第一章 蒼と青の世界
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天使族を束ねる、偉大なる族長。
孫である私に見せる表情は、いつも穏やかで、本当に優しい人だった。
そんな人柄は、民に対しても同じ。
常に平等で、民の幸せばかりを考えていた祖父は、島の誰からも愛されていた。
皆、惜しみなく涙を流し、祭壇に祈りを捧げる。
「お祖父様…」
空を見上げ、彼の冥福を祈った。
やるべき事は、ただ一つ。
溢れる涙を拭って、凛と前を向く。
族長の追悼式と、父の族長就任式が終わるのを待ち、旅に出る支度を整えた。
「アイリス…」
小さな声で、私の名を呟く母。
夫に支えられた彼女は、一人で立つことも困難な程に衰弱していた。
私はそんな二人を真っ直ぐ見つめ、ゆっくりと言葉を放った。
「お父様、お母様…カイルを…私、カイルを追います」
族長に就任したばかりの父は、複雑な表情で私を見遣り、口を開いた。
「本来…天使の加護を受けるお前を、島の外に出す事は掟に反する行為だ」
悔しそうに唇を噛み締め、言葉を続ける男。
「だが、今海を渡れるのは、いざという時に危険を回避できる力を持つ、お前だけだ」
「私は反対よ…! アイリスまで失ったら…もう生きていけないわ…」
母は泣き崩れた。
妻の肩を擦りながら、気丈にも笑顔を作り、微笑む父。
「大丈夫だよ…アイリスは、俺達の自慢の娘だろう」
男の言葉に妻は我にかえり、顔を上げる。
「ごめんなさい…取り乱してしまって…あなたなら大丈夫よね…愛してるわアイリス」
私を抱き締め、僅かに震える母の背に手を回し、ギュッと力を込めた。
「私も愛してる…お父様、お母様…きっと無事に帰ってくる…」
「アイリス…」
私と母を包み込むように、そっと腕を回す父。
「二人が笑顔でいれば、きっと島の皆も元気を取り戻すよっ…だから笑って?」
そう言って、私は二人に向けて、精一杯微笑んでみせた。
【 ーー翌朝ーー 】
空は雲一つない晴天。
夢に描いた、蒼と青の境界線の先へ船を漕ぐ。
振り返れば、いつまでも港で手を振る両親の姿が遠ざかって逝く。
「お父様!お母様!行ってきます!」
彼等に届く様に、目一杯大きな声で叫び、手を振った。
もう二度と、後ろは振り返らない。
視界には、果てしなく広がる青い海。
ログポースが指し示す、最初の島を目指し、私は真っ直ぐ航路を進んだ。
孫である私に見せる表情は、いつも穏やかで、本当に優しい人だった。
そんな人柄は、民に対しても同じ。
常に平等で、民の幸せばかりを考えていた祖父は、島の誰からも愛されていた。
皆、惜しみなく涙を流し、祭壇に祈りを捧げる。
「お祖父様…」
空を見上げ、彼の冥福を祈った。
やるべき事は、ただ一つ。
溢れる涙を拭って、凛と前を向く。
族長の追悼式と、父の族長就任式が終わるのを待ち、旅に出る支度を整えた。
「アイリス…」
小さな声で、私の名を呟く母。
夫に支えられた彼女は、一人で立つことも困難な程に衰弱していた。
私はそんな二人を真っ直ぐ見つめ、ゆっくりと言葉を放った。
「お父様、お母様…カイルを…私、カイルを追います」
族長に就任したばかりの父は、複雑な表情で私を見遣り、口を開いた。
「本来…天使の加護を受けるお前を、島の外に出す事は掟に反する行為だ」
悔しそうに唇を噛み締め、言葉を続ける男。
「だが、今海を渡れるのは、いざという時に危険を回避できる力を持つ、お前だけだ」
「私は反対よ…! アイリスまで失ったら…もう生きていけないわ…」
母は泣き崩れた。
妻の肩を擦りながら、気丈にも笑顔を作り、微笑む父。
「大丈夫だよ…アイリスは、俺達の自慢の娘だろう」
男の言葉に妻は我にかえり、顔を上げる。
「ごめんなさい…取り乱してしまって…あなたなら大丈夫よね…愛してるわアイリス」
私を抱き締め、僅かに震える母の背に手を回し、ギュッと力を込めた。
「私も愛してる…お父様、お母様…きっと無事に帰ってくる…」
「アイリス…」
私と母を包み込むように、そっと腕を回す父。
「二人が笑顔でいれば、きっと島の皆も元気を取り戻すよっ…だから笑って?」
そう言って、私は二人に向けて、精一杯微笑んでみせた。
【 ーー翌朝ーー 】
空は雲一つない晴天。
夢に描いた、蒼と青の境界線の先へ船を漕ぐ。
振り返れば、いつまでも港で手を振る両親の姿が遠ざかって逝く。
「お父様!お母様!行ってきます!」
彼等に届く様に、目一杯大きな声で叫び、手を振った。
もう二度と、後ろは振り返らない。
視界には、果てしなく広がる青い海。
ログポースが指し示す、最初の島を目指し、私は真っ直ぐ航路を進んだ。