第一章 蒼と青の世界
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ミホークの斬撃によって切り開かれた森の中。
青い筈の空は、分厚く重い灰色の雲で隠されてしまっている。
島の中心に位置する場所で、私達は一心不乱に、修行を続けた。
偉大なる航路 ヘ突入するため。
今のままでは突入どころか、入り口に辿り着く事さえ危うい状況。
敵やミホークとの圧倒的な力の差を前に、仲間を守るどころか、満足に動く事さえできなかった。
「どうした…アイリス」
稽古を終えたペンギンが、心配そうに近づいて来る。
小刻みに揺れる身体を抑え、彼に視線を移す。
きっと全員、同じ不安を抱いている。
島に留まって、数週間。
誰一人、意見も文句も言わず修行に打ち込んでいるのがその証拠だ。
「何でもないよ…」
私だけ、弱音を吐く訳にはいかない。
渦巻く不安をかき消すように、精一杯の笑顔で微笑んだ。
「なんだよ…俺じゃ頼りにならねェか」
寂しそうな表情を浮かべる、ペンギン。
「ごめんなさい…」
小さく吐いた呟きは、森を抜ける風の音に消され、地面へ溶けていった。
少年は肩を竦め、帽子を深く被り直す。
「わかってる…心配しなくていい」
耳に届く優しい声色。
「無理はするなよ」
彼の温かい優しさが、心に染みる。
「ありがとう…ペンギン」
離れて行く後ろ姿に、何度も繰り返し頭を下げた。
深く息を吸い、森の天井を仰ぎ見る。
灰色の空に浮かんだのは、歪んだ表情の幼馴染。
「カイル…」
吸い込んだ空気を、ゆっくりと吐き出し瞼を閉じた。
「強く、ならなきゃ…」
紋章が熱を帯び、修行の再開を告げる。
「………」
仲間を守る為にーーー。
偉大なる航路 ヘと、向かう為に。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
数時間後。
力を使い果たした男達が、屍のように重なり、地面に倒れ込んでいる。
「みんな…大丈夫? 少し休んでて、ローを呼んで来るから」
返事も聞かず身を翻した私は、足早に船長の元へと向かった。
月明かりが照らす、一軒の小屋の前。
数回程度、軽くノックを鳴らし扉に手を掛ける。
「ロー居る?…彼女の具合はどう…?」
部屋に入り、奥に居る人影に静かに近寄る。
此方に気付いた少年が、聴診器片手にゆっくりと振り返った。
「怪我は治った…他に外傷もねェ…」
栄養を送る為だけの点滴を取り外しながら、医師は気怠そうに病状を説明する。
「そっか…よかった…」
私は、苦しげな表情を浮かべる女の子の手を取り、傍に腰掛けた。
「頑張って…大丈夫だから…」
小さな掌を両手で包み、言葉を掛ける。
「俺は戻る…側にいてやれ」
脱いだ白衣を私に被せると、出て行ってしまった船長。
「もう…不器用だなあ…」
受け取った白衣を肩に羽織り、再び少女の柔らかな手を包み込んだ。
「たった一人…誰にも頼らず戦い続けて…辛かったよね…」
小さな島で起きた、残虐な事件。
島の人も、家族もみんな殺され、たった一人生き残った少女。
普通の人間なら、正常な精神を保つのも難しい状況で、涙を拭い、武器を手に取り立ち上がった強さ。
諦めず、戦い続けた彼女の心を支えていたのは、一体何だったのか。
「戻ってきて…もう二度と、あなたを一人にしたりしないから…」
みんなが私を助けてくれた様に、今度は私が彼女を救いたい。
覚醒めた少女が、私達を受け入れてくれますように…。
ベッドの隅に腰を下ろし、願いを口にすることなく、私は浅い眠りについた。
青い筈の空は、分厚く重い灰色の雲で隠されてしまっている。
島の中心に位置する場所で、私達は一心不乱に、修行を続けた。
今のままでは突入どころか、入り口に辿り着く事さえ危うい状況。
敵やミホークとの圧倒的な力の差を前に、仲間を守るどころか、満足に動く事さえできなかった。
「どうした…アイリス」
稽古を終えたペンギンが、心配そうに近づいて来る。
小刻みに揺れる身体を抑え、彼に視線を移す。
きっと全員、同じ不安を抱いている。
島に留まって、数週間。
誰一人、意見も文句も言わず修行に打ち込んでいるのがその証拠だ。
「何でもないよ…」
私だけ、弱音を吐く訳にはいかない。
渦巻く不安をかき消すように、精一杯の笑顔で微笑んだ。
「なんだよ…俺じゃ頼りにならねェか」
寂しそうな表情を浮かべる、ペンギン。
「ごめんなさい…」
小さく吐いた呟きは、森を抜ける風の音に消され、地面へ溶けていった。
少年は肩を竦め、帽子を深く被り直す。
「わかってる…心配しなくていい」
耳に届く優しい声色。
「無理はするなよ」
彼の温かい優しさが、心に染みる。
「ありがとう…ペンギン」
離れて行く後ろ姿に、何度も繰り返し頭を下げた。
深く息を吸い、森の天井を仰ぎ見る。
灰色の空に浮かんだのは、歪んだ表情の幼馴染。
「カイル…」
吸い込んだ空気を、ゆっくりと吐き出し瞼を閉じた。
「強く、ならなきゃ…」
紋章が熱を帯び、修行の再開を告げる。
「………」
仲間を守る為にーーー。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
数時間後。
力を使い果たした男達が、屍のように重なり、地面に倒れ込んでいる。
「みんな…大丈夫? 少し休んでて、ローを呼んで来るから」
返事も聞かず身を翻した私は、足早に船長の元へと向かった。
月明かりが照らす、一軒の小屋の前。
数回程度、軽くノックを鳴らし扉に手を掛ける。
「ロー居る?…彼女の具合はどう…?」
部屋に入り、奥に居る人影に静かに近寄る。
此方に気付いた少年が、聴診器片手にゆっくりと振り返った。
「怪我は治った…他に外傷もねェ…」
栄養を送る為だけの点滴を取り外しながら、医師は気怠そうに病状を説明する。
「そっか…よかった…」
私は、苦しげな表情を浮かべる女の子の手を取り、傍に腰掛けた。
「頑張って…大丈夫だから…」
小さな掌を両手で包み、言葉を掛ける。
「俺は戻る…側にいてやれ」
脱いだ白衣を私に被せると、出て行ってしまった船長。
「もう…不器用だなあ…」
受け取った白衣を肩に羽織り、再び少女の柔らかな手を包み込んだ。
「たった一人…誰にも頼らず戦い続けて…辛かったよね…」
小さな島で起きた、残虐な事件。
島の人も、家族もみんな殺され、たった一人生き残った少女。
普通の人間なら、正常な精神を保つのも難しい状況で、涙を拭い、武器を手に取り立ち上がった強さ。
諦めず、戦い続けた彼女の心を支えていたのは、一体何だったのか。
「戻ってきて…もう二度と、あなたを一人にしたりしないから…」
みんなが私を助けてくれた様に、今度は私が彼女を救いたい。
覚醒めた少女が、私達を受け入れてくれますように…。
ベッドの隅に腰を下ろし、願いを口にすることなく、私は浅い眠りについた。