堵感が広がる中、共に胸の高鳴りも感じていた。
「名無しさん。」
にこりと彼は微笑む。そして。
「会いたかったです…」
あたたかな温もりに心が絆されていく。
宗次郎の腕の中に包まれていた。
そっと彼の顔を見上げると、いつもと変わらぬ優しい微笑み。だけれども、少し高揚しているかのようにほんのりと紅が薄付いていた。
「…私も。忘れたことなんてなかった。」
「そっかぁ、よかった。」
笑みを漏らす宗次郎。思わず見とれてしまっていたけれども、彼もこちらを見つめ返した。
「…名無しさん、ただいま。」
「…うん。おかえり。」
「……」
「…ふふっ。」
「…僕達、何度このやり取りするんでしょうね?思わず言ってしまいましたよ。」
「気が済むまで、しよっか。」
「…幸せなことは何回あってもいいってやつですか。賛成です。」
互いに内容のない話をしている、と微笑み返しながら。
収まりきらない嬉しさを二人して噛み締めるのであった。
いつだってあなたのことが
(ほら、名無しさん。名無しさんのことばかり考えてたら、道中口にした美味しいものも名無しさんにと買ってきちゃいまして。)
(わっ、色んなお菓子が…!)
(これなんて最高ですよ。はしかぷ餅。一緒に食べましょう?)
※遠出していた宗次郎が帰ってくるお話。
※後書きに北海道編ネタバレあります。
「名無しさん、ただいま。」
「!おかえり、宗次郎。」
愛しい人の声が響く。
──待ちに待ったその笑顔がようやく沢山見られる。
宗次郎は頼りになる人だと知りながらも、どこか子供のように純真なあどけなさも持っていることも知っているから、彼が帰らぬ間なんだか気が気でなかった名無しは、充てられたように忙しなく勝手口に向かうのであった。
「…おかえり、宗次郎。」
目にしたのは変わりない大好きな笑顔。
何度も何度も夢見ていたのだけれど、ようやく目にするとどう動じればいいのか一瞬のうちに見失った。
──沢山言いたかったこと、聴きたかったことがあったはずなのに。先程の言葉は名無しの唇がようやっと紡ぎ出せた言葉だった。
「…」
「…ふふっ、大丈夫ですか?」
「えっ…?」
くすくす、と笑みを漏らす宗次郎。
少しだけ伸びてさらさらと揺れる前髪。その下で柔らかく開いた瞳。
「さっきも聞きましたよ。おかえり、宗次郎って。まったく一緒の言葉。」
「…そうだっけ。」
「まさか僕のこと忘れてたなんて言いませんよね?」
「そんなわけないでしょ…ただ。」
「ただ?」
「嬉しくって…何を言えばいいのかなと混乱しちゃって。」
何を馬鹿な話ばかりしてるんだろう、と我ながら呆れ返りながら胸の内を呟いていくけれども。
安堵感が広がる中、共に胸の高鳴りも感じていた。
「名無しさん。」
にこりと彼は微笑む。そして。
「会いたかったです…」
あたたかな温もりに心が絆されていく。
宗次郎の腕の中に包まれていた。
そっと彼の顔を見上げると、いつもと変わらぬ優しい微笑み。だけれども、少し高揚しているかのようにほんのりと紅が薄付いていた。
「…私も。忘れたことなんてなかった。」
「そっかぁ、よかった。」
笑みを漏らす宗次郎。思わず見とれてしまっていたけれども、彼もこちらを見つめ返した。
「…名無しさん、ただいま。」
「…うん。おかえり。」
「……」
「…ふふっ。」
「…僕達、何度このやり取りするんでしょうね?思わず言ってしまいましたよ。」
「気が済むまで、しよっか。」
「…幸せなことは何回あってもいいってやつですか。賛成です。」
互いに内容のない話をしている、と微笑み返しながら。
収まりきらない嬉しさを二人して噛み締めるのであった。
いつだってあなたのことが
(ほら、名無しさん。名無しさんのことばかり考えてたら、道中口にした美味しいものも名無しさんにと買ってきちゃいまして。)
(わっ、色んなお菓子が…!)
(これなんて最高ですよ。はしかぷ餅。一緒に食べましょう?)