第一章 蒼と青の世界
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視界が薄っすらと、白い光に包まれていく。
「……眩しい…」
微睡みの中、徐々に意識が浮上する。
瞼を開けた瞬間、島に着いてから何も口にしていない私のお腹が、盛大な音を鳴らした。
「うぅ…お腹空いた…とりあえず何か食べに行こう…」
宿を出て、朝ご飯が食べられそうな店を探す。
大通りに差し掛かったところで、早朝であるにも関わらず、賑わっている食堂を見つけた。
私は迷わず店に入り、暖かいスープとパンのセットにホットミルクを注文し、周囲を見渡す。
近くの席の客に声を掛け、幼馴染の情報を集めていると、店の店主が出来上がった料理を運んで来てくれた。
「お嬢ちゃん、お待たせ! 特製サラダはサービスだよ!」
湯気の立つ美味しそうなスープとふわふわのパン。
横には島で採れる新鮮な野菜を使ったサラダが添えてあった。
「美味しそう!いただきますっ!」
パンを頬張りスープを一口流し込むと、頬が落ちそうになる美味しさに、思わず笑みが溢れた。
「うまそうに食うねぇ…お嬢ちゃんは人を探してるのかい?」
ニコニコしながら質問してくる店のおじさんに、カイルの特徴を伝え、彼を知らないか尋ねる。
「うーん…その子かどうかはわからないけど…数日前に海岸の方で、見覚えのない男の子を見掛けたなァ」
店主との会話を、隣で聞いていた女性が口を挟む。
「私もここ最近、知らない顔の子供達が海辺を彷徨いてるのをよく見るわ…あなたの探してる子もその中に居るんじゃない?」
思いの外、有力な情報を得た私は急いで食事を済ませ、席を立った。
「ごちそうさまでした…それじゃあ、海岸の方に行ってみます!ありがとうございました!」
店を出て、海岸ヘ続く道を足早に進む。
視界に海を捉え、立ち止まって深く深呼吸をした。
この先に、幼馴染が居るかも知れない。
なんて声を掛けようか。
いざという時、どう対処するのか。
緊張を解すように、辺りの空気を吸い込んだ。
「…………よしっ」
枝を掻き分け、木々の間から海岸を覗き込む。
静まり返った浜辺に、人の気配はない。
「はぁ…緊張した…けど、誰もいない…」
冬島の冷たい潮風が、頬を撫で、髪を揺らす。
瞼を閉じると、心地いい波音と海の匂いが私を落ち着かせた。
「…………」
不意に、風に乗った誰かの話し声が耳に届く。
近づくに連れ、だんだん大きくなっていく怒声。
何なら揉めているようで、暫くするとそれは少年の泣き声へと変化した。
岩陰に隠れ、恐る恐る覗いてみると、カイルと同じ歳くらいの短髪の男の子が、こちらに背を向け立っている。
少年の足元には、泣き声の主であろう男の子が二人と、何故か傷だらけになった子熊が一匹倒れていた。
背格好が全く違うので、幼馴染ではないと、すぐに判断できたのだが、目の前の状況に我慢できなくなった私は、思わず飛び出してしまった。
「弱い者いじめはだめだよ!」
驚いた様子でこちらを向いた少年。
彼は溜息を吐き、少々面倒くさそうに口を開いた。
「ハァ…弱い者いじめなんかしてねェよ」
否定する男の子に、倒れている二人と一匹を指差して講義する。
「でもみんな、ケガをして倒れてるじゃない!」
再び、深く息を吐く少年。
無言のまま白熊の側に歩いて行くと、徐に怪我の具合を診始めた。
「そっちは、お前に任せる…」
彼は一瞬だけ倒れている二人を見遣り、また直ぐに熊の治療に取り掛かる。
「なんで私が… 」
横暴な少年に少々腹が立ったけれど、倒れている二人が心配だったので、文句を言いながら怪我の様子を探る。
「これくらいなら、大丈夫…その白熊も一緒に治すから、こっちに並べて」
怪我の具合を診る限り、みんな大した傷ではなかった。
男の子は不思議そうな顔をしていたが、無理やり一箇所に集めてもらい、ついでに彼も傍に立たせた。
「じゃあ纏めて治療するよ…もうケンカはしないでよね…」
一言だけ忠告して、瞼を閉じ集中する。
腕の紋章が熱を帯び、僅かな光を放った。
「 "花言葉一つ目" コンフォート」
解号と共に、彼等を眩い光が包む。
少年は目を見開き、私を凝視していた。
「なんだ…お前、能力者か?」
少年達を包んでいた白い光が消えると、身体の傷は跡形もなく消えていた。
「能力者…? うん…まぁ、そんなところかな」
見知らぬ人に秘密を明かす訳にもいかず、適当に話を流す。
「…………」
怪訝そうな表情を向ける男の子から、慌てて目を逸らした私。
