重ね傷
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「昨日はよく眠れた?」
「うん」
「それは良かった。だがまだ顔色が悪い。俺の特製ドリンクを…」
「え、無理無理、それは無理!」
「…そう言うと思って、市販の栄養ドリンクを持ってきたよ」
「よかったぁ」
貞治は一日置きくらいのペースで私の様子を見に来てくれた。
申し訳なくて買い物は頼まなかったが、いつも何か持ってきてくれる。
「人気はともかく、栄養価では負けていないからな…」と栄養ドリンクに向かって愚痴を言っている貞治。
思わず吹き出してしまった。
「やっと笑ったね」
「え?私そんなに笑ってなかった?」
「ああ、最近は全く。美春は笑顔の方が似合うのに」
「ふふ。貞治にキザな台詞は似合わないよ」
「だんだんらしくなってきたな」
貞治が眼鏡を押し上げて、フッと微笑んだ。
ああ確かに、こんな風に笑ったのは久しぶりな気がする。
立ち直れるのかもしれない。
いや、立ち直らないと。
いつまでも貞治に心配をかけていちゃダメだ。
「貞治には本当に感謝してる」
「俺は美春に会いたくて来ているだけだよ。きみのことが好きだからね」
「え?」
「俺と付き合ってくれないか」
嬉しかった。
好きな人に好きだと言ってもらえるなんて。
そうだ、あんなことなかったことにして、貞治と付き合って…
…なかったことに?
そんなの無理だ。
なかったことになんてならない。
私には貞治と付き合う資格なんてないんだ。
沈黙してしまった私に、貞治は苦笑した。
「今すぐ答えを出さなくていいよ。考えておいてくれ」
「…わかった」
「美春」
「ん?」
「何があったのかはわからないが…俺はきみを支えたい。美春のことなら全て受け入れられる。信じてくれ」
「……」
「じゃあまた」
全部受け入れる、だなんて。
何も知らないからそんなこと言えるんだよ。
貞治が出て行き閉まったドアを見つめたまま、しばらく動けなかった。