重ね傷
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「ねぇ。もう、気が済んだでしょ?…帰らせて」
散々弄んだ後、蓮二は涙でぐしゃぐしゃの私をあやすように、抱きしめたまま背中をぽんぽんと叩いている。
疲労感でついそのまま眠ってしまいそうになるが、いけないと思い直して拒絶を示す。
「疲れただろう。一度寝たらどうだ」
「私は帰りたいの」
「だめだ。美春にはしばらくここにいてもらう。夏休みはまだ長いからな」
「しばらくって」
「お前の心も手に入れるまでだ」
「は…?」
身体は既に手に入れたというような言い方に、悔しさと憎しみが湧いてくる。
無理やり奪ったくせに。
私は目の前の、友人だったはずの男を睨みつけた。
「こんなことされて、好きになるわけないでしょ!?蓮二なんて、大嫌い…!」
蓮二は一瞬顔を曇らせたが、すぐにフッと薄い笑みを浮かべて私から離れた。
そして自分だけ乱れていた服装を整え、裸のままの私にはタオルケットをかけた。
「出かけてくる。いい子にして待っていてくれ」
そう言って私の頭を撫でると、部屋を出て行った。
カチャ、と鍵のかかった音が聞こえて、今私がいるのは奥の部屋だとわかった。
部屋の外側に鍵がついてるのを見た時点で、おかしいと気付くべきだったのに。
私は本当にバカだ。
どうにか外に出られないかと辺りを見回しても、窓すらない。
持っていたはずのスマホもない。
あるのはベッドと本棚と、床に落ちている私の下着だけ。
腕も拘束されたままで、まともに身動きもとれない。
…ダメだ。
逃げられない。
絶望でまた涙が出てきた。
次にドアが開くまでの時間は、恐ろしいくらいに長く感じた。
静まり返ったこの空間は、まるで世界から遮断されてしまったようで、不安に苛まれる。
頭がおかしくなりそうだった。
蓮二は俯いて泣いている私に「どうした?寂しかったのか?」とどこか嬉しそうな声で言った。
違う、蓮二といるよりは1人の方がマシだと、そう言いたかったのに。
私の口から出たのは「お願いだから、1人にしないで」という縋りつくような言葉だった。