二人と一匹が目を覚ますまでの間、一言も言葉を交わすことなく時は過ぎていった。
「……眩しい…」
微睡みの中、徐々に意識が浮上する。
瞼を開けた瞬間、島に着いてから何も口にしていない私のお腹が、盛大な音を鳴らした。
「うぅ…お腹空いた…とりあえず何か食べに行こう…」
宿を出て、朝ご飯が食べられそうな店を探す。
大通りに差し掛かったところで、早朝であるにも関わらず、賑わっている食堂を見つけた。
私は迷わず店に入り、暖かいスープとパンのセットにホットミルクを注文し、周囲を見渡す。
近くの席の客に声を掛け、幼馴染の情報を集めていると、店の店主が出来上がった料理を運んで来てくれた。
「お嬢ちゃん、お待たせ! 特製サラダはサービスだよ!」
湯気の立つ美味しそうなスープとふわふわのパン。
横には島で採れる新鮮な野菜を使ったサラダが添えてあった。
「美味しそう!いただきますっ!」
パンを頬張りスープを一口流し込むと、頬が落ちそうになる美味しさに、思わず笑みが溢れた。
「うまそうに食うねぇ…お嬢ちゃんは人を探してるのかい?」
ニコニコしながら質問してくる店のおじさんに、カイルの特徴を伝え、彼を知らないか尋ねる。
「うーん…その子かどうかはわからないけど…数日前に海岸の方で、見覚えのない男の子を見掛けたなァ」
店主との会話を、隣で聞いていた女性が口を挟む。
「私もここ最近、知らない顔の子供達が海辺を彷徨いてるのをよく見るわ…あなたの探してる子もその中に居るんじゃない?」
思いの外、有力な情報を得た私は急いで食事を済ませ、席を立った。
「ごちそうさまでした…それじゃあ、海岸の方に行ってみます!ありがとうございました!」
店を出て、海岸ヘ続く道を足早に進む。
視界に海を捉え、立ち止まって深く深呼吸をした。
この先に、幼馴染が居るかも知れない。
なんて声を掛けようか。
いざという時、どう対処するのか。
緊張を解すように、辺りの空気を吸い込んだ。
「…………よしっ」
枝を掻き分け、木々の間から海岸を覗き込む。
静まり返った浜辺に、人の気配はない。
「はぁ…緊張した…けど、誰もいない…」
冬島の冷たい潮風が、頬を撫で、髪を揺らす。
瞼を閉じると、心地いい波音と海の匂いが私を落ち着かせた。
「…………」
不意に、風に乗った誰かの話し声が耳に届く。
近づくに連れ、だんだん大きくなっていく怒声。
何なら揉めているようで、暫くするとそれは少年の泣き声へと変化した。
岩陰に隠れ、恐る恐る覗いてみると、カイルと同じ歳くらいの短髪の男の子が、こちらに背を向け立っている。
少年の足元には、泣き声の主であろう男の子が二人と、何故か傷だらけになった子熊が一匹倒れていた。
背格好が全く違うので、幼馴染ではないと、すぐに判断できたのだが、目の前の状況に我慢できなくなった私は、思わず飛び出してしまった。
「弱い者いじめはだめだよ!」
驚いた様子でこちらを向いた少年。
彼は溜息を吐き、少々面倒くさそうに口を開いた。
「ハァ…弱い者いじめなんかしてねェよ」
否定する男の子に、倒れている二人と一匹を指差して講義する。
「でもみんな、ケガをして倒れてるじゃない!」
再び、深く息を吐く少年。
無言のまま白熊の側に歩いて行くと、徐に怪我の具合を診始めた。
「そっちは、お前に任せる…」
彼は一瞬だけ倒れている二人を見遣り、また直ぐに熊の治療に取り掛かる。
「なんで私が… 」
横暴な少年に少々腹が立ったけれど、倒れている二人が心配だったので、文句を言いながら怪我の様子を探る。
「これくらいなら、大丈夫…その白熊も一緒に治すから、こっちに並べて」
怪我の具合を診る限り、みんな大した傷ではなかった。
男の子は不思議そうな顔をしていたが、無理やり一箇所に集めてもらい、ついでに彼も傍に立たせた。
「じゃあ纏めて治療するよ…もうケンカはしないでよね…」
一言だけ忠告して、瞼を閉じ集中する。
腕の紋章が熱を帯び、僅かな光を放った。
「 "花言葉一つ目" コンフォート」
解号と共に、彼等を眩い光が包む。
少年は目を見開き、私を凝視していた。
「なんだ…お前、能力者か?」
少年達を包んでいた白い光が消えると、身体の傷は跡形もなく消えていた。
「能力者…? うん…まぁ、そんなところかな」
見知らぬ人に秘密を明かす訳にもいかず、適当に話を流す。
「…………」
怪訝そうな表情を向ける男の子から、慌てて目を逸らした私。
二人と一匹が目を覚ますまでの間、一言も言葉を交わすことなく時は過ぎていった。