かぐやひめの時渡り
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縁側から庭を見つめる志々雄さんと寄り添う由美さん。
二人の視線の先では、宗次郎と名無しが何やら押し問答を繰り広げている模様。
「宗次郎強すぎるよ…もうやめたい。」
「名無しさんがどうしてもやりたいって言ったんじゃないですか。」
「だって~…失敗してるの私ばっかりだもん。」
「うーん、それは名無しさんのわがままですよ?」
「うー…そうなの…?」
揃って腕組みをして互いを見つめる二人。
加えて名無しは眉を寄せながら、受け取り損ねて転がった鞠を取りに行く…
*****
きっかけは半刻程前のこと。
鞠を抱えながら名無しは宗次郎に話を持ちかけたのでした。
『…蹴鞠がやりたい?』
『うん!前から見知ってはいたんだけど、やったことがなくって。一緒にしてくれない?』
『ええ、いいですよ。』
『やったあ♪』
庭へ宗次郎を引っ張っていきながら説明を行う名無し。
ふんふん、と話を聞く宗次郎。
『へぇー、ずっと延々と蹴っていくんですか?』
『うん!交互にね。』
『落としちゃったらどうなるんです?』
『その時は落とした人がいけないの。それでまた最初から始めることになるの。』
『ふうん。じゃあやっていきましょうか。』
『うん!』
…まあ息は合うものの、さすがに運動神経に関しては違ったようで。
主に名無しが鞠を受け取り損ねては拾いに走るという光景が繰り返されて今に至るのでありました。
あ、ようやく鞠を拾った名無しが腕捲りをしています。
話を戻しましょう。
「よしっ。じゃあ宗次郎、行くよ~?」
「はーい。」
「えいっ…!」
「…なあ由美。」
「どうされました?志々雄様。」
二人の姿を見ながら煙管を吹かせ続けている志々雄様。
「名無しが来て何日経った?」
「ちょうど一週間ですわ。」
「…たしかかぐや姫の話ってのは…姫を拾ったらよ。」
「…そうですわね。たしか毎日光る竹を見つけてはお金を手に入れて…それで…」
「金回りがよくなるんだったよな…」
なんだか汚な…大人なお話をされてますね…
庭では引き続き宗次郎と名無しが押し問答を繰り広げている模様。
「あ!もう嫌~!」
「うーん…そんなにダメですか?」
「もっとふんわりゆっくり蹴ってほしいよ…」
「…それよりも、名無しさんの着物が動くのに向いてないんじゃないかなぁ?」
そう言われて自分の姿を見下ろす名無し。
そう、着ているのは華美で重厚な十二単。裾を持ち上げながらとはいえ、よくもまあ。
「…そうだ!宗次郎も着れば公平」
「え?」
………。
「…な、なんでもない…(なんか急に宗次郎の声が怖くなった…!?)」
「ほら、名無しさん始めましょう。」
「う、うん…(あれ、普通の声に戻ってる…幻聴だったかな…)」
…そして何度鞠が蹴られたことでしょう。
またしても宗次郎の蹴る鞠を走って追う名無しの姿、そして勢い余って…
「わあ!」
「あ、名無しさん…!」
「いててて…!」
鞠を追いかけるものの、滑って転んでそのままへっどすらいでぃんぐ。
「いたあぁ…!」
「大丈夫ですか?すごく派手に転びましたけど…」
砂ぼこりをかわしながら駆け寄り抱き起こす宗次郎。
「あー…名無しさん。」
「ふぇ?」
「ほっぺた…擦りむいちゃいましたね。ちょっと大人しく待っててくださいね。」
髪や着物についた砂を払ってやり、宗次郎は志々雄のいる縁側へと上がっていくのでした。
「えーと…救急箱はたしかあっちの方に…」
「…どうやらこの調子じゃ…恩恵は受けられないみたいですわね…」
はあ、と同時に溜め息をつくおばあさんおじ…由美さん志々雄さん。
「そのようだな…おとぎ話と同じく都合よくとはならないか。」
「ええ…」
「…しかし姫が出るなら光る竹も出ると思うよな…思い過ごしだったが…」
「え?光る竹ですか?」
救急箱を手にしたまま反応する宗次郎。
「僕見てますよ?名無しさんがうちに来てから毎日。」
「「え?」」
「一本しかない時もありますけど、多い時には数十本…」
「「…!」」
宗次郎の言葉に顔を見合わせるお二人。すぐさま宗次郎に迫って…
「おい宗次郎。」
「はい。」
「切ってみたか?」
「中身は見たの?」
「ええ。そしたらですね、最初はたくさんの」
「「たくさんの?」」
「…二人ともどうしたんです?なんだか顔に力が入ってません?」
「そんなことないわよ。」
「そうですか?」
「思い過ごしだ。」
「うわ、志々雄さん怖い顔だなあ。」
「うるせえ。で、どうなんだ。たくさんの?」
「ああ。たくさんのリボンが出てきたんですよ。」
「「…リボン?」」
「ええ。次の日はまたたくさんのお皿やお箸が出てきて。」
「「??」」
「三日目は綺麗な扇で、その次はお香の道具で。五日目は…そうそう、綺麗な着物でしたね。」
((…嫁入り道具…?))
「昨日は鞠だったんですよ。さっき名無しさんと遊ぶのに使って……あ。」
思い出したように目を見開く宗次郎さん。
「そうだ、名無しさんのこと忘れてた。失礼しますね。」
「ボウヤちょっと待って、話はまだ……ああ、行ってしまいましたわ…」
「……。」
「どういうことでしょう、志々雄様…」
「なんだ、その…憶測に過ぎないが。」
「…あいつの花嫁修行に俺たちが駆り出されたか、あいつがここに嫁ぎに来た、ということか…?」
「…まさか!」
「…だよなぁ?だが竹から金じゃなく嫁入り道具みたいなものが出てくるのは…ひょっとしたらあり得るかもしれない。」
どうなんでしょうかね。
「…このまま様子を見るしかねえな。」
「…そうですわね…」
おじい…志々雄さん由美さんの憂鬱はまだまだ続く模様です。
名無しと宗次郎のまいぺーすな日々もまだまだ続く模様です。
to be continued...