重ね傷
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包帯とガーゼを引き剥がした。
腿の傷もカサブタになり、だんだん痛みもなくなってきていた。
心もこうやって時間が経てば癒えていき、忘れられると思っていた。
だけど、忘れちゃいけないんだ。
自分が貞治に好きになってもらえるような女じゃないと、自覚しないと。
「痛っ…」
カサブタに爪をたてて力を入れた。
鮮やかな赤が足を伝っていく。
私は血で汚れた指で、メッセージをうった。
「ごめん、貞治とは付き合えない。ずっと言えてなかったけど、実は蓮二と付き合ってるの」と。
それだけの文なのに、涙で視界はかすみ、手は震えて、時間がかかってやっと送った。
どうして私がこんな目に。
悲しみと、蓮二への憎しみが溢れた。
私はずっと傷を抱えて生きていかなきゃいけないのに、蓮二はいつか忘れて他の人と幸せになるの?
そんなの、許せない。
電話をかけて呼び出すと、蓮二は息をきらして私の部屋まで来た。
血が流れている私の足を見て、唇を噛み締めている。
私は蓮二の胸ぐらを掴んで揺さぶった。
「貞治が私のこと好きだって。付き合ってくれって言われた」
「美春、」
「でも無理だよ!蓮二が、私のことこんな風にしたから…!」
「すまない…」
「何でもするって言ったよね?だったら私と居て。私が苦しんでるの見て、一緒に苦しんでよ!!」
「ああ、わかった。わかったから、とりあえず手当を」
胸が痛くて苦しい。
涙が溢れてくる。
蓮二は呼吸が荒い私の背中をさすりながら座らせると、手早く手当をした。
「ずっと側にいる」
蓮二はそう言って、私が眠りにつくまで両手を握りしめていた。
酷いことをした手だというのに、あたたかくて優しかった。