みやこおち
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「おーい藤森!安いスーパーに詳しそうなやつを連れてきてやったぜぃ!」
「おい、初対面の女子にそんな紹介の仕方やめろよ!」
「君が桑原くん?はじめまして」
「あ、ああ、よろしくな…」
ある日の休み時間。
ブン太に紹介されたのは、最近よくテニス部で話題にあがる藤森だった。
俺も会ってみたいとは思っていたけど、まさかこんな不本意な紹介されるなんて思ってなかったぞ…。
「ジャッカル〜、こいつ初心者マークの庶民だからさ、色々教えてやってくれよ」
「その言い方だと俺がプロの庶民みたいだろ」
「桑原プロ、お願いします!」
「その呼び方はやめてくれー!」
「ごめんごめん。あのね、私今日おつかいを頼まれたんだけど、どこかいいスーパーを知ってない?」
「おつかい?そうだな…この辺りだと肉と惣菜は△△スーパー、野菜類は◻︎◻︎スーパーがおすすめだぜ」
「メモメモ…っと。ありがとう桑原くん。今日はさっそく◽︎◽︎スーパーの方に行ってみるね」
「1人じゃ場所わかんねーだろぃ?大丈夫、ちゃんとついてってやるからさ。ジャッカルが!」
「俺かよ!?」
「嫌なのかよー」
「嫌じゃねーけどよ…」
「まぁ俺も行くからさ!んじゃ、また後でな」
「あ、待って丸井くん!ほんとに、巻き込んじゃってごめんね」
「ああ、いいって」
手を合わせて謝ってから、慌ててブン太の後を追う藤森。
「走って転ぶなよ〜」と見送っているそばから、何かにつまづきそうになっていた。
危なっかしいやつだな、と心配になった。
夕方、約束通り3人でスーパーに向かった。
入り口でカゴとカートを取ると、藤森が「私が押したい!」とキラキラした目で言ってきたので渡した。
得意げにカートを押している姿に、あの番組…はじめてのおつかいを見ている気分になった。
ちゃんとカメラマン(スマホを持ったブン太)がいるから余計に。
「お前はなんで動画撮ってんだ?」
「ん?藤森の記念すべき瞬間だからな、記録しとかないと。あ、心配しなくてもジャッカルにも送ってやるから、安心しろぃ」
ウインクされたが、別にそんな心配をしてるわけじゃないぞ?
藤森に変な誤解されたらどうするんだよ!
一瞬焦ったが、藤森はそんなことお構いなしにキョロキョロと周りを見回していた。
「物がたくさんあって宝探しみたいだね。トマトどこだろ…」
「ああトマトはな、」
「待って言わないで!ヒントだけちょうだい」
「ヒント?…ヒントは上だ。どこのスーパーもたいてい上見ると何のコーナーか書いてあるぞ」
「本当だ。えっと野菜は…左の方だね」
指をさしたほうに進んでいくと、野菜コーナーにたどり着いた。
「トマトあった、きゅうりも!」
次々にお目当てのものを見つけては、俺に見せて報告してくる藤森。
「よかったな」と頷くと、嬉しそうに藤森も頷くから、微笑ましくて口元が緩んだ。
最後にブン太から新鮮な野菜の選び方をレクチャーされながらレタスを選んで、買い物は終了した。
「2人のおかげで無事おつかいができたよ。ありがとう」
「どういたしまして」
「そういや、藤森の家って親が飯作ってんの?」
「うん、今はママが作ってくれるよ。シェフいなくなっちゃったから」
「急に料理やらなきゃって大変だな」
「ふふ、うん。この前も炭火焼き風ハンバーグ(直焼き!強火!)みたいなのができて慌ててた〜。失敗しちゃうけど、楽しそうに料理してるよ」
「なんか藤森のママさんって感じだな。あ、良い意味でだぜ」
「わかる。想像できるよな」
「そう?シェフのも美味しかったけど、私ママのご飯が一番好きなんだ。パパもそう言ってた!」
「それは何よりだな」
ニコニコと嬉しそうに話す藤森を見ていて、ふと思った。
育ちの良さって、こういうことなんだろうな。
金持ちだとか品があるとかそういうのじゃなくて、素直で純粋なまま育ったというか。
なんとなく、みんなが藤森に惹かれる理由がわかった気がした。
「なーに見惚れてんだよジャッカル。藤森はダメだからな?」
「な、なんのことだよ」
「…やっぱジャッカルには動画送ってやらねー」
「誤解だって!」
ブン太に睨まれて苦笑した。
藤森のこと、ちょっとかわいいななんて思ったことは、言わないでおこう。
「桑原プロいますかー?」
「まだその呼び方するのかよ!」
「あ、いたいた、桑原玄人!」
「微妙に言い方変えてもダメだからな!?」
それから時々、藤森は俺のクラスにやってくるようになった。
なぜか特売情報を教え合うという習慣ができたのだ。
藤森に呼ばれると周りがざわついて、正直少し恥ずかしい。
だけどこれがちょっとした楽しみになっていて、俺はいつでも鞄の中にチラシを用意しているんだ。
〜はじめてのスーパー〜
『もしもし?』
『俺だ。今どこだ?』
『あ、跡部。今スーパーの帰りだよ。卵が8個で99円で買えたの!すごくない?』
『99円だと!?…それ何の卵なんだ?』
『え、普通に鶏の卵だよ』
『そんな値段で本当に売ってるのか…そのスーパー、やるじゃねーの』
