第一章 蒼と青の世界
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海賊達が期待に胸を膨らませ、物資を調達しようと息巻いている賑やかな港。
“クロスタウン”
北の海、最後の島と呼ばれている開かれた地。
目の前には赤い大陸 が立ち塞がっており、リヴァース・マウンテンの狭き門が開かれている。
偉大なる航路 に入る為の難所としても有名で、この地で腕試しを試みる海賊も少なくない。
「うわ〜賑やかな街だねえ〜大きな市場! 楽しみだねえ〜!」
人相の悪い輩が闊歩する通りの前で、両手を広げ呑気な言葉を口にする白熊。
「ベポ…問題は起こすなよ」
船長の忠告が聞こえていないのか、彼はお構いなしに燥いでいる。
「仕方ない…オレが同行する」
一人にしたら絶対に騒ぎを起こすと予測したペンギンが、無邪気な白熊の隣に並び歩き始めた。
「ったく…危なっかしいなあ…」
溜息を吐くクジラ。
すかさず、彼の腕を掴んだキャスケット帽の少年が、元気よく走り出す。
「俺達も行こうぜっ! 色々準備しないとな!」
「えッ…!おい…シャチ!」
クジラは不本意に引っ張られ、あっという間に人混みの中へと消えて行った。
「みんな行っちゃった…ロー…今日は自由行動って言ってたっけ…?」
隣に立つ船長の顔を仰ぎ見ると、誰よりも人相の悪い男が黒いオーラを放ち、怒りに震えていた。
「一言も言ってねェ」
ご愁傷さまです。
船に戻った後のみんなの姿が目に浮かぶ。
「あの…さ…」
身震いをしながら、恐る恐る声を掛けるイルカさん。
「行けよ…好きにしろ…」
「え…?いいの?」
余程怖かったのか、彼女の身体からは一気に力が抜け、顔の表情が緩む。
「ありがとう! 色々揃えておきたかったんだ!」
嬉しそうに駆け出した少女を見送り、再び隣に視線を移した。
一拍の間を置いて、漆黒の瞳が私を捉える。
トクンッーーー。
思わず心臓が跳ね、緊張感から掌に汗が滲んでいく。
「アイリス…お前は付いて来い」
最近、私の心臓はおかしい。
「うん…」
彼の姿を見る度に、激しく脈打つ鼓動。
時折苦しさを伴うこの症状も、天使族特有の身体の不調から来るものなのだろうか。
海賊達が好き勝手に暴れ、取り押さえる海軍が手を焼いている。
そんな光景を眺めながら、逸れないように彼の服を少しだけ掴み、速度を合わせて歩き続けた。
「ここで…全員分の服を作る」
一件の仕立て屋の前で立ち止まった船長。
「服…?」
彼は口角を上げ、嬉しそうに口を開いた。
「そうだ…全員揃いの服を着て…偉大なる航路 に突入する」
全員、揃いの服を身に纏い戦う。
「それ…凄くかっこいいかも…!」
仲間の団結を形にしたローの考えに賛同する。
だって、絶対格好良い。
「それだけじゃねェ…他に類を見ない方法で俺達は海軍の目を掻い潜り名を挙げる…世界中にウジャウジャ居やがる海賊達の中で、目立たなけりゃ意味がねェ」
自信満々に語る船長。
その強さと自信に満ち溢れた姿に、私達はいつも酔狂して止まない。
「うん!行こう!」
店に入り、二人で服の形を決めた。
なるべく戦いやすく、船の上でも過ごしやすい服装。
ハート海賊団の海賊旗を胸元と背中に刻んだ。
「わあ…!やっぱり、かっこいい!」
嬉しくなって鏡の前で合わせてみる。
「色は…お前が決めろ」
「えっ…ローが決めなくていいの?自分も着るのに?」
喉の奥を鳴らし、俺様船長は信じられない言葉を口にした。
「おれは着ねェ…着るのはお前達だけだ」
静まり返る店内。
「ええええっ!ロー!?着ないの!?」
店主のお爺さんも耳を塞ぐ。
「おれの服は別で用意してある…それは…お前達の服従の証だ…クックックッ」
ほんの数十分前までは輝いて見えたのに。
今は悪魔にしか見えない目の前の男。
「信じられない…」
鏡越しに当ててみた服も、囚人服に見えてきた。
「でも…いい…私達はあなたに付いて行くって決めたんだから」
私は諦めたように、店の主人に希望の色を伝えた。
「良い選択だ…普段から仲間をよく見てるお前が選ぶなら、間違いないだろ…」
優しく髪を掬われ、黒の瞳が私を捉える。
コホンッーーー。
(お爺さんの咳払いがなかったら…)
柄にもない事を想像して頬を熱くする。
「あ…当たり前でしょ!」
必死で誤魔化して、顔を逸らした私。
早く身体を治さないと。
「……………」
胸を抑え、深呼吸を繰り返す。
症状も収まり、漸く落ち着いた頃、辺りはすっかり暗くなっていた。
「お待たせしたね、気をつけて帰るんだよ」
サイズ違いの服、洗い替えも含め約100着程の服を1日で仕立ててくれた店主。
「お爺さんっありがとう…!」
彼に敬意を払い、丁寧に頭を下げて店を後にした。
