第一章 蒼と青の世界
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肩や腕を回しながら、食堂に現れたシャチ。
「うう…なんかまだ身体が変だ…」
昨日、船長の技で身体をバラバラにされた事による後遺症らしい。
「シャチが悪いんだよ…」
私を虐めて遊んでいた彼に、眠りを邪魔されたローが激怒した結果だ。
「アイリスの言う通りだ…少しは大人しく出来ないのか…」
ため息をつきながら、朝食を取るペンギン。
「みんな冷たい!クジラ〜!お前だけが俺の味方だよ〜」
素知らぬ顔で、黙々と食事を口に運ぶクジラに泣きついたが、反応がない。
「俺を巻き込むな」
最後に留めを刺されたシャチは、机に突っ伏して足元に水溜りを作っていた。
「ほら…シャチ…もういいから、ご飯食べて」
彼の隣にパンとサラダを盛り付けた皿を置くと、泣きながら食べ始めた。
「朝から…うるせェ」
不機嫌そうに食堂に足を踏み入れる船長。
「ロー、おはよう」
食堂の一番後ろのテーブル。
パンが嫌いな船長のために、おにぎりと味噌スープの別メニューを用意する。
彼の指定席に食事を運び、私も隣に腰掛けた。
無言で朝食を摂る彼の横で、焼き立てのパンを頬張った瞬間。
「お〜い!みんな〜!島が見えたよ〜!」
勢い良く飛び込んできた白クマが、新たな冒険の幕開けを告げた。
「おお〜!!!キター!!」
先程まで凹んでいた筈のシャチは、ベポの後を追いかけ、飛び出して行く。
「上陸する…準備を整えろ」
ローは私達に指示を出すと、いつの間にか食器を空にして、静かに立ち上がり、食堂を後にした。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
霧がかかった、薄暗い島。
“スナメリ島ヘようこそ!” と、書かれた明るい看板が、静まり返った誰も居ない港で、一際浮いている。
「人…住んでないのかな…」
辺りを見回すが、一向に人の気配を感じない。
「全員…おれに、ついて来い」
どんな危険があるかもわからないので、私達は逸れないように、ローの後ろを付いて歩いた。
霧のせいで視界が悪く、少しでも離れると、仲間を見失いそうになる。
隣を歩くベポの腕を掴み、慎重に歩を進めた。
深い霧の奥から響く、不気味な鳥の鳴き声。
森を抜けると、廃墟と化した村のような所へ辿り着いた。
「待て」
急に立ち止まり、周囲を警戒し始めたロー。
「どうしたの?」
不安になり、問い掛ける。
「静かにしろ…何かいる」
全身の神経を集中させると、確かに何者かの視線を感じた。
「へェ…気配に気付かれたのは初めてよ…なかなかやるわね…あんた達」
どこからともなく、目の前に現れた黒い影。
私達と同じ歳位の少女が、こちらの行く手を阻むように、立ち憚る。
「それで、何をしに来たの…島に用がないなら、今すぐ出ていった方が利口だと思うけど」
大人びた女の子の、長い黒髪が風に揺れる。
「俺に指図するな…」
船長は、鋭い視線で少女を刺した。
「あんた達…殺されるわよ」
ピリピリと、殺気の満ちた空気が漂い始める。
「………」
先に口を開いたのは、少女の方だった。
「時間よ…出て行けと、忠告したのに…」
灰色の瞳を揺らし、意味深な言葉を吐いた彼女は、身を翻し森の中へ消えて行った。
辺りは一気に静まり返る。
「何なんだよ…つーか、時間ってなんの?」
シャチが小さく呟いた瞬間。
ヴォォォォォォ!!!
