短編集
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細部はお好きにご想像ください。
※現代設定、同棲してます。
「…宗次郎へのチョコレート用意できなかったなぁ。」
とぼとぼと帰路に着く名無し。幾度となく腕時計を見ては自責の念に囚われ溜め息を溢す。
──ようやく目処が付いたかと思えば、かなり遅い時間帯になってしまった。
(前々から用意しようと思ってたんだけど…今月入ってから忙しくてお店に買いに行けなかった…)
──まあそれも、理由にならないよね…
恐らくもう帰宅しているであろう宗次郎のことを想っては、また一つ二つと溜め息をついた。
「ただいま…」
「名無しさん!お帰りなさい。」
そうっと玄関の扉を開けて。
本当は後ろめたくて消えてしまいたい程なのだけれど、帰りを待ってくれているであろう恋人に向けて──元気が出なくて小さく静かな声になってしまったけれど──ただいまと口にしたら、嬉しそうに出迎えに駆け寄ってくる宗次郎。
「外、寒かったでしょ?…わあ、手冷たいじゃないですか。ほら、早く入ってください。」
「あ、ありがとう…」
彼の暖かな手の温もり。笑顔を向けてくる宗次郎を見て思わず言葉が詰まるけれど、やっぱり吊られて笑顔になってしまう。
けれど思わず必死に隠した。隠して室内に入り、ソファに腰かけたけれど、すぐさま隣に腰掛けた宗次郎に顔を覗き込まれる。
「名無しさん。さっき嬉しそうな顔しましたよね?」
「……」
「なぜですか?なんで隠すんですか?」
好きだから、と思わず口ずさみそうになったけれど、でも恥ずかしいから言えない、堪えるけれど。
まるで心内を見透かすかのように、にこにこと笑顔で見つめられて、顔に血が上っていくのを感じる。
「……名無しさん、本当僕のこと好きなんだから。」
「!」
「けど、僕もですから。よかったぁ。」
えへへ、と満面の笑み。
…もう、いいや。どうしてもこの人の前では私は弱い。
「もう……宗次郎反則だよ。」
「でも、好きなんでしょう?」
「…御名答です。」
意地悪そうな目を向けられ、羞恥に覆われながら言葉を返すと、ふわりと抱きしめられた。
「わっ。」
「お疲れ様、名無しさん。こうすると一日の疲れが和らぐって言うでしょ?」
「う、うん…(そ、その、どうしよう…どんな顔したら、)」
「…あとは、名無しさんといちゃいちゃしたいからなんですけどね。」
ふふ、と溢れる彼の声。
暖かい。心地よい。
──彼の暖かさに絆されるように、とうとう耐えきれなくなってそっと呟きを放つ。
「……宗次郎、実はチョコ用意できなかった…ごめんね。」
「え?…やだなぁ、それで余計に元気なかったんですか?名無しさんらしいや。」
髪を優しく撫でる指。
深く抱きしめられ、そして少し距離を空けられる。
相対して目と目を合わされ、見つめられたかと思うと。
「…?」
「名無しさん、はい、これ。僕から。」
「えっ!?…チョコレート?」
「…名無しさんを好きな気持ちです。」
笑顔で差し出された、ベロア調のリボンのかかった箱。びっくりしてしまって思わず声をひっくり返してしまうと、頭を撫でられた。
「外国じゃ、関係ないそうですよ?男からだとか女からだとか…」
「…ありがとう、嬉しい…!」
──でも、私は用意してないのに申し訳ないな、僅かに芽生えてしまった想いをすぐに察したのか目くるめく放たれる言葉。
「はい、ちゃんと見て。はい。僕の気持ち。ちゃんと受け取って。」
「は、はい…!」
「…はい、よし。いいですよ。」
名無しさん、よくできました、と微笑まれて。そして。
「…でも僕も食べたいんですよ、食事の後に一緒に食べていいですか?」
「…実は食べたいもの選んだんでしょ?」
「あはは、わかりました?でもちゃんと、名無しさんも好きそうなものですから。安心してください。」
朗らかな、悪びれない言葉に思わず笑顔を浮かべて笑うと、もう一度引き寄せられて。
そうして耳元で囁かれる。愛の誓いの日、ともいうみたいですね、という甘い声。
「あとで、嫌ってくらい言いますから覚悟してくださいね?」
je t'aime à la folie
