短編集
【短編用】名前変換
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部下設定ヒロインです。
「つ、疲れた……」
アジトに辿り着き任務完了の報せを行ったものの、名無しはもう気力も体力も磨り減らしてしまっていた。
遠方への出奔で今回は過酷な任務だった。それ故今回も完遂出来たことに満足感を得てはいたが、今は何より憔悴し切った身体を癒したかった。
「…今日はもうこのまま寝てしまおう…」
着物だけ着替えて…お化粧はもういいかな。
そんなことを考えながら髪紐を取り去る。長時間結び固定していた跡が髪に残っていた。せめて櫛を入れた方がいいのだろうと思いはしたけれど、名無しはそのまま手櫛で整えることすらせずに着物に手を掛ける。
解かれた帯が落ちる。前を開けて袖に通った腕を抜こうとしたところで、
「名無しさん。」
「!」
思いもよらない事態に息が止まるかと思った。
──瀬田様。
扉の外から呼び掛ける声。
考えるより先に既にもう身体は動いていた。
「はっ、はい…ただいま!」
脱ぎかけた着物を直し襟を正し、慌てて帯を締め直す。
失礼のないように、且つ最低限の時間と手間だけ掛けて髪を結い直し、速やかに扉を開いた。
「お待たせしてしまいすみません、瀬田様。」
「任務から戻ったと聞きました。お疲れ様です。」
にこ、と笑顔で出迎えられる。
「申し訳ありません、方治様には電信を送ったのですが瀬田様にご挨拶に上がるのは夜分ですし──」
「…名無しさん。」
「はい?」
「お疲れでしたよね、慌ててまた着替えさせてしまってごめんなさい。」
「えっ、そ、そんな滅相もありません…」
かあっと頬が熱くなる感覚。筒抜けだった、どうしよう恥ずかしい、とおろおろし出す名無しに宗次郎は優しく語りかけた。
「そんなに固くならなくてもいいんですよ。」
「で、ですが…」
慌てふためく彼女の肩をふわりと抱く。
「すみません。あなたに会いたくて来たんです。」
「あ…」
「お疲れ様。」
優しい声とその温もりに、先程から高まりつつあった胸の鼓動がまた速まるのを感じて名無しは居たたまれなくなる。
「すみません、疲れてるだろうなとは思ったんですけど、あなたを一目見たくて…」
「あ、あの、瀬田様…」
「…今は二人きり…でしょ?」
「…はい…」
「僕の名前、呼んでほしいなぁ。」
間近に顔を寄せられにっこりと囁かれる。
ふわりと力が抜けて穏やかだけれども期待でうっすらと熱を帯びた眼差しで見つめられ、名無しはまだ少し強張っていた腕をそっと宗次郎の身体に寄せた。
「…宗次郎さん。」
「ん、よく出来ました。」
あやすように囁かれて、全身がかっと熱くなるような感覚。
「宗次郎さん、その…」
「何か?」
「…いえ。」
恥ずかしい、照れてしまう。
逃げ出したいくらい恥ずかしいけれども、嬉しい。
こちらを見つめる瞳を受けて、口許を思わず嬉しさで緩ませながら。
彼への愛しの想いを込めて、言葉を繋いだ。
「…ただいま、宗次郎さん。」
「おかえりなさい、名無し。」
つつましやかな愛寵
(さり気なくだけど深く)
「名無しさん、お化粧は落とさないと。」
「……(男の人に指摘されてしまうなんて。)」
「……(名無しさんの素顔が見たい。)」
「つ、疲れた……」
アジトに辿り着き任務完了の報せを行ったものの、名無しはもう気力も体力も磨り減らしてしまっていた。
遠方への出奔で今回は過酷な任務だった。それ故今回も完遂出来たことに満足感を得てはいたが、今は何より憔悴し切った身体を癒したかった。
「…今日はもうこのまま寝てしまおう…」
着物だけ着替えて…お化粧はもういいかな。
そんなことを考えながら髪紐を取り去る。長時間結び固定していた跡が髪に残っていた。せめて櫛を入れた方がいいのだろうと思いはしたけれど、名無しはそのまま手櫛で整えることすらせずに着物に手を掛ける。
解かれた帯が落ちる。前を開けて袖に通った腕を抜こうとしたところで、
「名無しさん。」
「!」
思いもよらない事態に息が止まるかと思った。
──瀬田様。
扉の外から呼び掛ける声。
考えるより先に既にもう身体は動いていた。
「はっ、はい…ただいま!」
脱ぎかけた着物を直し襟を正し、慌てて帯を締め直す。
失礼のないように、且つ最低限の時間と手間だけ掛けて髪を結い直し、速やかに扉を開いた。
「お待たせしてしまいすみません、瀬田様。」
「任務から戻ったと聞きました。お疲れ様です。」
にこ、と笑顔で出迎えられる。
「申し訳ありません、方治様には電信を送ったのですが瀬田様にご挨拶に上がるのは夜分ですし──」
「…名無しさん。」
「はい?」
「お疲れでしたよね、慌ててまた着替えさせてしまってごめんなさい。」
「えっ、そ、そんな滅相もありません…」
かあっと頬が熱くなる感覚。筒抜けだった、どうしよう恥ずかしい、とおろおろし出す名無しに宗次郎は優しく語りかけた。
「そんなに固くならなくてもいいんですよ。」
「で、ですが…」
慌てふためく彼女の肩をふわりと抱く。
「すみません。あなたに会いたくて来たんです。」
「あ…」
「お疲れ様。」
優しい声とその温もりに、先程から高まりつつあった胸の鼓動がまた速まるのを感じて名無しは居たたまれなくなる。
「すみません、疲れてるだろうなとは思ったんですけど、あなたを一目見たくて…」
「あ、あの、瀬田様…」
「…今は二人きり…でしょ?」
「…はい…」
「僕の名前、呼んでほしいなぁ。」
間近に顔を寄せられにっこりと囁かれる。
ふわりと力が抜けて穏やかだけれども期待でうっすらと熱を帯びた眼差しで見つめられ、名無しはまだ少し強張っていた腕をそっと宗次郎の身体に寄せた。
「…宗次郎さん。」
「ん、よく出来ました。」
あやすように囁かれて、全身がかっと熱くなるような感覚。
「宗次郎さん、その…」
「何か?」
「…いえ。」
恥ずかしい、照れてしまう。
逃げ出したいくらい恥ずかしいけれども、嬉しい。
こちらを見つめる瞳を受けて、口許を思わず嬉しさで緩ませながら。
彼への愛しの想いを込めて、言葉を繋いだ。
「…ただいま、宗次郎さん。」
「おかえりなさい、名無し。」
つつましやかな愛寵
(さり気なくだけど深く)
「名無しさん、お化粧は落とさないと。」
「……(男の人に指摘されてしまうなんて。)」
「……(名無しさんの素顔が見たい。)」