第一章 蒼と青の世界
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「ガハハハハ! 残念だなァ! イイ女に育ちそうだったんだかなァ!」
敵の大将は嘲笑う。
一斉に放たれた銃弾と刃の前に、生意気な小娘は倒れたと過信していたのだ。
「それは…褒め言葉ですよね」
流石に無傷…とはいかなかったが、頬に一筋の軽い切り傷程度で片付いた。
銃弾に至っては一発も当たる事なく、伸された下っ端の海賊達が山になっている。
積み上がった残骸の天辺に立ち、私はゆっくりと、頭の悪い船長を見下ろした。
「見た目で判断していては…この先の海へは進めませんね…ここで負けて良かったのではないですか?」
男の顔が赤く染まっていく。
「私、後悔してるんです…」
穏やかに語り掛ける私。
「先程…この場にいる方々全員で…と言いましたけど、全然…足りませんでした」
激怒する大将を煽る様に、言葉を連ねた。
「あちらに向かったお仲間さんも合わせてどーぞ…と、言っておくべきでしたね」
微かに変わる気配を感じ、口角が上がる。
「ほら、あちらも…終わったようですよ」
指差した方角には、ここの十倍程に積み上げられた海賊達の山が、見事に船を覆っていた。
「クッ………クソガキどもがァァァァァァ!」
振り上げられた大剣を受け止め、溜息を漏らす。
「それから残念ですが…大将さん、あなたの相手は私ではなく、うちの船長です」
殺気に包まれた船内。
「ROOM」
薄い膜が身体を覆い、聞きなれた低音が耳元で囁いた。
「シャンブルズ」
男の前に転がる小石。
「最後に言っておくが…コイツは育てなくても既にイイ女だ」
彼の言葉一つで、左右される自分の感情が腹立たしい。
「じゃあな…切断 」
敵は絶叫し、海の藻屑と消えていった。
戦は呆気なく終わり、遠くで騒ぐ仲間に怪我もない様子。
完全勝利した歓びも束の間、私は自らの置かれた状況に困惑する。
「ロー…? いい加減…離して欲しいんだけど…」
閉じ込められ、ビクとも動かない腕を剥がそうと力を込めた。
「アイリス…これも痛まないのか」
優しく傷口を撫で、血を拭う仕草に体温が上がる。
「いっ…痛くないよ…大丈夫…」
再び強く抱き締められると、限界を迎えた心臓が凄まじい速さで動き出す。
「ロー…大丈夫だから…離して」
「嫌なら、さっさと傷を治せ」
彼の言葉に、慌てて治療を施した。
「は…"花言葉一つ目" コンフォート!」
傷口が塞がったのを確認して、少年を見上げる。
「な…治したよ…! ほら…!だから…離して…」
頬をなぞり、怪我が消えたのを確認したローは、漸く腕の力を緩めてくれた。
その場からすり抜け、呼吸を整える。
熱を冷まして振り返ると、船長は優しい表情でこちらを見詰めていた。
「完璧な判断だった…上出来だアイリス」
背を向けて、ヒラヒラと手を振り去って行く後ろ姿を見ながら、朝の出来事を思い出した。
ああ…この感情は…きっと…。
心の中に芽吹く蕾。
私は初めて抱くその感情に、そっと蓋を被せた。
彼の足枷にはなりたくない。
「ローの…バカ」
自然と流れる涙を拭いて、前を向く。
幼い頃に憧れた、青い海。
偉大なる航路 がすぐそこで待っている。
(お前には無理だ…アイリス)
幼馴染と過ごした日々が、今はもう、遠い昔の出来事に感じる。
「見ててよ…カイル」
運命に導かれる様に出会った、大切な人。
そして、かけがえのない仲間達。
彼等と共に私は進む。
果てしなく広がる蒼と青の世界へーーー。
ーTo be continuedー
敵の大将は嘲笑う。
一斉に放たれた銃弾と刃の前に、生意気な小娘は倒れたと過信していたのだ。
「それは…褒め言葉ですよね」
流石に無傷…とはいかなかったが、頬に一筋の軽い切り傷程度で片付いた。
銃弾に至っては一発も当たる事なく、伸された下っ端の海賊達が山になっている。
積み上がった残骸の天辺に立ち、私はゆっくりと、頭の悪い船長を見下ろした。
「見た目で判断していては…この先の海へは進めませんね…ここで負けて良かったのではないですか?」
男の顔が赤く染まっていく。
「私、後悔してるんです…」
穏やかに語り掛ける私。
「先程…この場にいる方々全員で…と言いましたけど、全然…足りませんでした」
激怒する大将を煽る様に、言葉を連ねた。
「あちらに向かったお仲間さんも合わせてどーぞ…と、言っておくべきでしたね」
微かに変わる気配を感じ、口角が上がる。
「ほら、あちらも…終わったようですよ」
指差した方角には、ここの十倍程に積み上げられた海賊達の山が、見事に船を覆っていた。
「クッ………クソガキどもがァァァァァァ!」
振り上げられた大剣を受け止め、溜息を漏らす。
「それから残念ですが…大将さん、あなたの相手は私ではなく、うちの船長です」
殺気に包まれた船内。
「ROOM」
薄い膜が身体を覆い、聞きなれた低音が耳元で囁いた。
「シャンブルズ」
男の前に転がる小石。
「最後に言っておくが…コイツは育てなくても既にイイ女だ」
彼の言葉一つで、左右される自分の感情が腹立たしい。
「じゃあな…
敵は絶叫し、海の藻屑と消えていった。
戦は呆気なく終わり、遠くで騒ぐ仲間に怪我もない様子。
完全勝利した歓びも束の間、私は自らの置かれた状況に困惑する。
「ロー…? いい加減…離して欲しいんだけど…」
閉じ込められ、ビクとも動かない腕を剥がそうと力を込めた。
「アイリス…これも痛まないのか」
優しく傷口を撫で、血を拭う仕草に体温が上がる。
「いっ…痛くないよ…大丈夫…」
再び強く抱き締められると、限界を迎えた心臓が凄まじい速さで動き出す。
「ロー…大丈夫だから…離して」
「嫌なら、さっさと傷を治せ」
彼の言葉に、慌てて治療を施した。
「は…"花言葉一つ目" コンフォート!」
傷口が塞がったのを確認して、少年を見上げる。
「な…治したよ…! ほら…!だから…離して…」
頬をなぞり、怪我が消えたのを確認したローは、漸く腕の力を緩めてくれた。
その場からすり抜け、呼吸を整える。
熱を冷まして振り返ると、船長は優しい表情でこちらを見詰めていた。
「完璧な判断だった…上出来だアイリス」
背を向けて、ヒラヒラと手を振り去って行く後ろ姿を見ながら、朝の出来事を思い出した。
ああ…この感情は…きっと…。
心の中に芽吹く蕾。
私は初めて抱くその感情に、そっと蓋を被せた。
彼の足枷にはなりたくない。
「ローの…バカ」
自然と流れる涙を拭いて、前を向く。
幼い頃に憧れた、青い海。
(お前には無理だ…アイリス)
幼馴染と過ごした日々が、今はもう、遠い昔の出来事に感じる。
「見ててよ…カイル」
運命に導かれる様に出会った、大切な人。
そして、かけがえのない仲間達。
彼等と共に私は進む。
果てしなく広がる蒼と青の世界へーーー。
ーTo be continuedー