第一章 蒼と青の世界
名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
街は予想よりも遥かに大きく、とても一日では周りきれそうにない。
二時間ほど歩いたところで、少し休憩を取ることにした。
カイルの手掛かりは、未だ何も見つからない。
「どこにいるの…カイル」
小さな公園の白いベンチに腰掛けて、溜息をついた。
北の海の冷たい海風が、長く伸びた髪を優しく撫でる。
ふと前を向くと、視界に入ったのは手を繋いだ親子の姿。
「お父様とお母様…元気にしてるかな…」
故郷を思い出し、感傷に浸っていると、目の前の父と娘の姿に何とも言えない違和感を感じた。
「何か…違う…」
立ち上がり、気配を消して親子を追いかける。
裏路地に差し掛かったところで、突然振り返った父親が口を開く。
「それで隠れてるつもりか?出てこいよ…」
手を引かれている女の子は、恐怖に震え泣いていた。
「…その子の手を離してください」
ニヤニヤと、嫌な笑みを浮かべる男。
「大事な商品を離すわけないだろう」
光の差す場所には、必ず闇が潜んでいる。
周りに複数の気配を感じた私は、危険を感じ身構えた。
「卑怯者…子供相手に最低…」
彼を睨みつけたと同時に、一斉に襲ってきた男の仲間に腕を掴まれる。
「お姉ちゃん…!」
自分も捕まっているというのに、私の心配をしてくれる幼い少女。
その姿に、胸が苦しくなる。
"面倒は起こすな"
ローの顔が頭を過ぎった。
けれど、このピンチを切り抜けなくてはいけない。
"力を使うしかない" と、覚悟を決めた瞬間、風を切る音と共に、視界に飛び込んできた黒い影。
その正体は、ローと同じ歳くらいの少年だった。
周りを囲んでいた男達は一瞬で倒れ、悶え苦しんでいる。
「…巻き込んで悪かったな」
彼は素早く少女を助け、私に手渡した。
「残りの始末は俺がしておく…その子を連れて早く行け」
聞きたいことは沢山あったが、今は少女の安全が第一。
「…ありがとう」
足手まといにならないよう、女の子の手を引いて、急いでその場を後にした。
人通りの多い、大きな通りまで出たところで足を止める。
「大丈夫…? 怪我してない?」
肩で息をする少女に、優しく言葉をかける。
「うん…ありがとうお姉ちゃん」
そっと髪を撫でてあげると、彼女の顔に笑みが戻った。
「どうされたんですか? 大丈夫ですか?」
声を掛けてくれた海軍の人に事情を説明すると、今まさに子供を探している親が来ていると聞き、少女を連れて海軍基地へと向かった。
「ありがとうございます!ほんとにありがとう!」
海軍施設に居たのは、やはり少女の親だったようで、彼女の顔を見た瞬間、泣いて喜んでいた。
「よかった…もう一人になったらだめだよ」
母の腕に抱き締められ、涙を流す少女。
安心した私が、立ち去ろうとした瞬間。
「ご協力感謝します!ところで…お嬢さんはこの街の人ですか?」
先程の海軍兵から、何とも答え難い問を投げ掛けられた。
「あ…えっと…私は、観光です…」
吹き出してくる冷汗を感じ取られないように、笑顔で返す。
「そうですか…お嬢さんも、十分気をつけてくださいね…この街は賑やかな分、犯罪も多いですから…」
勘付かれているのか。
「ありがとうございます…それでは…」
彼の刺すような視線に耐えきれず、私は急いでその場から立ち去った。
念の為、人通りの多い道を選んで歩き、時計塔のある大きな広場まで辿り着いた私。
通行の邪魔にならないよう、階段の端の方に腰を下ろした。
「疲れた…なんなの…もう…」
短時間に起きた、あり得ない事件。
そして、海軍からの尋問。
疲れ果てた私は、暫く休息を取ることにした。
ぼーっと広場を眺めていると、頭上から突然、影が落とされた。
「さっきは災難だったな…ほら、これ」
差し出されたのは、近くの売店で売っているフルーツジュース。
「ありがとう…」
私が飲み物を受け取ると、彼は隣に腰掛けた。
「俺はクジラ、宜しくな」
差し出された掌を握り返し、名を名乗る。
「アイリスです…宜しく」
少年はジュースを飲みながら、先程起きた事件について語り始めた。
「驚いただろう…あれは、この街の闇だ」
「闇って何? あの人達、小さい子を拐ってどうするつもりだったの…?」
