重ね傷
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暴力は一切振るわれなかった。
その代わり、反抗的な態度をとると、蓮二は私を置き去りにして出かけてしまう。
私はこの空間に1人きりにされることに強い恐怖心があり、もはやトラウマのようになっていた。
体は震え動悸が激しくなり、涙が止まらなくなる。
誰かに縋りたくてたまらない。
例え蓮二であっても。
置き去りにされないように、私は従順にしていた。
帰りたい、なんて口に出さない。
貞治の名前を呼ぶこともなくなった。
何度抱かれても嫌悪感は消えなかったが、抵抗はせず人形のようにされるがままになった。
「美春、愛している」
耳元で繰り返される言葉を、もし私も同じように言ったなら。
心もあなたのものになったのだと、そう思わせたら。
私は、ここから出られるだろうか。
死んでも言いたくなかったけれど、もう、解放されるならなんでもいい。
限界だった。
「…私も」
「なんだ?」
「私も、愛してる」
嘘を吐く唇を、指でなぞられた。
蓮二は満足そうな顔で「もう一度」と催促した。
愛してるって、どういうことだったっけ。
よくわからなくなってしまった言葉を、私はまた吐き出した。
「愛してる」