マイホーム・プラネット
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
目を覚ますとそこは見慣れない部屋だった。
昨日はどうなったんだっけ。
仁王くんが助け出してくれて、それから…記憶が曖昧だ。
どうやらずっと寝ていたらしい。
側にあった時計は12時近くを指していた。
「あら起きたのね。よかった。熱は…うん、下がったみたいね」
「あっ、あの私…」
「あ、状況がわからないわよね。えっと昨日ね…」
私の額に手を添えた優しげなその女性は仁王くんのお母さんで、ここは仁王くんのお家だった。
仁王くんが熱を出している私をここに連れてきて、お母さんと看病していてくれたらしい。
ありがたいけどそれ以上に、私は他人の家に迷惑をかけてしまったことがショックだった。
「本当に、すみませんでした…」
「やだ、謝らなくていいのよ。あなたは悪いことなんてしてないんだから」
「私、すぐ帰ります」
「病み上がりなんだからゆっくりしていって。私が見てるからあんたは学校に行きなさいって言ったらね、雅治、渋々学校に行ったのよ。だから帰るまで待っててあげて」
「…はい。ありがとうございます」
「お腹空かない?お昼ご飯にしましょう」
「あ、いえ!そんな」
大丈夫です、と言い終わらないうちにお腹が大きい音をならした。
仁王くんのお母さんは「ちょっと待っててね」と笑ってキッチンに向かった。
出してくれた煮込みうどんはとても美味しかった。
そういえば、ママの手料理なんてもう長い間食べていないなぁとぼんやり思った。
☆
夕方になると仁王くんが息を切らして帰ってきた。
こんなに慌てた彼を見たのは初めてだ。
「おかえり仁王くん」
「ただいま。熱は?下がったんか?」
「うん、おかげさまで」
「そんならよかった。のう、ちょっと外散歩せんか」
「わかった」
パジャマ姿のままだったので、仁王くんのジャージを貸してもらった。
おかしいくらいぶかぶかだったけど、仁王くんの匂いがしてなんだか嬉しくなった。
夕暮れの道を2人並んで歩いた。
夜以外でこうして一緒にいるというのは新鮮で不思議な気分だ。
「仁王くんのお母さんは素敵なお母さんだね」
「ほーか?今は藤森がおるから優しいけど、いつもはおっかないぜよ」
「ええ?そうなの?」
「ああ。おっかないが…俺のことを傷つけたりはせん」
「…」
「普通の親はあんな…あんな酷いことせんじゃろ」
「そう、だね」
「なにがあった?」
今まで家のことは誰にも話さなかった。
みんなに明るくて楽しい子だと思われたかった。
好かれたかった。
他の誰より、仁王くんにはそう思われたかった。
「言いたくないなら話さんでもいい。でも俺は、藤森のことなら何でも知りたいと思うとるよ」
だけど、やっぱり。
弱さを受け止めてほしいと思うのも、また彼なのだ。
「ありがとう…話すよ。仁王くんには、聞いてほしい」
ふぅ、と一呼吸置いて。
少しの緊張を感じながら、私はこれまでのことを話し始めた。