短編集

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名無しさ~ん!」

「あ、宗次郎…、わっ!」

「失礼しますね。」



にこにこと笑顔を浮かべて名無しに駆け寄る宗次郎。

なんだろうと思い名無しは振り向くのだけれど、もう向き終わるかというところで後ろからぎゅっと抱き留められていた。


「…!」

「……」


それきり、無言で。

名無しは何か訊いた方がいいのかと思うのだが、宗次郎の顔色を窺おうにも抱き締められていて後ろに振り向けないものだから。
そのまま名無しも無言で胸を高鳴らせていることしかできない。


暫しの静寂の後に、名無しは後ろの宗次郎に向き合おうとするかのように小首を傾けてみた。



「あの、宗次郎…?」

「はい。」



躊躇することなく声を返す彼。
きっと、いつものように揺れない笑顔でいるんだと名無しは悟った。

……前触れもなく抱擁されて吃驚しているこちらが何かおかしいのだろうか、そのような考えが図らずも込み上げてくるのだけれど。

でも、知りたいという気持ちは隠し通せなかった。



「ど、どうしたの…?//」

「…そうですよね、急にこうすると吃驚してしまいますよね。」

「…?//」



ようやく気が付いたかのように宗次郎は淡々と漏らすけれど。その腕は名無しの身体をしかと抱きしめたまま。
名無しの胸の鼓動が速まっていく。



「あ、あの、宗次郎さん…?」

「そうですねぇ、何と言ったらいいか。名無しさんのこと。」



衣擦れの音と共に身を捩らせて。
名無しの肩口に顎を乗せて。



名無しさんを癒やせたらなぁって。」

「えっ、?」


優しい声音で。耳元で囁かれる。



「──いいですか名無しさん、今は僕に甘えちゃってください。」

「…な、なんだか照れるけどいいのかな…?」

「はい♪」





──そうしておいたまま。幾許かして彼はふと考えるように声を上げた。



「…あれ?」

「……?」

「ひょっとして、これって僕が名無しさんに甘えてるのかなぁ。」



後ろから覗き込むように顔を傾ける気配。
思わずどきりとする。



名無しさんに甘えてもらおうと思ったんですけど、ほら、人肌に触れてると落ち着くって言うじゃないですか。こう抱き締められると。」



さらっと恥ずかしいことを告げて。



「でも、なんだか僕の方がときめいてしまってる気がするんですよね。名無しさん、いい香りがするし。」

「えっ、//」

「暖かいし。」

「……///」



首の後ろにすりすり、と触れる宗次郎の肌の感触。かああ、と顔が熱くなるのを感じる。



「…どう思います?名無しさん。何か答えてくださいよ。」

「わ、わかんないけど…//でも、少しの間このままがいいかな…//」

「…少しの間だけでいいんですか?」



拗ねたような声。これはわざとだって知っているけど。


目線を向けると、彼も横からこちらの表情を覗き込んだ。熱を持ったその眼差し。

狡いと感じていたって、そのままふっと柔らかく微笑まれてしまえば。



「…ずっとこうしていたい…です…//」

「そうですか。じゃあ…このままでいいや。」



愉しげに呟いて。

正面から抱き留められて、首筋に宗次郎の顔が埋まって。


そのまま彼の温もりのなかに包まれた。







いついつも愛させて


(名無しさん、好き。)
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