『うん、スーパーってすごいよ!跡部も社会科見学として行ってみなよ!』
『ああ、この目で確かめさせてもらうぜ』
「おい、初対面の女子にそんな紹介の仕方やめろよ!」
「君が桑原くん?はじめまして」
「あ、ああ、よろしくな…」
ある日の休み時間。
ブン太に紹介されたのは、最近よくテニス部で話題にあがる藤森だった。
俺も会ってみたいとは思っていたけど、まさかこんな不本意な紹介されるなんて思ってなかったぞ…。
「ジャッカル〜、こいつ初心者マークの庶民だからさ、色々教えてやってくれよ」
「その言い方だと俺がプロの庶民みたいだろ」
「桑原プロ、お願いします!」
「その呼び方はやめてくれー!」
「ごめんごめん。あのね、私今日おつかいを頼まれたんだけど、どこかいいスーパーを知ってない?」
「おつかい?そうだな…この辺りだと肉と惣菜は△△スーパー、野菜類は◻︎◻︎スーパーがおすすめだぜ」
「メモメモ…っと。ありがとう桑原くん。今日はさっそく◽︎◽︎スーパーの方に行ってみるね」
「1人じゃ場所わかんねーだろぃ?大丈夫、ちゃんとついてってやるからさ。ジャッカルが!」
「俺かよ!?」
「嫌なのかよー」
「嫌じゃねーけどよ…」
「まぁ俺も行くからさ!んじゃ、また後でな」
「あ、待って丸井くん!ほんとに、巻き込んじゃってごめんね」
「ああ、いいって」
手を合わせて謝ってから、慌ててブン太の後を追う藤森。
「走って転ぶなよ〜」と見送っているそばから、何かにつまづきそうになっていた。
危なっかしいやつだな、と心配になった。
夕方、約束通り3人でスーパーに向かった。
入り口でカゴとカートを取ると、藤森が「私が押したい!」とキラキラした目で言ってきたので渡した。
得意げにカートを押している姿に、あの番組…はじめてのおつかいを見ている気分になった。
ちゃんとカメラマン(スマホを持ったブン太)がいるから余計に。
「お前はなんで動画撮ってんだ?」
「ん?藤森の記念すべき瞬間だからな、記録しとかないと。あ、心配しなくてもジャッカルにも送ってやるから、安心しろぃ」
ウインクされたが、別にそんな心配をしてるわけじゃないぞ?
藤森に変な誤解されたらどうするんだよ!
一瞬焦ったが、藤森はそんなことお構いなしにキョロキョロと周りを見回していた。
「物がたくさんあって宝探しみたいだね。トマトどこだろ…」
「ああトマトはな、」
「待って言わないで!ヒントだけちょうだい」
「ヒント?…ヒントは上だ。どこのスーパーもたいてい上見ると何のコーナーか書いてあるぞ」
「本当だ。えっと野菜は…左の方だね」
指をさしたほうに進んでいくと、野菜コーナーにたどり着いた。
「トマトあった、きゅうりも!」
次々にお目当てのものを見つけては、俺に見せて報告してくる藤森。
「よかったな」と頷くと、嬉しそうに藤森も頷くから、微笑ましくて口元が緩んだ。
最後にブン太から新鮮な野菜の選び方をレクチャーされながらレタスを選んで、買い物は終了した。
「2人のおかげで無事おつかいができたよ。ありがとう」
「どういたしまして」
「そういや、藤森の家って親が飯作ってんの?」
「うん、今はママが作ってくれるよ。シェフいなくなっちゃったから」
「急に料理やらなきゃって大変だな」
「ふふ、うん。この前も炭火焼き風ハンバーグ(直焼き!強火!)みたいなのができて慌ててた〜。失敗しちゃうけど、楽しそうに料理してるよ」
「なんか藤森のママさんって感じだな。あ、良い意味でだぜ」
「わかる。想像できるよな」
「そう?シェフのも美味しかったけど、私ママのご飯が一番好きなんだ。パパもそう言ってた!」
「それは何よりだな」
ニコニコと嬉しそうに話す藤森を見ていて、ふと思った。
育ちの良さって、こういうことなんだろうな。
金持ちだとか品があるとかそういうのじゃなくて、素直で純粋なまま育ったというか。
なんとなく、みんなが藤森に惹かれる理由がわかった気がした。
「なーに見惚れてんだよジャッカル。藤森はダメだからな?」
「な、なんのことだよ」
「…やっぱジャッカルには動画送ってやらねー」
「誤解だって!」
ブン太に睨まれて苦笑した。
藤森のこと、ちょっとかわいいななんて思ったことは、言わないでおこう。
「桑原プロいますかー?」
「まだその呼び方するのかよ!」
「あ、いたいた、桑原玄人!」
「微妙に言い方変えてもダメだからな!?」
それから時々、藤森は俺のクラスにやってくるようになった。
なぜか特売情報を教え合うという習慣ができたのだ。
藤森に呼ばれると周りがざわついて、正直少し恥ずかしい。
だけどこれがちょっとした楽しみになっていて、俺はいつでも鞄の中にチラシを用意しているんだ。
〜はじめてのスーパー〜
『もしもし?』
『俺だ。今どこだ?』
『あ、跡部。今スーパーの帰りだよ。卵が8個で99円で買えたの!すごくない?』
『99円だと!?…それ何の卵なんだ?』
『え、普通に鶏の卵だよ』
『そんな値段で本当に売ってるのか…そのスーパー、やるじゃねーの』
『うん、スーパーってすごいよ!跡部も社会科見学として行ってみなよ!』
『ああ、この目で確かめさせてもらうぜ』