重ね傷
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蓮二はずっと私の部屋にいた。
私が何度暴言を吐いても、泣き喚いても、何回傷を抉っても。
謝罪の言葉を繰り返しながら私の側にいた。
ふと隣で眠っている蓮二を見ると、ずいぶんやつれたように見えた。
…もう、やめよう。
こんな事を繰り返しても意味がない。
全部蓮二のせいにして、どんどん私は駄目になっていく。
本当はもうわかっているのに。
「全て受け入れる」と貞治は言ってくれたのに、信じられなかったのは私だ。
自分が弱くて卑怯だから、貞治から逃げて蓮二に八つ当たりをしているだけだ。
「もう帰っていいよ、蓮二」
目を覚ました蓮二にそう告げると、呆然と見つめられた。
せっかく解放されるというのに、何故か瞳が悲しそうに揺れている。
「今まで閉じ込めててごめん」
「何故美春が謝るんだ?それに、俺は閉じ込められてなどいない」
「物理的にはね。でも私がここに居てって言ったから」
「違う!違うんだ」
「何が違うの」
「何もできず美春を見ているのは確かに苦しかった…しかし、苦しさよりも側にいられる嬉しさが勝ってしまう」
「…」
「もう美春には近づくことも許されないと思っていた。だからこうして側に居させてくれるだけで幸せだ。ありがとう」
そう言って微笑んだ蓮二を、私は気づけば抱きしめていた。
…私、何を?
そして自分でしたことに驚いて、今度は突き飛ばした。
今、蓮二を愛おしいと思った?
嘘だ、違う。
好きなんかじゃない。
むしろ憎んでる。
だって、あんなことされて好きになるなんて、絶対ないはず。
「美春?」
「お願い、出てって。1人になりたいの」
「…わかった」
近寄ってきた蓮二を拒絶すると、静かに頷いて出て行った。
私たちはただ、苦しむために一緒にいたはずなのに。
どうしてこうなったんだろう。
私は混乱していた。