みやこおち
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「すごい、見たことないお菓子ばっかり!」
藤森を連れてきたのは、昔から行きつけの駄菓子屋。
どうせ来たことないだろうと思って誘ってみた。
予想通り、藤森は映画くらいでしか見たことがないらしい。
ついた瞬間から大はしゃぎだ。
「可愛いからこれにしよっと」
「お〜いいじゃん。色々買って分けようぜ」
「うん!」
藤森がカゴに入れていたのは、棒ゼリー、フルーツ餅、マーブルチョコ。
カラフルなものばかりだ。
食い物に可愛さなんて求めたことないけど、こうして見ると確かにかわいいかも。
「丸井くん、そんなに買うの!?食べられる?」
「余裕だろぃ」
ラムネ、ポン菓子、きなこ棒、たこせんべい、ふ菓子、串カステラ、ポテトフライ…そんでもちろん風船ガム!
まだまだ食べられるけど、とりあえずこんなもんか。
夕飯の分の腹を残しとかなきゃだからな。
「真田くんにバレたら怒られちゃうんじゃない?食べ過ぎだって」
「藤森が言わなければ大丈夫!ってことで奢るから内緒な?」
「お主も悪よの〜う」
「悪代官の真似下手くそか」
「ふふ、ごちそうさまです!」
店の隣にある薄らぼけたブルーのベンチに座って、買った駄菓子を2人で食べた。
いつもは食い意地張ってて多く食べようとするのに、1つ食べるたびに藤森がいいリアクションをするから、ついたくさん食べさせてしまう。
「ん、これも食べてみな」
「これなに?」
「カステラ」
「四角くないカステラなんて初めて見た。…うん、なんか素朴で美味しいね!」
「だよな!ガムも食う?」
「これって丸井くんがよく膨らませてるやつ?」
「そうそう」
「私もやってみたかったんだ〜」
しばらくイチゴ味のガムを味わってから、膨らませようとする藤森。
ところが上手くいかないみたいで、「ん?」と首を傾げる。
ガムじゃなく頬ばっかり膨らんで、顔も赤くなってきた。
どんだけ必死なんだよ…!
あまりにも可愛いから写真を撮っておいた。
「ぷ、はぁ!もう無理…口が痛くなってきた」
「ははっ、ヘッタクソだなぁ〜。こうやるんだよ」
「さすが!これが天才と凡人の差…!」
悔しそうな顔で拍手をする藤森に、「そう、これが凡人な!」とさっき撮った写真を見せた。
するとまだ赤みの残る顔をさらに真っ赤にさせた。
「やだ消してー!丸井くん変な写真ばっかり撮るんだから!」
「ナイスショットだろぃ。かわいいぜ?」
「丸井くんはスイーツの食べ過ぎでかわいいの基準も甘々になってるよ…。それ誰にも見せないでね?」
「わりぃ、もう仁王に送っちまった」
「うそ!?」
「あ、返信きたわ」
「仁王くんなんて…?不細工すぎてひっくり返って頭打ったナリぜよ〜って…?」
「"かわいい。ずるい"って」
「かわいい!?…2人とも好みのクセ強すぎない?」
信じられない、とでも言いたげにドン引かれた。
いやいや。
お前の仁王のモノマネの方が、だいぶクセ強かったぞ?
「あ、私仁王くんにお土産買ってくる」
「土産?」
「うん。"ずるい"って言ってたから。仁王くんて駄菓子そんなに好きなんだね」
いや、それは抜け駆けすんなって意味だと思うけど。
「ちょっと待ってて」と藤森は再び店の中に入って行った。
その間俺はベンチでガムを噛みながら、「さっきの彼女!?」「デート!?」と冷やかしてくる小学生たちをあしらっていた。
「丸井くん、私いい物買ってきた!」
しばらくして戻ってきた藤森がビニール袋から取り出したのは、パッチンガム。
駄菓子と一緒に買ってきたらしい。
「それ仁王持ってるぜ?俺しょっちゅうやられてんだよな〜」
「知ってる。だから私が丸井くんの仇を取ってあげるよ!」
「え、お前が?」
「明日楽しみにしててね」
意気揚々とウインクする藤森。
うーん、それは難しいだろ。
相手は仁王だから、藤森のわかりやすすぎるドッキリにはひっかからないはずだ。
「まだまだじゃのう〜」とか言ってニヤニヤしてそうだもんな、あいつ。
ところが次の日、俺の予想とは違う展開になった。
「仁王くん、1つどうぞ!」
「…」
引っかかると信じて疑わない真っ直ぐな眼差し。
期待に満ちたキラキラした表情。
ガムを差し出された仁王は、困惑した顔で俺に視線を送ってきた。
お前、この藤森を裏切れるのか?
男なら腹くくれ!いけ!
そんな思いをこめて、うんと静かに頷いてみせた。
「あ、ありがたく頂くぜよ」
苦笑いでガムに手を伸ばす仁王。
パチン、といい音がした。
「仁王くん引っかかったー!やったぁ!」
「…俺をペテンにかけるとはなかなかやるのぅ」
やばい、ウケる。
まさか仁王のこんな姿を見られるなんて。
ジャンプしながら喜ぶ藤森に聞こえないように、「お前役者だな!やるじゃん」と仁王に耳鎚した。
「丸井は覚えときんしゃい」
「え、俺?俺はガムのことは唆してねぇぞ?」
「ガムのことはいいんじゃ、藤森が喜んでるから!…抜け駆けのことぜよ」
そっちかよ!
まだ根に持ってたのか。
こいつの恨み買ったらめんどくさそうだなぁ。
ジトッと睨まれて、ため息をついた。
「騙してごめんね仁王くん。今度は一緒に行こうね」
「!…ピヨッ」
さっきの機嫌の悪さは何処へやら。
藤森から本物の駄菓子を渡された仁王は、俺に見せびらかしながら上機嫌で食べていた。
うっぜぇ!
お前、いつもの飄々としたクールなキャラはどうした。
スキップすんな、鳥肌立つわ!
仁王がこんな風にしてしまうなんて、やっぱ藤森は只者じゃないんだなとしみじみ思った。
〜はじめての駄菓子屋〜
『ねぇ跡部って駄菓子屋行ったことある?』
『ああ、あるぜ』
『あるの!?意外すぎる…』
『ジロー達と一緒にな。きなこ棒とか言うスイーツが絶品だった』
『私も食べた!美味しいよね』
『パティシエに挨拶できなかったのが残念だぜ』