遠くから、雄叫びのような声が鳴り響いた。
「今の…聞いたか…!」
恐ろしい獣のような声に、震え上がるシャチ。
ペンギンの額にも、冷たい汗が噴き出していた。
「アイリス、俺から離れるな…お前たちもだ」
船長は声のする方に向き直り、長刀を構えると、自身の背後に私を隠した。
「クソッ…なんなんだよ…!」
皆も、それぞれ武器を構える。
「来るぞ…」
近付いてくる巨大な気配。
重い足音が、地面を揺らす。
先程まで周囲を飛んでいた鳥達は、すっかり姿を消してしまった。
「ガキがァ…この島に何の用だァ」
低音の声を響かせ、語りかけてくる男の肉体は、筋肉に覆われ、体長は三メートルを優に越えるほどの巨体。
視界の全てを埋め尽くすような大男が、私達の前に立ち憚る。
「まァいい… "最後の一人" がチョロチョロと逃げ回るせいで…飽き飽きしてた所だ…お前達を殺して退屈凌ぎでもしようじゃねェか…」
物騒な言葉を吐き、ニヤつく男。
「いいですねェ…船長」
背後に隠れていた男の手下達が、私達を取り囲む。
嫌な笑みを浮かべた男達が、銃口をこちらに向けた。
「おいおい、お前たち…銃なんかで殺したらつまらねェだろう…憂さ晴らしだ…どう殺すか考えるだけでも、久しぶりに胸が高ぶるってもんだぜ!」
巨体を震わせ高揚感に浸る大男に、賛同する仲間達。
「船長も悪い人ですねェ…俺達にも殺らせてくださいよ、退屈していたのは一緒なんですから」
手下の一人が、一歩前に出る。
反吐が出そうだ。
怒りを抑え、冷静に辺りを見渡す。
あの子は無事に逃げられたのだろうか。
事情はわからないが、私達に逃げるよう忠告してくれた少女の無事を祈る。
「クジラ、女を追えるか…あいつはお前に任せる」
同じ事を考えていた様子の船長。
その命に、思わず口角が上がる。
「了解! キャプテン!」
クジラは即座に身を翻し、女の子の後を追った。
彼に任せておけば、あの子はきっと大丈夫。
「なんだ…追いかけっこでも始めるつもりかァ?」
安堵したのも束の間、その様子を面白そうに嘲笑う大男。
「カラス〜!二匹は…お前に譲ってやる、行けェ!!!」
「はい船長…楽しい暇つぶしが出来そうですねェ」
気色の悪い笑みを浮かべた男が、嬉しそうに森の中へ消えて行く。
私達はただ、その場で二人の無事を祈るしかなかった。
「うう…なんかまだ身体が変だ…」
昨日、船長の技で身体をバラバラにされた事による後遺症らしい。
「シャチが悪いんだよ…」
私を虐めて遊んでいた彼に、眠りを邪魔されたローが激怒した結果だ。
「アイリスの言う通りだ…少しは大人しく出来ないのか…」
ため息をつきながら、朝食を取るペンギン。
「みんな冷たい!クジラ〜!お前だけが俺の味方だよ〜」
素知らぬ顔で、黙々と食事を口に運ぶクジラに泣きついたが、反応がない。
「俺を巻き込むな」
最後に留めを刺されたシャチは、机に突っ伏して足元に水溜りを作っていた。
「ほら…シャチ…もういいから、ご飯食べて」
彼の隣にパンとサラダを盛り付けた皿を置くと、泣きながら食べ始めた。
「朝から…うるせェ」
不機嫌そうに食堂に足を踏み入れる船長。
「ロー、おはよう」
食堂の一番後ろのテーブル。
パンが嫌いな船長のために、おにぎりと味噌スープの別メニューを用意する。
彼の指定席に食事を運び、私も隣に腰掛けた。
無言で朝食を摂る彼の横で、焼き立てのパンを頬張った瞬間。
「お〜い!みんな〜!島が見えたよ〜!」
勢い良く飛び込んできた白クマが、新たな冒険の幕開けを告げた。
「おお〜!!!キター!!」
先程まで凹んでいた筈のシャチは、ベポの後を追いかけ、飛び出して行く。
「上陸する…準備を整えろ」
ローは私達に指示を出すと、いつの間にか食器を空にして、静かに立ち上がり、食堂を後にした。
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霧がかかった、薄暗い島。
