第一章 蒼と青の世界
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遠くに聴こえる波の音が、閉じ込められた部屋の中に心地よく響き渡り、不安と焦燥に駆られる私の心を落ち着かせる。
「どうにかして外に出ないと」
冷静さを取り戻し、嵌められた手錠を抜こうと腕を捩ってみるが、ビクともしない。
「外れない…か…それなら」
腕の紋章を見つめ、念じるように瞼を閉じる。
「"花言葉二つ目" ホープ “解錠 ” 」
解号と共に、重たい手錠は容易に外れ、鈍い音を鳴らしながら床に転がり落ちた。
「よかった…外れた」
急いで立ち上がり、扉の前に耳を当て、外の様子を伺う。
聞きなれた声で部下達に指示を出しながら、こちらに近づいて来る足音。
「カイルだ…どうしよう…」
慌てて椅子に座り直し、鍵を外した手錠を潜らせる。
間一髪、目の前の扉が静かに開けられた。
「待たせたね…アイリス」
「クジラは…彼は無事なの…?」
一番の気掛かりは、私を守るため、ここまでついて来てくれた大切な友達。
彼の様子を問うと、少年は苛立ったように舌打ちをしてみせた。
「さァ…? お前が俺に従うなら教えてやってもいいけど…どうする?」
嫌な笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいて来る幼馴染。
静かに湧き上がる怒りを抑え、私は彼を睨みつけた。
「カイル…あの実はどこにあるの…」
視界に映る男の表情からは、有利に立つ余裕が垣間見える。
「あれなら高値で売れたさ…買った客については聞いても無駄だ…客の素性なんて、いちいち把握してないからな」
対峙する二人の間に、殺気を含ませた緊張感が漂う。
「わからない…カイル…何のためにこんなこと…」
幼い頃、いつも隣で優しく微笑んでいた幼馴染。
そんな彼からは、想像も出来ない程の深い闇。
「何のため? 簡単な事だ…ただ掟に従って生きていく人生が…俺には耐えられなかっただけだ」
カイルは窓の外を見つめ、溜息を漏らす。
「政府の監視下に置かれて、あんな…くだらない実を守る為だけにあの島で死んで逝く」
昔を思い出し、刹那気な表情を浮かべる幼馴染。
「天使族なんて…本当につまらない種族だよ…反吐が出る…お前だって、昔から島を出たいって言ってたじゃないか…」
最後に、彼は小さく呟いた。
「俺を殺すのか…アイリス」
込み上げていた怒りが、哀しみに変わる。
本当は、彼を救いたい。
「殺すなんて嫌に決まってる…でも、あなたを…このまま野放しには出来ない」
感情が、瞳の奥から溢れ出そうになるのを、必死で堪えた。
「そうか…だが悪いな、俺は自分が幸せになるために金儲けを続ける…お前に殺されるつもりもない」
そんな理由で、お祖父様は殺されたの?
そんな理由で、沢山の罪も無い人が売られたっていうの?
