第一章 蒼と青の世界
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ー10年後ー
集落から、少し離れた丘の上にある大きな岩。
その岩の上に腰掛けて、どこまでも続く地平線の向こう側に想いを馳せる。
毎日この場所から海を眺めるのが、私はとても好きだった。
「アイリス、またここに居たのか…」
呆れた様に声を掛けてきたのは、二つ年上の幼馴染、カイル。
溜息を吐く彼に、先手を取られる前に口を開く。
「カイルこそ…お説教なら聞かないから…」
頬を膨らます私に苦笑いを浮かべた少年は、何も言わず、隣に腰掛けた。
「…………」
二人の間を、心地いい潮風が通り抜ける。
私達は暫くの間、黙って地平線を眺めていた。
「お前…まだこの島から出たいとか考えてるのか?」
沈黙を破り、ポツリと呟くように投げられた問。
「当たり前でしょ…! いつか…いつか島から出て、あの地平線を越えた先にある世界を見てみたい…何度もそう言ってるじゃない」
私の答えを聞いているのか、いないのか。
幼馴染は真っ直ぐ、海の向こうを見つめている。
「まァ…お前には無理だアイリス、そんな夢さっさと諦めて…この島で自分のやるべき事をしっかりやるんだな」
漸く口を開いたと思ったら、腕に刻まれた花紋章に視線を移し、冷めた言葉を放ったカイル。
「煩い…! お説教なら聞かないって言ったじゃない! カイルのバカ!」
否定された事に無性に腹が立ち、私は勢い良くその場を後にした。
「私だって…わかってる…」
森を抜けると、色とりどりの花が咲き乱れる場所に出る。
その中心に、凛とした空気を纏い悠然と立つ大木が姿を現した。
「あ…実がついてる…」
木には、風に揺れる濃紫の果実が実っていた。
天使族の中でも、不思議な果実に触れていいのは選ばれた者だけ。
花紋章を持つ者だけが、禁断の実と呼ばれる果実に、触ることができる唯一の存在だった。
私が産まれてから、大木は眠りから覚めたように実をつけるようになったんだと、長から聞いている。
「よし…採れた」
慎重に果実を採取し、図鑑を開いた。
「え…嘘…この実は…まさか…」
図鑑と実を、交互に確認し焦りを覚える。
「久しぶりに、実ったんじゃのう…」
突然声を掛けられ、思わず飛び跳ねる。
背後から不意に現れたのは、私達一族の長である祖父だった。
「お祖父様!驚かさないでください…!」
落としてしまった本を拾いながら、声を荒げる。
「すまんすまん…久々の実じゃからつい…」
申し訳なさそうな表情を浮かべる老人に、溜息を漏らし、肩を竦めた。
「ところで、お祖父様…コレを見てください」
図鑑と照らし合わせ、二人で何度も確認し、行き着いた答えは最凶の実。
「ヤミヤミの実じゃな…アイリス …決して誰かの手に渡ることがないよう、隠すんじゃ…この実は海に還してはいかん…絶対に…」
祖父は僅かに震えていた。
「わかりました…この実は誰の目にも触れないよう、確実に封印します」
自分の額に冷たい汗が流れるのを感じながら、その実を特別な鍵付きの箱に収め、何重にも鎖を巻きつけ、封印を施す。
そして、周囲に誰も居ないのを確認した後、ある秘密の場所に厳重に保管した。
島の中心に立つ大木に実るのは "悪魔の実" と呼ばれる禁断の果実。
その木を守り、悪魔の実を海へと還すのが花紋章を持つ私の使命。
更に、稀に実ってしまう世界に厄災を及ぼす可能性のある危険な実を、封印する事も大切な役割だった。
この日、突如実った最凶の実は、誰にも知られずに隠せたと油断していた。
後ろを追ってきた幼馴染が、全てを見ていたなんて、気付きもせずに。
集落から、少し離れた丘の上にある大きな岩。
その岩の上に腰掛けて、どこまでも続く地平線の向こう側に想いを馳せる。
毎日この場所から海を眺めるのが、私はとても好きだった。
「アイリス、またここに居たのか…」
呆れた様に声を掛けてきたのは、二つ年上の幼馴染、カイル。
溜息を吐く彼に、先手を取られる前に口を開く。
「カイルこそ…お説教なら聞かないから…」
頬を膨らます私に苦笑いを浮かべた少年は、何も言わず、隣に腰掛けた。
「…………」
二人の間を、心地いい潮風が通り抜ける。
私達は暫くの間、黙って地平線を眺めていた。
「お前…まだこの島から出たいとか考えてるのか?」
沈黙を破り、ポツリと呟くように投げられた問。
「当たり前でしょ…! いつか…いつか島から出て、あの地平線を越えた先にある世界を見てみたい…何度もそう言ってるじゃない」
私の答えを聞いているのか、いないのか。
幼馴染は真っ直ぐ、海の向こうを見つめている。
「まァ…お前には無理だアイリス、そんな夢さっさと諦めて…この島で自分のやるべき事をしっかりやるんだな」
漸く口を開いたと思ったら、腕に刻まれた花紋章に視線を移し、冷めた言葉を放ったカイル。
「煩い…! お説教なら聞かないって言ったじゃない! カイルのバカ!」
否定された事に無性に腹が立ち、私は勢い良くその場を後にした。
「私だって…わかってる…」
森を抜けると、色とりどりの花が咲き乱れる場所に出る。
その中心に、凛とした空気を纏い悠然と立つ大木が姿を現した。
「あ…実がついてる…」
木には、風に揺れる濃紫の果実が実っていた。
天使族の中でも、不思議な果実に触れていいのは選ばれた者だけ。
花紋章を持つ者だけが、禁断の実と呼ばれる果実に、触ることができる唯一の存在だった。
私が産まれてから、大木は眠りから覚めたように実をつけるようになったんだと、長から聞いている。
「よし…採れた」
慎重に果実を採取し、図鑑を開いた。
「え…嘘…この実は…まさか…」
図鑑と実を、交互に確認し焦りを覚える。
「久しぶりに、実ったんじゃのう…」
突然声を掛けられ、思わず飛び跳ねる。
背後から不意に現れたのは、私達一族の長である祖父だった。
「お祖父様!驚かさないでください…!」
落としてしまった本を拾いながら、声を荒げる。
「すまんすまん…久々の実じゃからつい…」
申し訳なさそうな表情を浮かべる老人に、溜息を漏らし、肩を竦めた。
「ところで、お祖父様…コレを見てください」
図鑑と照らし合わせ、二人で何度も確認し、行き着いた答えは最凶の実。
「ヤミヤミの実じゃな…アイリス …決して誰かの手に渡ることがないよう、隠すんじゃ…この実は海に還してはいかん…絶対に…」
祖父は僅かに震えていた。
「わかりました…この実は誰の目にも触れないよう、確実に封印します」
自分の額に冷たい汗が流れるのを感じながら、その実を特別な鍵付きの箱に収め、何重にも鎖を巻きつけ、封印を施す。
そして、周囲に誰も居ないのを確認した後、ある秘密の場所に厳重に保管した。
島の中心に立つ大木に実るのは "悪魔の実" と呼ばれる禁断の果実。
その木を守り、悪魔の実を海へと還すのが花紋章を持つ私の使命。
更に、稀に実ってしまう世界に厄災を及ぼす可能性のある危険な実を、封印する事も大切な役割だった。
この日、突如実った最凶の実は、誰にも知られずに隠せたと油断していた。
後ろを追ってきた幼馴染が、全てを見ていたなんて、気付きもせずに。