短編集

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※短めです。



宗次郎の傍らで、眼前の桜色の光景に胸を躍らせつつ──隣にいる彼の存在が何かと気になってしまう。
多分、今も彼は澄ました笑顔をして景色を眺めているんだろう。

──彼の方へ視線を向けたのだけれど。
宗次郎はまっすぐこちらを見つめていた。恐らく先程から、ずっと。



「…どうしたの?」


裏返りそうになる声を抑え、平静を装おうとするけれど。


名無しさんを見ていたくて。」



しれっと穏やかに告げてくるものだから、心臓に悪い。
きっとこちらの一挙手一投足その瞳に映して収めているのだろう。笑顔を向けられたまま。



「…誰もいませんね。」

「えっ。」



少し低く、掠れるような声に囁かれて思わず胸が高鳴る。
そして意味ありげに笑みを向けられ、重なりそうなほどに顔を近付けられる。その瞳には優しさと、何かを促すかのような期待の匂いを宿していて。
まるで、抱擁する時のことを思い出させた。

固まった名無しに笑いかける。



「あ、何かやらしいこと想像したでしょう?」

「ち、違うよ…!」

「ほっぺが赤いんですけど。」

「…宗次郎の仕草がなんか…やらしかったから…!」



必死に言い訳をするけれど。



「それ、違うって言えてないですよ。」

「…………」



楽しそうに微笑まれる。
返す言葉がなくて目線を泳がせかけたところで、背中に添えられる手のひら。



「じゃあ、名無しさんのご期待に応えて。」

「き、期待してないもん…!」

「……はいはい。分かりましたから。」



心なしか、あやすように言われた。



「…何が分かったの?」

名無しさんはやらしいこと考えてなかったんですよね。そう受け取りますから。


だから……僕の期待を叶えてもいいですか?」



「……!!///」

「僕のやらしい期待を、です。」



そう言った宗次郎の瞳には熱い兆しが窺い知れて。

何も言えず、そのまま身を寄せられた。





こぼれ桜


(こぼれる欲求)


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