カイル、あなたは間違ってる。
「許さないカイル…そんな事で、関係ない人の幸せを壊していいはずがない!」
彼は微笑みを浮かべ、視線をこちらに向けた。
「心配しなくても、お前は上客に売ってやるよ…希少な天使族のお姫様には…さぞかし高い値が付くだろうなァ」
何かもっと、特別な理由があって、お祖父様を殺めてしまったのかもしれない。
「精々、ご主人様を愉しませるんだな…アハハハ」
きっと、彼の本意ではなかった。
本当は、そう言って欲しかった。
それで全てを許せたのに。
「わかった…」
現実は、残酷なものだ。
私は自分の中に残っていた情けを捨てて、覚悟を決めた。
「もう、手遅れなんだね…」
紋章が白い光を放つ。
「それなら…私が、あなたを終わらせる」
瞼を閉じ、神経を集中させる。
私を包む白い光は、深い闇の色へと変化した。
「カイル…」
兄のように慕っていた優しい幼馴染は、もういない。
一筋の涙が、頬を伝う。
あなたの罪の全てを背負って、堕ちる覚悟を決めたんだ。
「"花言葉二つ目 裏" ホープ “死の贈り物 ” 」
さようなら、カイル。
「どうにかして外に出ないと」
冷静さを取り戻し、嵌められた手錠を抜こうと腕を捩ってみるが、ビクともしない。
「外れない…か…それなら」
腕の紋章を見つめ、念じるように瞼を閉じる。
「"花言葉二つ目" ホープ “
解号と共に、重たい手錠は容易に外れ、鈍い音を鳴らしながら床に転がり落ちた。
「よかった…外れた」
急いで立ち上がり、扉の前に耳を当て、外の様子を伺う。
聞きなれた声で部下達に指示を出しながら、こちらに近づいて来る足音。
「カイルだ…どうしよう…」
慌てて椅子に座り直し、鍵を外した手錠を潜らせる。
間一髪、目の前の扉が静かに開けられた。
「待たせたね…アイリス」
「クジラは…彼は無事なの…?」
一番の気掛かりは、私を守るため、ここまでついて来てくれた大切な友達。
彼の様子を問うと、少年は苛立ったように舌打ちをしてみせた。
「さァ…? お前が俺に従うなら教えてやってもいいけど…どうする?」
嫌な笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいて来る幼馴染。
静かに湧き上がる怒りを抑え、私は彼を睨みつけた。
「カイル…あの実はどこにあるの…」
視界に映る男の表情からは、有利に立つ余裕が垣間見える。
「あれなら高値で売れたさ…買った客については聞いても無駄だ…客の素性なんて、いちいち把握してないからな」
対峙する二人の間に、殺気を含ませた緊張感が漂う。
「わからない…カイル…何のためにこんなこと…」
幼い頃、いつも隣で優しく微笑んでいた幼馴染。
そんな彼からは、想像も出来ない程の深い闇。
「何のため? 簡単な事だ…ただ掟に従って生きていく人生が…俺には耐えられなかっただけだ」
カイルは窓の外を見つめ、溜息を漏らす。
「政府の監視下に置かれて、あんな…くだらない実を守る為だけにあの島で死んで逝く」
昔を思い出し、刹那気な表情を浮かべる幼馴染。
「天使族なんて…本当につまらない種族だよ…反吐が出る…お前だって、昔から島を出たいって言ってたじゃないか…」
最後に、彼は小さく呟いた。
「俺を殺すのか…アイリス」
込み上げていた怒りが、哀しみに変わる。
本当は、彼を救いたい。
「殺すなんて嫌に決まってる…でも、あなたを…このまま野放しには出来ない」
感情が、瞳の奥から溢れ出そうになるのを、必死で堪えた。
「そうか…だが悪いな、俺は自分が幸せになるために金儲けを続ける…お前に殺されるつもりもない」
そんな理由で、お祖父様は殺されたの?
そんな理由で、沢山の罪も無い人が売られたっていうの?
カイル、あなたは間違ってる。
「許さないカイル…そんな事で、関係ない人の幸せを壊していいはずがない!」
彼は微笑みを浮かべ、視線をこちらに向けた。
「心配しなくても、お前は上客に売ってやるよ…希少な天使族のお姫様には…さぞかし高い値が付くだろうなァ」
何かもっと、特別な理由があって、お祖父様を殺めてしまったのかもしれない。
「精々、ご主人様を愉しませるんだな…アハハハ」
きっと、彼の本意ではなかった。
本当は、そう言って欲しかった。
それで全てを許せたのに。
「わかった…」
現実は、残酷なものだ。
私は自分の中に残っていた情けを捨てて、覚悟を決めた。
「もう、手遅れなんだね…」
紋章が白い光を放つ。
「それなら…私が、あなたを終わらせる」
瞼を閉じ、神経を集中させる。
私を包む白い光は、深い闇の色へと変化した。
「カイル…」
兄のように慕っていた優しい幼馴染は、もういない。
一筋の涙が、頬を伝う。
あなたの罪の全てを背負って、堕ちる覚悟を決めたんだ。
「"花言葉二つ目 裏" ホープ “
さようなら、カイル。