(狂おしいほど愛してる。)
バレンタインデーのお話でした。
※現代設定、同棲してます。
「…宗次郎へのチョコレート用意できなかったなぁ。」
とぼとぼと帰路に着く名無し。幾度となく腕時計を見ては自責の念に囚われ溜め息を溢す。
──ようやく目処が付いたかと思えば、かなり遅い時間帯になってしまった。
(前々から用意しようと思ってたんだけど…今月入ってから忙しくてお店に買いに行けなかった…)
──まあそれも、理由にならないよね…
恐らくもう帰宅しているであろう宗次郎のことを想っては、また一つ二つと溜め息をついた。
「ただいま…」
「名無しさん!お帰りなさい。」
そうっと玄関の扉を開けて。
本当は後ろめたくて消えてしまいたい程なのだけれど、帰りを待ってくれているであろう恋人に向けて──元気が出なくて小さく静かな声になってしまったけれど──ただいまと口にしたら、嬉しそうに出迎えに駆け寄ってくる宗次郎。
「外、寒かったでしょ?…わあ、手冷たいじゃないですか。ほら、早く入ってください。」
「あ、ありがとう…」
彼の暖かな手の温もり。笑顔を向けてくる宗次郎を見て思わず言葉が詰まるけれど、やっぱり吊られて笑顔になってしまう。
けれど思わず必死に隠した。隠して室内に入り、ソファに腰かけたけれど、すぐさま隣に腰掛けた宗次郎に顔を覗き込まれる。
「名無しさん。さっき嬉しそうな顔しましたよね?」
「……」
「なぜですか?なんで隠すんですか?」
好きだから、と思わず口ずさみそうになったけれど、でも恥ずかしいから言えない、堪えるけれど。
まるで心内を見透かすかのように、にこにこと笑顔で見つめられて、顔に血が上っていくのを感じる。
「……名無しさん、本当僕のこと好きなんだから。」
「!」
「けど、僕もですから。よかったぁ。」
えへへ、と満面の笑み。
…もう、いいや。どうしてもこの人の前では私は弱い。
「もう……宗次郎反則だよ。」
「でも、好きなんでしょう?」
「…御名答です。」
意地悪そうな目を向けられ、羞恥に覆われながら言葉を返すと、ふわりと抱きしめられた。
「わっ。」
「お疲れ様、名無しさん。こうすると一日の疲れが和らぐって言うでしょ?」
「う、うん…(そ、その、どうしよう…どんな顔したら、)」
「…あとは、名無しさんといちゃいちゃしたいからなんですけどね。」
ふふ、と溢れる彼の声。
暖かい。心地よい。
──彼の暖かさに絆されるように、とうとう耐えきれなくなってそっと呟きを放つ。
「……宗次郎、実はチョコ用意できなかった…ごめんね。」
「え?…やだなぁ、それで余計に元気なかったんですか?名無しさんらしいや。」
髪を優しく撫でる指。
深く抱きしめられ、そして少し距離を空けられる。
相対して目と目を合わされ、見つめられたかと思うと。
「…?」
「名無しさん、はい、これ。僕から。」
「えっ!?…チョコレート?」
「…名無しさんを好きな気持ちです。」
笑顔で差し出された、ベロア調のリボンのかかった箱。びっくりしてしまって思わず声をひっくり返してしまうと、頭を撫でられた。
「外国じゃ、関係ないそうですよ?男からだとか女からだとか…」
「…ありがとう、嬉しい…!」
──でも、私は用意してないのに申し訳ないな、僅かに芽生えてしまった想いをすぐに察したのか目くるめく放たれる言葉。
「はい、ちゃんと見て。はい。僕の気持ち。ちゃんと受け取って。」
「は、はい…!」
「…はい、よし。いいですよ。」
名無しさん、よくできました、と微笑まれて。そして。
「…でも僕も食べたいんですよ、食事の後に一緒に食べていいですか?」
「…実は食べたいもの選んだんでしょ?」
「あはは、わかりました?でもちゃんと、名無しさんも好きそうなものですから。安心してください。」
朗らかな、悪びれない言葉に思わず笑顔を浮かべて笑うと、もう一度引き寄せられて。
そうして耳元で囁かれる。愛の誓いの日、ともいうみたいですね、という甘い声。
「あとで、嫌ってくらい言いますから覚悟してくださいね?」
je t'aime à la folie
(狂おしいほど愛してる。)
バレンタインデーのお話でした。