“スナメリ島ヘようこそ!” と、書かれた明るい看板が、静まり返った誰も居ない港で、一際浮いている。
「人…住んでないのかな…」
辺りを見回すが、一向に人の気配を感じない。
「全員…おれに、ついて来い」
どんな危険があるかもわからないので、私達は逸れないように、ローの後ろを付いて歩いた。
霧のせいで視界が悪く、少しでも離れると、仲間を見失いそうになる。
隣を歩くベポの腕を掴み、慎重に歩を進めた。
深い霧の奥から響く、不気味な鳥の鳴き声。
森を抜けると、廃墟と化した村のような所へ辿り着いた。
「待て」
急に立ち止まり、周囲を警戒し始めたロー。
「どうしたの?」
不安になり、問い掛ける。
「静かにしろ…何かいる」
全身の神経を集中させると、確かに何者かの視線を感じた。
「へェ…気配に気付かれたのは初めてよ…なかなかやるわね…あんた達」
どこからともなく、目の前に現れた黒い影。
私達と同じ歳位の少女が、こちらの行く手を阻むように、立ち憚る。
「それで、何をしに来たの…島に用がないなら、今すぐ出ていった方が利口だと思うけど」
大人びた女の子の、長い黒髪が風に揺れる。
「俺に指図するな…」
船長は、鋭い視線で少女を刺した。
「あんた達…殺されるわよ」
ピリピリと、殺気の満ちた空気が漂い始める。
「………」
先に口を開いたのは、少女の方だった。
「時間よ…出て行けと、忠告したのに…」
灰色の瞳を揺らし、意味深な言葉を吐いた彼女は、身を翻し森の中へ消えて行った。
辺りは一気に静まり返る。
「何なんだよ…つーか、時間ってなんの?」
シャチが小さく呟いた瞬間。
ヴォォォォォォ!!!
遠くから、雄叫びのような声が鳴り響いた。
「今の…聞いたか…!」
恐ろしい獣のような声に、震え上がるシャチ。
ペンギンの額にも、冷たい汗が噴き出していた。
「アイリス、俺から離れるな…お前たちもだ」
船長は声のする方に向き直り、長刀を構えると、自身の背後に私を隠した。
「クソッ…なんなんだよ…!」
皆も、それぞれ武器を構える。
「来るぞ…」
近付いてくる巨大な気配。
重い足音が、地面を揺らす。
先程まで周囲を飛んでいた鳥達は、すっかり姿を消してしまった。
「ガキがァ…この島に何の用だァ」
低音の声を響かせ、語りかけてくる男の肉体は、筋肉に覆われ、体長は三メートルを優に越えるほどの巨体。
視界の全てを埋め尽くすような大男が、私達の前に立ち憚る。
「まァいい… "最後の一人" がチョロチョロと逃げ回るせいで…飽き飽きしてた所だ…お前達を殺して退屈凌ぎでもしようじゃねェか…」
物騒な言葉を吐き、ニヤつく男。
「いいですねェ…船長」
背後に隠れていた男の手下達が、私達を取り囲む。
嫌な笑みを浮かべた男達が、銃口をこちらに向けた。
「おいおい、お前たち…銃なんかで殺したらつまらねェだろう…憂さ晴らしだ…どう殺すか考えるだけでも、久しぶりに胸が高ぶるってもんだぜ!」
巨体を震わせ高揚感に浸る大男に、賛同する仲間達。
「船長も悪い人ですねェ…俺達にも殺らせてくださいよ、退屈していたのは一緒なんですから」
手下の一人が、一歩前に出る。
反吐が出そうだ。
怒りを抑え、冷静に辺りを見渡す。
あの子は無事に逃げられたのだろうか。
事情はわからないが、私達に逃げるよう忠告してくれた少女の無事を祈る。
「クジラ、女を追えるか…あいつはお前に任せる」
同じ事を考えていた様子の船長。
その命に、思わず口角が上がる。
「了解! キャプテン!」
クジラは即座に身を翻し、女の子の後を追った。
彼に任せておけば、あの子はきっと大丈夫。
「なんだ…追いかけっこでも始めるつもりかァ?」
安堵したのも束の間、その様子を面白そうに嘲笑う大男。
「カラス〜!二匹は…お前に譲ってやる、行けェ!!!」
「はい船長…楽しい暇つぶしが出来そうですねェ」
気色の悪い笑みを浮かべた男が、嬉しそうに森の中へ消えて行く。
私達はただ、その場で二人の無事を祈るしかなかった。