重ね傷
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「うちに遊びに来ないか」
夏休みが始まったばかりの頃だった。
特に予定もなく部屋でだらだらと過ごしていると、同じ学科の友人である蓮二から連絡が来た。
「貞治も来るぞ」
「え、貞治も?」
貞治とは学部も違うけれど、蓮二との繋がりで仲良くなり、1年のころから親しくしている友人だ。
実は、私は彼に好意を持っている。
知っているのは蓮二だけだ。
だから気を使ってくれたのだろうと思った。
私は喜んで「行く!」と返事をした。
「おじゃましまーす」
「ああ、あがってくれ」
教えられた住所をたよりに、蓮二の住むマンションを訪ねた。
色んなところに一緒に遊びには行ったけど、家に来たのは初めてだ。
招き入れられた部屋を見回すと、シンプルで落ち着いた色の家具でまとまっていて、蓮二らしいなと思った。
奥にはもう一部屋あるようで、鍵付きのドアが見える。
大学生の一人暮らしにしてはずいぶん広い。
私の狭いワンルームとは大違いだ。
「貞治はもう少しかかるそうだ 」
「そうなんだ」
「少し待っていてくれ。お茶を淹れてくる」
「ありがとう。あ、お菓子持ってきたから一緒に食べよう」
「それは楽しみだな」
警戒心も持たず、のこのこ男性の部屋に上がってしまった私も悪かったのかもしれない。
でも、彼は良い友人だったから。
いつも穏やかで優しくて、賢くて冷静で、頼りになる友人だった。
信用していたのだ。
だから貞治がなかなか来なくても、「遅いなぁ」くらいにしか思わなかった。
「あれ…?」
呑気に出されたお茶を飲んでいると、突然襲ってくる眠気。
なんだかおかしい。
そう思った時にはもう瞼が開かなくなって、私は意識を手放した。
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