第一章 蒼と青の世界
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カタッーーー。
僅かな物音と、差し込む朝日によって浮上する意識。
「……………」
重たい瞼を抉じ開け、辺りを見渡す。
「あ…ごめん…起こした」
あまり眠れなかったのだろう。
申し訳なさそうに眉を下げる少女は、既に身支度を済ませている。
「ううん、大丈夫だよ…」
身体を起こし、自分も急いで支度を整えた。
彼女は昨晩、長い眠りから目覚めたばかり。
暫くは此処でゆっくりさせてあげたい。
気持ちを整理する時間も必要だろう。
けれど早く船長に報告しなくては、後で何を言われるかわからないので、心を鬼にして口を開く。
「お待たせ…! じゃあ…行こう!」
私は強引に彼女の腕を掴み、勢い良く森の中ヘ飛び出した。
「ちょっと…!」
驚いた少女は何やら文句を言っている様だったが、とりあえず聞こえないフリをした。
白い息を吐きながら、修行場まで急ぎ足で歩を進める。
「何…これ…」
斬撃で真っ二つに割れた森。
変わり果てた景色を、複雑な表情を浮かべ見回す少女。
「……………」
姿を変えた故郷の島。
何を想ったのか。
それ以降、目的地にたどり着くまで彼女が口を開く事はなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「あっ…、居た…!」
男達の賑やかな声が聞こえたところで、速度を落とし、足を止めた。
「アイリス…!」
二人の気配に気付いた男達が、駆け寄って来る。
「お前…!良かった…目が覚めたんだな!」
満面の笑みを浮かべ、少女の頭をくしゃくしゃと撫でるクジラ。
「身体の方は…大丈夫なのか?」
ゆっくり近づいて来たペンギンは、心配そうに問い掛けた。
「ああ…うん…まあ…大丈夫…ありがとう」
少女は乱れた長い黒髪を整えながら、照れ臭そうに笑みを浮かべる。
「そうか…元気そうでよかった!俺はシャチ、よろしくなッ!」
小さな手を強引に握り、握手を交わすキャスケット帽の少年。
「私はイルカ…よろしく…」
騒がしい男達に、心を開いた様子の少女。
私は、ほっと胸を撫でおろした。
「おーい、アイリス〜!…あれ〜?あ!あの女の子だ!」
遅れて登場した白熊が、元気よく手を振り駆け寄ってくる。
「えっ…くっく…くまが…喋ってる…」
額に汗を浮かべ、身体を硬直させるイルカ。
足を止めたベポは、どんよりとした空気を纏い俯いた。
「くまが喋ってごめんなさい…」
「「「打たれ弱っ!!!」」」
間髪入れずツッコむ男達。
「ぷっ…あはは!」
面白いと、笑い始めた少女。
みんなも吹き出し、周囲は和やかな雰囲気に包まれた。
自然に打ち解けていく彼女を見て、私達にとって必要な存在だと確信する。
仲間として共に在りたい。
気が付くと、私は叫んでいた。
「イルカさん…!私達と一緒に海に出よう!」
辺りは一瞬で静まり返る。
「突然…そんな事言われても…わたしは…」
首を横に振る少女。
「あなたは…此処に残るべきじゃないと思う」
故郷の島を離れたくない気持ちも、痛い程わかる。
この場所を守る為、一人で闘い続けてきた少女。
「無理よ…此処を離れたくないし…それに…私は一人の方が性に合ってるから…」
誰よりも強く、脆い少女の心。
そんなあなたを、守りたいと思った。
毎日くだらない話をして、笑って過ごして欲しいと思った。
「私は海賊だから…あなたが嫌と言っても連れて行くつもりだよ…」
綺麗な瞳から、一筋の雫が零れ落ちる。
「何…それ…」
どんどん溢れ出す涙を、服の裾で必死に拭う少女。
私は思わず微笑んだ。
隙間から見えた口の端が、僅かに上がっていたから。
「欲しいモノは…力尽くで奪うんだよ」
辺りを覆っていた霧が晴れ、徐々に光が満ちていく。
「ほんと…海賊なんて…大嫌い…」
漆黒の長い髪が、静かに揺れた。
「それで…返事は?」
今までどこに居たのか。
突然二人の間に現れた船長は、口角を上げ少女を見詰める。
「まさか海賊に…救われる日が来るなんてね…」
苦しみや悲しみが消える事はないかも知れない。
けれど、安心して。
「ふふっ決まりだね…!」
もう二度と、一人になる事はないから。
「…全員、異論はないな?」
鞘から刀を抜き、目の前に差し出す船長。
「当たり前だ…」
「勿論…あるわけ無い」
「よろしくね〜!」
「よっしゃー!!」
私達は、それぞれの武器を重ね合う。
「修行は終わりだ…!行くぞ…偉大なる航路 ヘ…!」
カッシャーンーーーーーー!!!!!
