かぐやひめの時渡り
【短編用】名前変換
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「あなたはだぁれ?」
「…え…?」
目先から声が聞こえ、おそるおそる目を開けてみると――
「あ、あなたは…?」
いつからいたのか、一人の少女が立っていた。驚きのあまり宗次郎は言葉を失っていた。
「…あなたは竹から…?」
やっと口を開いた宗次郎。それには応えずに少女は宗次郎をじっと見つめる。
「あの、何か…?」
「…あなたの格好、変ね。」
「え?」
少女の言葉に目を見開く。
「変…ですか?」
「うん。烏帽子は?貴族じゃないの?」
「烏帽子?貴族??」
頭に“?”マークを浮かべる宗次郎。…そして今更気付いたのだが、少女の格好は少し妙である。
――幾重にも重ねられた艶やかな着物。手には大きな綺麗な扇。長い長い、まっすぐで綺麗な黒髪。
そう、まるで昔の貴族のお姫様。
「…それより、ここは何処なの?」
「迷子になっちゃったんですか?」
「わかんない。さっきまでお屋敷のお庭にいたのに。」
「屋敷??ですか?」
「そう。」
宗次郎はう~ん、と首を傾げる。少女は自分の境遇を知ってか知らずか、楽しそうに笑うだけ。そして宗次郎の腕を引っ張った。
「え?ちょ、ちょっと…」
「あっちの方面白そう!行こうよ!」
「え!」
少女にぐんぐん腕を引っ張られて、宗次郎は戸惑いながらも一緒に走った。
「どっ、何処にいくんですかぁ~?」
「わかんない。あ!あっちに大きいお屋敷が見える!」
「お屋敷…ですか?」
少女が指し示す方向を見た宗次郎。それは…
「!…志々雄さんのアジトですね。」
「行ってみない?…えーと。」
少女は途中で言葉を遮り、うーんと唸った。
「?どうしたんです?」
「あなたの…お名前は?」
「僕ですか?僕は瀬田宗次郎です。」
「せた…そうじろぉ?」
「ええ。」
「ふぅん…あたしの名前は、名無し。」
名無し…。宗次郎は名無しに微笑みかけた。
「じゃあ…名無しさんでv」
「宗次郎!あの宮殿に行かない?」
「あ、行くんですか?」
――アジトに帰って、志々雄さんや由美さんに聞けば、何かわかるかもしれませんね。
「…行ってみましょう♪」
「うん!」
* * * * *
「「……!」」
「というわけなんです。どうでしょうか?」
宗次郎と名無しの前には、呆然とした表情の志々雄さんと由美さん。
「…奇妙奇天烈極まりねぇな。」
「竹からこの子が出て来たって…ホントなの?ボウヤ。」
「嫌だなぁ。僕がこんな冗談作るわけがないじゃないですか。」
「まぁ、そうだな…」
「そうね…」
名無しはどうしたらいいのかわからず、順々に三人の顔を見つめる。
「おい、名無し。」
「!なぁに?」
「お前、でかい屋敷から来たんだってな?」
「うん。気付いたら山の中にいて、宗次郎が目の前にいたの。」
「ふーん…」
志々雄は名無しの姿をまじまじと見つめる。
「あの…志々雄様?」
「何かわかりました?志々雄さん。」
「コイツは…平安時代から明治に来ちまったんじゃねぇか?」
「!?平安時代から…ですの?」
「?そうなんですか??」
「明治ってなになに?」
驚く由美と宗次郎、そしてどこか楽しそうな名無し。
「名無し、かすていらは知ってるか?」
「???」
「江戸時代は?」
「おいしいもの?」
「歌合わせは?平安京は?小野小町は?」
「私歌作るの得意だよ!帝様のお住まい!小町さんは私の歌の先生だよ!」
「…確実っぽいわね。」
「じゃあ名無しさんはお姫様なんですか?」
「うん♪」
「へえー、すごいなあ。」
「えへへ♪」
無邪気に笑う名無しを微笑ましく思う宗次郎。
「ところで、江戸時代って何?かすていらって何?」
「…そういえばボウヤ、頼んでたおつかいは?」
「あ、由美さんすみません。今から行ってきますね。」
「あっ、私も行く!」
「えっ?仕方ないなぁ、はぐれないでくださいね?」
「うん!」
宗次郎と名無しは手を繋いで出掛けた。
「…変わったこともあるのねぇ。」
「…由美、一つ疑問なんだが。」
「何か?」
「宗の奴、あのお姫様をどうする気でいるんだ?…まさかここに連れ込むつもりじゃねぇだろうな。」
「……充分…考えられますわ。」
宗次郎と名無しのあの笑顔。志々雄はうなだれる。
「…これ以上子守するのはごめんだぜ…」
* * * * *
「わぉ!ここ、何!?人も建物もたくさ…わ!色んなものがいっぱいある!」
「名無しさーん!勝手に行かないでください~!」
「すごいすごーい!」
はしゃいで暴走気味の名無しを慌てて追う宗次郎。
東京の街を腰まである黒髪を靡かせ、艶やかな十二単姿で駆け巡る名無しは当然、人々の注目の的である。
「名無しさ~ん…!」
「ねぇねぇ、宗次郎来て来て♪」
お菓子屋さんで手招きする名無しさんにやっと追い付いた。
「はぁ…どうしたんです?」
「これ何??色んな色があってとっても綺麗!」
「ああ、これは飴玉です。すっごく甘くておいしいですよv」
「食べれるの!?てっきり宝石だと思った!」
じっと飴玉を見つめる名無しさん。…すごいですね、瞳がものすごく輝いてるなぁ。
「…おばちゃーん、飴玉ください♪」
「え?宗次郎?」
「ふふv今日は名無しさんに色んなものを教えてあげますから♪」
「ほんと!?どうもありがとう!」
満面の笑顔を向けてくれる名無しさん。眩しくて、ちょっぴりどきっとしてしまいました…
「次はあっちの方行きましょう♪」
「うん♪」
迷子のお姫様は、すごく素敵だなぁと思いました。
to be continued...
(わあっ!おいしいっ!)
(でしょう?)
(おいしい!すっっごく甘いー♪)
(喜んでもらえてよかったですv)