短編集

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「宗次郎ごめんね、待った?」

「いいえ、さっき来たところですよ。」



──にこりと微笑みかけた宗次郎は薄花田色の浴衣を着ていて。
恋人の、普段見れない装いに名無しの胸は高鳴る。


一方、名無しは可愛らしい花柄と色合いの浴衣を身に着けており。

可愛いなぁ、と宗次郎が思わず口にすると名無しは顔を赤らめた。



「…名無しさん、今日は髪も結ってるんですね。」

「あ、うん…その、変かな…?」

「素敵ですよ。よく似合ってます。」

「あ、ありがとう…!」



「…僕のために?」

「えっ///」

「いいえ、なんでも。」



くすくすと笑う。



少しでもお洒落をして、可愛く見られたい。

そんな名無しのいじらしい努力が透けて見えるようで、そこがまた可愛らしいと宗次郎は思った。



「…もっとよく見せて?」



すっと顔を寄せられて。優しく微笑みかけられて。



「…っ///」



名無しは頬を真っ赤に染める。



「…照れちゃったんですか?可愛い人だなぁ。」

「だ、だって…」



にこ、と微笑まれて。



「あ…っ//」

「ほら。」



手のひらに触れる柔らかな感触。



「行きましょう、名無しさん。」



優しく、楽しそうに問いかける彼。

提灯の明るい光に照らされた宗次郎の笑顔。
とても惹かれてしまう。その綺麗な笑顔に、暖かさに。


頷いて、ぎゅっとその手を握り返した。






色んな屋台を覗いたり、水風船を買ったり。
二人は楽しい時間を過ごす。

時折、人混みの中にはぐれないように宗次郎は名無しの手をしっかり握って。


そして暫くして、宗次郎は林檎飴を、名無しは綿菓子を食べながら。片手をまた繋ぎ、並んで歩く。



そうした最中、宗次郎はふと、名無しの顔を見つめる。

視線を向けられて、どきっとする名無し



「…名無しさん。」

「…?なに…?」

「ちょっとこちらへ。」



背中にぴたりと手を添えられ。
端の方へゆっくりと誘導される。



「どうしたの…?」

名無しさん、顔見せて。」

「う、うん…?」



宗次郎に覗き込まれるように見下ろされて。

そっと詰まっていく距離。



「あの…宗次郎…?」

「…付いてますよ。」


「えっ?」



優しく触れる指先。
唇の横を掠めたかと思うと。



「綿飴が。」

「え!?うそっ…恥ずかしい…!」



顔を紅く染めてあたふたとする名無し

──恥ずかしいのは、粗相に気付かなかった自分のこともそうだけれど…



「…ねぇ、名無しさん。」

「は、はい…」

「もしかして、僕にキスされると思いました?」



無邪気な笑みで囁きかけられ。
熱が一気に頬に集まる。



「……!」

「答えられないということは図星ですか。」

「うう…ごめんなさい…」

名無しさんは本当に好きなんですね、僕のこと。」



笑いかけながら、じっと見つめられる。


そして。



「わ、わっ///」



宗次郎の顔がすぐそこに寄せられて。
ぺろ、と口許に触れた感触。

舐め取られたのだと気付いた時には、彼は楽しげにこちらを見下ろしていた。


無邪気な笑顔だけれど。
微笑む様にはどこか艶があってどきどきする。



「え、えっ…?//」

「美味しそうだったんで、つい。」



そう言って名無しの顎先を摘まんで。

伸びた親指が名無しのふっくらとした唇を優しく掠める。



「こちらも…食べていいですか?」

「…っ、うん…//」

「…ふふ、顔真っ赤。」



宗次郎は思わず眉を寄せて笑って。

そっと唇を重ねた。


──微かに感じ取れる林檎の蜜の味。



「……//」



隠しきれない時めきに名無しは俯くけれど。


宗次郎のことが大好き、と言わんばかりに彼の頬に片手を添えて、そうして口付けた。



刹那、宗次郎は目を丸くさせたけれども。



「…もう、可愛いんですからあなたは。」



笑顔で囁きかけて、名無しの手を取った。



「ほら、そろそろ花火が上がると思うので、行きましょう?」

「うん…!」



宗次郎のその頬が少し高揚して染まっているのに気付いて。

名無しは花が綻ぶように笑みを溢した。



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