第一章 蒼と青の世界
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「ROOM…」
「ギャーーー!!!」
森の中に木霊する、シャチの悲鳴。
修行開始から数日、船長が繰り出す新技の実験台が、彼の役目になっていた。
「うるせェな…静かにしろよ」
地面に伏し、泣き喚くシャチに呆れた視線を送るペンギン。
「酷っ…! バカ! 悪魔!」
小さい子供の様に、拗ねてしまったキャスケット帽の少年。
「ふふっ…おやつ作ってきたから休憩にしよう! ほら…シャチも機嫌直して」
ふわふわのシフォンケーキと、温かい紅茶。
甘い誘惑をテーブルの上に並べると、先程まで泣いていたシャチの表情も、すっかり笑顔になっていた。
「わぁーい!アイリス、ありがとう!いただきまーす!」
両手にケーキを持って、美味しそうに食べるベポ。
余程、鍛錬に集中していたのか、真っ白な彼の身体は泥だらけになっていた。
「ベポ…食べ終わったらシャワー浴びて来てね」
ニッコリ笑いかけると、必死で首を横に振る白熊。
「ベポ…だめだよ…入ってきてね」
再度微笑みかけると、真っ黒な瞳は涙で溢れかえった。
「怖ッ…」
背後から聞こえた呟きに、勢い良く後ろを振り返る。
「………………」
男達は一人を除いて、自分ではないと言わんばかりに目線を逸し、無心でケーキを頬張っていた。
「ククッ……」
身体を震わせ笑い始めた船長。
怒りを通り越し、溜息すら吐くのも億劫になった私は、眠り続ける少女の様子を見るため、ケーキを片手に、この場を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
枯れた木々に僅かに残った葉を揺らす冷たい風。
修行場から少し離れた場所に位置する、小さな村へと辿り着いた私は、ポツンと佇む家屋の前で立ち止まった。
ビックドック海賊団によって滅ぼされた村の中で、唯一原型を留めている木造の一軒家。
見慣れたドアノブに手を掛け、扉を開いた瞬間。
カタッーーー。
部屋の中から聞こえた微かな物音。
「………」
一瞬、竦んだ足元を見つめる。
静かに呼吸を整えた私は、覚悟を決めて口を開いた。
「…こんにちは」
薄暗い室内に感じる、人の気配。
窓から射し込む夕日が、此方に視線を向ける人物に、光と影を照らし出す。
「あいつらは…どうなった…」
武器に手を掛けながら、口を開く少女。
「…島から…出て行きました…」
真っ直ぐに彼女を見詰め、事の経緯を説明する。
「だから…もう、大丈夫…」
「………………」
長い睫毛を伏せ、俯く少女。
「痛いところはない…?」
側に歩み寄り、綺麗な顔を覗き込んだ。
「大丈夫…身体は怠いけど…」
辛そうな表情で、笑顔を作ろうとする姿に胸が苦しくなる。
「よかった……あの…突然だけど、ケーキ…好きですか?」
私の問いかけに、目を丸くする女の子。
「は…………?ケーキ……?」
「あ…お茶…! 淹れるから良かったら食べて! お腹空いてるよね?」
出来るだけ、明るく。
出来るだけ、自然に。
「お待たせ…!結構上手に出来たんだよ!」
小さな机にカップを並べ、紅茶を注ぎながら椅子に腰掛けた。
「ありがとう…いただく…」
太陽は完全に落ち、辺りが闇に包まれる。
部屋の明かりを灯し、甘いケーキを頬張りながら、他愛も無い話を途切れる事なく語り合った。
「イルカさんっていうのね!私はアイリス…よろしくね」
少しでも悲しい気持ちを忘れられるように。
今だけは、何も考えずに済むように。
あなたの痛みが少しでも取り除けますように。
深夜、眠りにつく瞬間まで、二人の会話は途切れる事なく続いた。
「ギャーーー!!!」
森の中に木霊する、シャチの悲鳴。
修行開始から数日、船長が繰り出す新技の実験台が、彼の役目になっていた。
「うるせェな…静かにしろよ」
地面に伏し、泣き喚くシャチに呆れた視線を送るペンギン。
「酷っ…! バカ! 悪魔!」
小さい子供の様に、拗ねてしまったキャスケット帽の少年。
「ふふっ…おやつ作ってきたから休憩にしよう! ほら…シャチも機嫌直して」
ふわふわのシフォンケーキと、温かい紅茶。
甘い誘惑をテーブルの上に並べると、先程まで泣いていたシャチの表情も、すっかり笑顔になっていた。
「わぁーい!アイリス、ありがとう!いただきまーす!」
両手にケーキを持って、美味しそうに食べるベポ。
余程、鍛錬に集中していたのか、真っ白な彼の身体は泥だらけになっていた。
「ベポ…食べ終わったらシャワー浴びて来てね」
ニッコリ笑いかけると、必死で首を横に振る白熊。
「ベポ…だめだよ…入ってきてね」
再度微笑みかけると、真っ黒な瞳は涙で溢れかえった。
「怖ッ…」
背後から聞こえた呟きに、勢い良く後ろを振り返る。
「………………」
男達は一人を除いて、自分ではないと言わんばかりに目線を逸し、無心でケーキを頬張っていた。
「ククッ……」
身体を震わせ笑い始めた船長。
怒りを通り越し、溜息すら吐くのも億劫になった私は、眠り続ける少女の様子を見るため、ケーキを片手に、この場を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
枯れた木々に僅かに残った葉を揺らす冷たい風。
修行場から少し離れた場所に位置する、小さな村へと辿り着いた私は、ポツンと佇む家屋の前で立ち止まった。
ビックドック海賊団によって滅ぼされた村の中で、唯一原型を留めている木造の一軒家。
見慣れたドアノブに手を掛け、扉を開いた瞬間。
カタッーーー。
部屋の中から聞こえた微かな物音。
「………」
一瞬、竦んだ足元を見つめる。
静かに呼吸を整えた私は、覚悟を決めて口を開いた。
「…こんにちは」
薄暗い室内に感じる、人の気配。
窓から射し込む夕日が、此方に視線を向ける人物に、光と影を照らし出す。
「あいつらは…どうなった…」
武器に手を掛けながら、口を開く少女。
「…島から…出て行きました…」
真っ直ぐに彼女を見詰め、事の経緯を説明する。
「だから…もう、大丈夫…」
「………………」
長い睫毛を伏せ、俯く少女。
「痛いところはない…?」
側に歩み寄り、綺麗な顔を覗き込んだ。
「大丈夫…身体は怠いけど…」
辛そうな表情で、笑顔を作ろうとする姿に胸が苦しくなる。
「よかった……あの…突然だけど、ケーキ…好きですか?」
私の問いかけに、目を丸くする女の子。
「は…………?ケーキ……?」
「あ…お茶…! 淹れるから良かったら食べて! お腹空いてるよね?」
出来るだけ、明るく。
出来るだけ、自然に。
「お待たせ…!結構上手に出来たんだよ!」
小さな机にカップを並べ、紅茶を注ぎながら椅子に腰掛けた。
「ありがとう…いただく…」
太陽は完全に落ち、辺りが闇に包まれる。
部屋の明かりを灯し、甘いケーキを頬張りながら、他愛も無い話を途切れる事なく語り合った。
「イルカさんっていうのね!私はアイリス…よろしくね」
少しでも悲しい気持ちを忘れられるように。
今だけは、何も考えずに済むように。
あなたの痛みが少しでも取り除けますように。
深夜、眠りにつく瞬間まで、二人の会話は途切れる事なく続いた。