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第一章 蒼と青の世界

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主人公の名前です。
幼馴染の男の子

錆付いた扉が重い音を響かせながら、ゆっくりと開かれる。

古い煉瓦作りの建物が、過ぎ去る時の流れを感じさせた。

「よし…開いた!さぁ、二人ともこっちにおいで」

招待された宴の会場から、少し離れた場所に建つ洋館。

「行こう…ロー」

食事の途中、その家の主に手招きされた、私と船長。

私達は、言われるがまま彼の後を追った。

「凄ェ…!」

歴史を感じさせる建造物の中に入り、明かりが灯された瞬間、漏れる感銘の声。

視界に収めることが出来ない程の、貴重な武器や調度品が、個々を主張しながら所狭しと並んでいた。

「おいで…君に合うものを選んであげよう」

言葉を失い、その場に立ち尽くしていた私の腕を、優しく取る家主。

「本当…凄い…」

目が眩むほどに輝く宝石や、高価そうな古い壺。

高鳴る鼓動を抑え、彼の後ろで立ち止まった。

怪しく存在を主張する妖刀や、惜しみなく宝飾が施された短刀。

様々な種類の武器を手に取り、私を見ては首を傾げ、元に戻す主。

「うーん…これなんか、どうかな?」

散々悩んだ末に、差し出された一本の剣。

「綺麗…」

職人技が際立つ精巧な彫刻が施された美しい鞘。

「抜いてごらん」

刀を両手で受け取り、鞘に手をかけた。

「なんて美しい剣…」

ゆっくりと姿を現す刀身は、眩い輝きを放つ。

「この刀には “鞘から抜き払う度にその閃光は世界を三度巡り、どんなに軽い一撃でも、森羅万象の者も魔性の者も厭わず殺してしまう” なんて…逸話があるんだよ」

細く鋭い純白の刃。

「少し怖いけど…でも…」

恐ろしい逸話とは相反する、美しい姿に心を奪われる。

一振り空を切ってみると、あまりの軽さと自然と馴染む柄の感触に嬉しくなった。

更に、所々に散りばめられた、可愛らしい宝飾にすっかり魅せられた私は、ローの元に小走りで向かった。

「ロー! 私…これがいい…これ…貰ってもいい?」

無造作に置かれた武器を、嬉しそうに物色する船長。

私の呼び掛けに動きを止め、こちらに振り返る。

「好きにしろ…」

刀と私を交互に見つめ、無愛想な言葉を放った少年。

けれど彼の口角は満足気に上がっていて、私も釣られて笑顔になった。

「わかった…!じゃあ…私…これにします!」

屋敷の主人に意思を伝える。

「うん…!君にとても似合っているよ」

彼は優しく微笑みながら、髪を撫でてくれた。

「船長さんは…決まったかな?」

男は私からローに視線を移し、呼びかける。

「これ…」

掌に、しっかりと握られている柄から伸びる、長い長い刀身。

私の選んだモノとは違う、怪しい雰囲気を漂わせる長刀を手に、主に問いかける船長。

「“鬼哭” …名の由来は “浮かばれぬ亡霊が恨めしさに泣くこと又、その声” …さっきの逸話どころじゃない…妖刀だぞ?」

男が話し終わると、ローは自身の背よりも遥かに高い位置にある切先を見据え、口を開いた。

「上等だ…これ以上の刀とはこの先出会えそうにねェ…こいつを譲って欲しい」

真剣な眼差しで男に視線を戻し、見つめる少年。

「うーん…まぁ…君がいいなら…でも…本当に大丈夫かな…」

心配そうに返事を返す屋敷の主。

「安心しろ…妖刀だって従わせてみせる…」

自信満々に口角を上げる姿に、男も納得したように頷く。

「君なら本当に上手く扱えそうだ…いいだろう…それを君に譲ろう」

不安そうな表情は薄れ、再び優しい笑みを浮かべる主人。

「ありがとうございます」

頷くだけの船長に代わって、お礼の言葉を述べた私。

「いいんだよ…君達のお陰で俺達は戻って来れたんだ…遠慮なく持って行きなさい!ほら…仲間の分も必要だろう」

私達は彼の言葉に素直に甘え、沢山の武器を譲り受ける事となった。

両手で持ちきれない程の荷物を抱え古い建物を後にした私達。

夕食の席に戻ると、小さな女の子はペンギンの膝を枕に、深い眠りについていた。

「凄ェ…なんだよその武器の数!おっさん何かやべェ事でもやってんのか?」

少女の髪を撫でながら、失礼な事を口にするシャチ。

「ハハハ…これは俺の祖父の趣味でね…若い頃から装飾品や、古い武器なんかを集めるのが好きな男だったんだ…」

寝息を立てる少女を、ペンギンの膝からゆっくりと剥がし、妻が口を開く。

「そうなのよ…お祖父さんが亡くなってから処分するにも、価値もわからないし困っていたの…」

眉を下げ、娘の背を優しく擦りながら、女は部屋を後にした。

「妻の言うとおり…祖父の宝物だったモノを捨てる訳にはいかないし…なかなか手放せなくてね…」

男は、少し寂しそうな笑みを浮かべた。

「だから…恩人でもある君達に譲り受けて貰って…きっと祖父も喜んでいるよ」

子供を寝かし付け、階段を降りてきた妻は、主の肩にそっと手を添え微笑んだ。

「あなた達の手に渡って私も嬉しいわ…大切に使ってね」

家族の大切な宝物を譲り受けた私達は、一同揃って深く頭を下げた。
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