星が輝く空の下、二人並んで歩く帰り道。
これから先もずっと、彼の隣をこんな風に歩けたらいいのにな…なんて事を考えながら、みんなが待つ船へと戻った。
両手いっぱいに、彼への服従の証をぶら下げて。
“クロスタウン”
北の海、最後の島と呼ばれている開かれた地。
目の前には
「うわ〜賑やかな街だねえ〜大きな市場! 楽しみだねえ〜!」
人相の悪い輩が闊歩する通りの前で、両手を広げ呑気な言葉を口にする白熊。
「ベポ…問題は起こすなよ」
船長の忠告が聞こえていないのか、彼はお構いなしに燥いでいる。
「仕方ない…オレが同行する」
一人にしたら絶対に騒ぎを起こすと予測したペンギンが、無邪気な白熊の隣に並び歩き始めた。
「ったく…危なっかしいなあ…」
溜息を吐くクジラ。
すかさず、彼の腕を掴んだキャスケット帽の少年が、元気よく走り出す。
「俺達も行こうぜっ! 色々準備しないとな!」
「えッ…!おい…シャチ!」
クジラは不本意に引っ張られ、あっという間に人混みの中へと消えて行った。
「みんな行っちゃった…ロー…今日は自由行動って言ってたっけ…?」
隣に立つ船長の顔を仰ぎ見ると、誰よりも人相の悪い男が黒いオーラを放ち、怒りに震えていた。
「一言も言ってねェ」
ご愁傷さまです。
船に戻った後のみんなの姿が目に浮かぶ。
「あの…さ…」
身震いをしながら、恐る恐る声を掛けるイルカさん。
「行けよ…好きにしろ…」
「え…?いいの?」
余程怖かったのか、彼女の身体からは一気に力が抜け、顔の表情が緩む。
「ありがとう! 色々揃えておきたかったんだ!」
嬉しそうに駆け出した少女を見送り、再び隣に視線を移した。
一拍の間を置いて、漆黒の瞳が私を捉える。
トクンッーーー。
思わず心臓が跳ね、緊張感から掌に汗が滲んでいく。
「アイリス…お前は付いて来い」
最近、私の心臓はおかしい。
「うん…」
彼の姿を見る度に、激しく脈打つ鼓動。
時折苦しさを伴うこの症状も、天使族特有の身体の不調から来るものなのだろうか。
海賊達が好き勝手に暴れ、取り押さえる海軍が手を焼いている。
そんな光景を眺めながら、逸れないように彼の服を少しだけ掴み、速度を合わせて歩き続けた。
「ここで…全員分の服を作る」
一件の仕立て屋の前で立ち止まった船長。
「服…?」
彼は口角を上げ、嬉しそうに口を開いた。
「そうだ…全員揃いの服を着て…
全員、揃いの服を身に纏い戦う。
「それ…凄くかっこいいかも…!」
仲間の団結を形にしたローの考えに賛同する。
だって、絶対格好良い。
「それだけじゃねェ…他に類を見ない方法で俺達は海軍の目を掻い潜り名を挙げる…世界中にウジャウジャ居やがる海賊達の中で、目立たなけりゃ意味がねェ」
自信満々に語る船長。
その強さと自信に満ち溢れた姿に、私達はいつも酔狂して止まない。
「うん!行こう!」
店に入り、二人で服の形を決めた。
なるべく戦いやすく、船の上でも過ごしやすい服装。
ハート海賊団の海賊旗を胸元と背中に刻んだ。
「わあ…!やっぱり、かっこいい!」
嬉しくなって鏡の前で合わせてみる。
「色は…お前が決めろ」
「えっ…ローが決めなくていいの?自分も着るのに?」
喉の奥を鳴らし、俺様船長は信じられない言葉を口にした。
「おれは着ねェ…着るのはお前達だけだ」
静まり返る店内。
「ええええっ!ロー!?着ないの!?」
店主のお爺さんも耳を塞ぐ。
「おれの服は別で用意してある…それは…お前達の服従の証だ…クックックッ」
ほんの数十分前までは輝いて見えたのに。
今は悪魔にしか見えない目の前の男。
「信じられない…」
鏡越しに当ててみた服も、囚人服に見えてきた。
「でも…いい…私達はあなたに付いて行くって決めたんだから」
私は諦めたように、店の主人に希望の色を伝えた。
「良い選択だ…普段から仲間をよく見てるお前が選ぶなら、間違いないだろ…」
優しく髪を掬われ、黒の瞳が私を捉える。
コホンッーーー。
(お爺さんの咳払いがなかったら…)
柄にもない事を想像して頬を熱くする。
「あ…当たり前でしょ!」
必死で誤魔化して、顔を逸らした私。
早く身体を治さないと。
「……………」
胸を抑え、深呼吸を繰り返す。
症状も収まり、漸く落ち着いた頃、辺りはすっかり暗くなっていた。
「お待たせしたね、気をつけて帰るんだよ」
サイズ違いの服、洗い替えも含め約100着程の服を1日で仕立ててくれた店主。
「お爺さんっありがとう…!」
彼に敬意を払い、丁寧に頭を下げて店を後にした。
星が輝く空の下、二人並んで歩く帰り道。
これから先もずっと、彼の隣をこんな風に歩けたらいいのにな…なんて事を考えながら、みんなが待つ船へと戻った。
両手いっぱいに、彼への服従の証をぶら下げて。