「「「いざ!!!偉大なる航路 へ!!!」」」
空高々に、響く金属音。
上空を旋回する一羽の鷹が、私達の新たな始まりを祝福しているようだった。
僅かな物音と、差し込む朝日によって浮上する意識。
「……………」
重たい瞼を抉じ開け、辺りを見渡す。
「あ…ごめん…起こした」
あまり眠れなかったのだろう。
申し訳なさそうに眉を下げる少女は、既に身支度を済ませている。
「ううん、大丈夫だよ…」
身体を起こし、自分も急いで支度を整えた。
彼女は昨晩、長い眠りから目覚めたばかり。
暫くは此処でゆっくりさせてあげたい。
気持ちを整理する時間も必要だろう。
けれど早く船長に報告しなくては、後で何を言われるかわからないので、心を鬼にして口を開く。
「お待たせ…! じゃあ…行こう!」
私は強引に彼女の腕を掴み、勢い良く森の中ヘ飛び出した。
「ちょっと…!」
驚いた少女は何やら文句を言っている様だったが、とりあえず聞こえないフリをした。
白い息を吐きながら、修行場まで急ぎ足で歩を進める。
「何…これ…」
斬撃で真っ二つに割れた森。
変わり果てた景色を、複雑な表情を浮かべ見回す少女。
「……………」
姿を変えた故郷の島。
何を想ったのか。
それ以降、目的地にたどり着くまで彼女が口を開く事はなかった。
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「あっ…、居た…!」
男達の賑やかな声が聞こえたところで、速度を落とし、足を止めた。
「アイリス…!」
二人の気配に気付いた男達が、駆け寄って来る。
「お前…!良かった…目が覚めたんだな!」
満面の笑みを浮かべ、少女の頭をくしゃくしゃと撫でるクジラ。
「身体の方は…大丈夫なのか?」
ゆっくり近づいて来たペンギンは、心配そうに問い掛けた。
「ああ…うん…まあ…大丈夫…ありがとう」
少女は乱れた長い黒髪を整えながら、照れ臭そうに笑みを浮かべる。
「そうか…元気そうでよかった!俺はシャチ、よろしくなッ!」
小さな手を強引に握り、握手を交わすキャスケット帽の少年。
「私はイルカ…よろしく…」
騒がしい男達に、心を開いた様子の少女。
私は、ほっと胸を撫でおろした。
「おーい、アイリス〜!…あれ〜?あ!あの女の子だ!」
遅れて登場した白熊が、元気よく手を振り駆け寄ってくる。
「えっ…くっく…くまが…喋ってる…」
額に汗を浮かべ、身体を硬直させるイルカ。
足を止めたベポは、どんよりとした空気を纏い俯いた。
「くまが喋ってごめんなさい…」
「「「打たれ弱っ!!!」」」
間髪入れずツッコむ男達。
「ぷっ…あはは!」
面白いと、笑い始めた少女。
みんなも吹き出し、周囲は和やかな雰囲気に包まれた。
自然に打ち解けていく彼女を見て、私達にとって必要な存在だと確信する。
仲間として共に在りたい。
気が付くと、私は叫んでいた。
「イルカさん…!私達と一緒に海に出よう!」
辺りは一瞬で静まり返る。
「突然…そんな事言われても…わたしは…」
首を横に振る少女。
「あなたは…此処に残るべきじゃないと思う」
故郷の島を離れたくない気持ちも、痛い程わかる。
この場所を守る為、一人で闘い続けてきた少女。
「無理よ…此処を離れたくないし…それに…私は一人の方が性に合ってるから…」
誰よりも強く、脆い少女の心。
そんなあなたを、守りたいと思った。
毎日くだらない話をして、笑って過ごして欲しいと思った。
「私は海賊だから…あなたが嫌と言っても連れて行くつもりだよ…」
綺麗な瞳から、一筋の雫が零れ落ちる。
「何…それ…」
どんどん溢れ出す涙を、服の裾で必死に拭う少女。
私は思わず微笑んだ。
隙間から見えた口の端が、僅かに上がっていたから。
「欲しいモノは…力尽くで奪うんだよ」
辺りを覆っていた霧が晴れ、徐々に光が満ちていく。
「ほんと…海賊なんて…大嫌い…」
漆黒の長い髪が、静かに揺れた。
「それで…返事は?」
今までどこに居たのか。
突然二人の間に現れた船長は、口角を上げ少女を見詰める。
「まさか海賊に…救われる日が来るなんてね…」
苦しみや悲しみが消える事はないかも知れない。
けれど、安心して。
「ふふっ決まりだね…!」
もう二度と、一人になる事はないから。
「…全員、異論はないな?」
鞘から刀を抜き、目の前に差し出す船長。
「当たり前だ…」
「勿論…あるわけ無い」
「よろしくね〜!」
「よっしゃー!!」
私達は、それぞれの武器を重ね合う。
「修行は終わりだ…!行くぞ…
カッシャーンーーーーーー!!!!!
「「「いざ!!!
空高々に、響く金属音。
上空を旋回する一羽の鷹が、私達の新たな始まりを祝福しているようだった。