みやこおち
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「いや〜まさか父さんの会社が倒産するとはね!!」
「……」
「跡部、笑うどころか無言で睨みつけるのやめて」
能天気につまらないギャグを飛ばしている幼馴染、藤森美春に俺は頭を抱えた。
美春は許嫁でもあり、中等部から氷帝学園に通っていた。
2学年も終わろうとしていた3月、藤森財閥の経営が突然悪化し、見る見る間に倒産に追い込まれたのだ。
美春の父親は、親戚の伝手で仕事がなくなることは無いそうだが、今までのような暮らしは到底できないだろう。
仕事の都合で来月から神奈川に引っ越すらしい。
それに伴って美春も神奈川の立海大附属中に転校することになった。
「で?いつから転校するんだよ」
「来月かな、4月からでキリがいいし」
「うちから氷帝に通えばいいだろ」
「ええ!?そういうわけにはいかないよ、許嫁でもなくなったし」
「…俺は婚約解消なんて認めてねぇ」
「いやいや、どうしちゃったの跡部。『お前みたいなすっとぼけた女が許嫁なんて、俺は認めねぇ!』っていつも言ってたじゃん」
「うるせぇよ」
「あいたっ」
余計なことを言い出した美春の額を弾いた。
「女の子にデコピンは酷いよ!」とうらめしそうに俺を見ながら額を抑えている。
フン、充分手加減してやっただろーが。(昔手加減を間違えて泣かれたのが、実のところ少しトラウマだ。)
「おい。何かあったらすぐ連絡しろよ?」
「何かって、おもしろかったこととか?」
「おもしろ…フッ、ああそうだな。困ったこともあったら言えよ」
「大丈夫だよ、たぶん!跡部は心配性だなぁ」
「お前みたいな世間知らずな女が社会に放り出されるなんて、全く恐ろしいぜ」
「ん?世間知らずとか、跡部には言われたくないセリフNo. 1なんだけど…はいはい嘘です!デコピンはやめて!!」
再び額に狙いを定めると、美春は走って逃げ出した。
制服のスカートがはためき、パタパタと足音がなる。
もうちょっと上品に走れねぇのか、と後ろ姿を見てため息をついていたら、美春がくるりと振り向いた。
満面の笑みだった。
「ねぇ跡部!!」
「アーン?」
「人生って何があるかわからないね!」
贔屓目に見ても、強いやつだなと思う。
本来なら気が滅入ってしまうであろうこの状況だ。
だが、美春からは悲壮感なんて微塵も出ていない。
あるのは、冒険に出かける時ような、新しいことに出会える期待だけだ。
おもしろいやつだ。
美春は、ただの能天気ですっとぼけた女ではない。
これだから、こいつからは目が離せないんだ。
「……」
「跡部、笑うどころか無言で睨みつけるのやめて」
能天気につまらないギャグを飛ばしている幼馴染、藤森美春に俺は頭を抱えた。
美春は許嫁でもあり、中等部から氷帝学園に通っていた。
2学年も終わろうとしていた3月、藤森財閥の経営が突然悪化し、見る見る間に倒産に追い込まれたのだ。
美春の父親は、親戚の伝手で仕事がなくなることは無いそうだが、今までのような暮らしは到底できないだろう。
仕事の都合で来月から神奈川に引っ越すらしい。
それに伴って美春も神奈川の立海大附属中に転校することになった。
「で?いつから転校するんだよ」
「来月かな、4月からでキリがいいし」
「うちから氷帝に通えばいいだろ」
「ええ!?そういうわけにはいかないよ、許嫁でもなくなったし」
「…俺は婚約解消なんて認めてねぇ」
「いやいや、どうしちゃったの跡部。『お前みたいなすっとぼけた女が許嫁なんて、俺は認めねぇ!』っていつも言ってたじゃん」
「うるせぇよ」
「あいたっ」
余計なことを言い出した美春の額を弾いた。
「女の子にデコピンは酷いよ!」とうらめしそうに俺を見ながら額を抑えている。
フン、充分手加減してやっただろーが。(昔手加減を間違えて泣かれたのが、実のところ少しトラウマだ。)
「おい。何かあったらすぐ連絡しろよ?」
「何かって、おもしろかったこととか?」
「おもしろ…フッ、ああそうだな。困ったこともあったら言えよ」
「大丈夫だよ、たぶん!跡部は心配性だなぁ」
「お前みたいな世間知らずな女が社会に放り出されるなんて、全く恐ろしいぜ」
「ん?世間知らずとか、跡部には言われたくないセリフNo. 1なんだけど…はいはい嘘です!デコピンはやめて!!」
再び額に狙いを定めると、美春は走って逃げ出した。
制服のスカートがはためき、パタパタと足音がなる。
もうちょっと上品に走れねぇのか、と後ろ姿を見てため息をついていたら、美春がくるりと振り向いた。
満面の笑みだった。
「ねぇ跡部!!」
「アーン?」
「人生って何があるかわからないね!」
贔屓目に見ても、強いやつだなと思う。
本来なら気が滅入ってしまうであろうこの状況だ。
だが、美春からは悲壮感なんて微塵も出ていない。
あるのは、冒険に出かける時ような、新しいことに出会える期待だけだ。
おもしろいやつだ。
美春は、ただの能天気ですっとぼけた女ではない。
これだから、こいつからは目が離せないんだ。
1/7ページ