捨てられた上履き。
ぐちゃぐちゃに落書きされた教科書。
ぶつけられるゴミ。
浴びせられる罵倒。

私はいじめを受けている。
主に何かしてくるのはクラスの派手な女子グループの子たちだ。
他のクラスメイトは見て見ぬふりで、私をいないものとして扱っている。

私をいじめるグループには、1人何もしてこない女の子がいる。
アイちゃんというとても可愛い子だ。
アイちゃんはいじめは良くないと思っているのだろう、普段は傍観に徹していて、時々私を気づかいこっそり「大丈夫？ごめんね、私やっぱり止められなくて…」と声をかけてくれる。
優しい女の子だ。

アイちゃんには他クラスの彼氏がいる。
彼氏の名前は幸村精市、私の幼馴染だ。
精市くんは私がいじめられていることに心を痛めている。
精市くんだけが、私の味方なのだ。

「美春！…大丈夫？」
「精市くん…」

私が医務室に向かったと誰かから聞いたんだろう、精市くんは息を切らして駆け込んできた。
私は叩かれて真っ赤に腫れていた頬を手で隠す。
目に薄っすら涙を浮かべて、声を震わせながら「大丈夫だよ」と答えれば、精市くんは泣きそうな顔で私を抱きしめた。

優しい精市くんが大好き。
昔からずっと好き。
でも、あの子のものになった精市くんは嫌い。
だから大好きな精市くんを取り戻したい。

わざわざいじめられるように仕向けた。
傷ついてもないのに泣いてみせた。
あなただけが味方なのと縋ってみせた。
全部全部、あなたを手に入れるため。
ねぇ精市くん。
あなたのために、わざわざこんな面倒なことをしてるんだよ。
私って、努力家でしょう？？