短編集

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「…大丈夫?他に凝ってるところ、ない?」

「ええ、名無しのおかげですっかり良くなりました。ありがとうございます。」



背中を向けたまま、振り向いてにこにこと笑みを向ける宗次郎。ちょっとはにかんでしまった。

宗次郎の肩揉みを終えた私。手や指にまだ残る温もりに想いを馳せてしまう。好きな人の身体に触れるというのは、居心地も良いけど…どきどきしてしまって堪らない。

…内心、宗次郎って細身だけど鍛えられてて。肩や背中の筋肉だって私とは違ってて、やっぱり男の人なんだな、なんて。
そんなことをぼんやり考えていると。

くる、とこちらを振り向いた宗次郎。
そのまま私にぎゅっと抱き付いた。



「そ、宗…?//」

「気持ちよかったです。」



抱きしめられて、そんなことを囁かれて。かああ、と頬が熱くなるのを感じる。
お疲れ様、と言いながら手のひらを背後に回され、そして。



「…名無しはどこか疲れてないんですか?」

「えっ?」

「僕もしてあげたいなぁって思ったんですけど。」

「えっ…?あ…いいのかな…?」



そのまま、指先が肩をそうっと撫でていく。
撫でていきながら、人差し指と中指でぐ、ぐ、と一点ずつ肌を押し込めていく。

──正面から抱きしめられているから、押されると密着してしまうというか…宗次郎により身を任せる形となって。



「宗次郎…これちょっと恥ずかしい…」

名無しの凝ってるところ探してますから。」

「…後ろ向きたいんだけど。」

「いいじゃないですか。くっつけるし。」



軽く流された。でもこの笑顔で、この温もりの中で言われてしまうと何も肯定できない。



「でも、んっ…!」



宗次郎の指の先端が一点をぐりぐり、と押したとき、思わず身体が跳ねてくぐもった声が出た。



「っ、ふ…っ、!」

「あ。ここ?」



今度は親指で押され、息が詰まる。



「んっ!そこ、無理…っ!」



──背中に突きつけられる痛みから逃れようと名無しの身体は前に倒れるけれど、必然的に宗次郎の胸の中に迎え入れられているようにしか見えない。

息の上がる名無しを見下ろしながら、少し宗次郎は皆目する。



「…わ、この辺りすごく固いですよ?凝ってるんですね。」

「待っ…ううぅ…っ、いたぁ…!」



宗次郎曰く「凝ってるところ」を重点的に押され。でも逃げ場のない名無しは宗次郎に強くしがみついて耐えるしかできない。
またぐぐっと押されて思わず宗次郎の着物を握る手に力が加わる。



「あう…っ、い、痛い…っ!待って…」

「えっ、そんなに?」



若干驚いたような声を上げて彼女の顔をまじまじと見る宗次郎。



「でも、名無しの肩や背中かなり凝ってますよ?」

「…実は、最近なかなか疲れが取れてなくて…」

「そうですか…そういえば名無し、最近働き詰めでしたもんね。」



今度は優しく、なでなでと背中を滑っていく手のひら。
その優しい感覚にほっとして名無しは宗次郎の首元に擦り付くように身を寄せる。暖かい眼差しでこちらを見つめる宗次郎。
片方の手は頭をそっと撫で。何度か往復させていく。



「お疲れ様。名無し。」

「…宗次郎ほどじゃないけど、でも、ありがとう。」



顔を寄せると、頬に優しく触れる指先。
恥ずかしいけど嬉しくて笑みを浮かべると、そのまま首筋に宛がわれていく手のひら。暖かさに包まれる。
そして、肩に触れたかと思うと。再び息が詰まる。



「んうっ!?」



宗次郎の両の親指が肩の左右に食い込む。
ぐりぐり、と深く押されては、肩の肉を揉むようにされて。痛い。



「痛ぁ…!」

「ちゃんとほぐすので、我慢してくださいね。」

「もうちょっと優しくは…?」

「解消する方が優先です。」



にっこりと微笑まれて。
私は観念して宗次郎の胸元に顔を埋めるしかなかった。





背中を辿るあなたの指先



(軽くなった…!宗次郎、ありがとう。)
(よかったです。名無しもとっても可愛かったです。)
(…うん?)

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