それは私の知らない、光の裏側。
「売るんだ…マーケットで」
返ってきた答えは、衝撃的なものだった。
「売る…? 売るって…人間を…売ってるの?」
睫毛を伏せ、頷く少年。
「この街で拐って…他の島で売るんだ…この間も、男の子が捕まって連れて行かれたよ…」
「その男の子は…この街の人? 知り合いなの?」
悲しそうな表情を浮かべる男の子。
「いや…わからねェ…助けに行ったけど、間にあわなかったんだ…」
彼は空を見上げて、言葉を紡いだ。
「自分で天使族だって言い回ってたんだ…そんな事するから…すぐに目を付けられて連れ去られたよ…高値で取引されるだろうな」
私は自分の耳を疑った。
「天使族…? その子…天使族って言ったの!?」
幼馴染が、人身売買を行う組織に拐われた。
「カイル…カイルだ…私、行かなきゃ…!」
漸く見つけた、彼の痕跡。
静止する男の子を振り払って、走り出す。
「助けてくれてありがとう!ジュースも、ごちそうさま!」
逸る気持ちを抑え、一目散に港まで走って向かった。
二時間ほど歩いたところで、少し休憩を取ることにした。
カイルの手掛かりは、未だ何も見つからない。
「どこにいるの…カイル」
小さな公園の白いベンチに腰掛けて、溜息をついた。
北の海の冷たい海風が、長く伸びた髪を優しく撫でる。
ふと前を向くと、視界に入ったのは手を繋いだ親子の姿。
「お父様とお母様…元気にしてるかな…」
故郷を思い出し、感傷に浸っていると、目の前の父と娘の姿に何とも言えない違和感を感じた。
「何か…違う…」
立ち上がり、気配を消して親子を追いかける。
裏路地に差し掛かったところで、突然振り返った父親が口を開く。
「それで隠れてるつもりか?出てこいよ…」
手を引かれている女の子は、恐怖に震え泣いていた。
「…その子の手を離してください」
ニヤニヤと、嫌な笑みを浮かべる男。
「大事な商品を離すわけないだろう」
光の差す場所には、必ず闇が潜んでいる。
周りに複数の気配を感じた私は、危険を感じ身構えた。
「卑怯者…子供相手に最低…」
彼を睨みつけたと同時に、一斉に襲ってきた男の仲間に腕を掴まれる。
「お姉ちゃん…!」
自分も捕まっているというのに、私の心配をしてくれる幼い少女。
その姿に、胸が苦しくなる。
"面倒は起こすな"
ローの顔が頭を過ぎった。
けれど、このピンチを切り抜けなくてはいけない。
"力を使うしかない" と、覚悟を決めた瞬間、風を切る音と共に、視界に飛び込んできた黒い影。
その正体は、ローと同じ歳くらいの少年だった。
周りを囲んでいた男達は一瞬で倒れ、悶え苦しんでいる。
「…巻き込んで悪かったな」
彼は素早く少女を助け、私に手渡した。
「残りの始末は俺がしておく…その子を連れて早く行け」
聞きたいことは沢山あったが、今は少女の安全が第一。
「…ありがとう」
足手まといにならないよう、女の子の手を引いて、急いでその場を後にした。
人通りの多い、大きな通りまで出たところで足を止める。
「大丈夫…? 怪我してない?」
肩で息をする少女に、優しく言葉をかける。
「うん…ありがとうお姉ちゃん」
そっと髪を撫でてあげると、彼女の顔に笑みが戻った。
「どうされたんですか? 大丈夫ですか?」
声を掛けてくれた海軍の人に事情を説明すると、今まさに子供を探している親が来ていると聞き、少女を連れて海軍基地へと向かった。
「ありがとうございます!ほんとにありがとう!」
海軍施設に居たのは、やはり少女の親だったようで、彼女の顔を見た瞬間、泣いて喜んでいた。
「よかった…もう一人になったらだめだよ」
母の腕に抱き締められ、涙を流す少女。
安心した私が、立ち去ろうとした瞬間。
「ご協力感謝します!ところで…お嬢さんはこの街の人ですか?」
先程の海軍兵から、何とも答え難い問を投げ掛けられた。
「あ…えっと…私は、観光です…」
吹き出してくる冷汗を感じ取られないように、笑顔で返す。
「そうですか…お嬢さんも、十分気をつけてくださいね…この街は賑やかな分、犯罪も多いですから…」
勘付かれているのか。
「ありがとうございます…それでは…」
彼の刺すような視線に耐えきれず、私は急いでその場から立ち去った。
念の為、人通りの多い道を選んで歩き、時計塔のある大きな広場まで辿り着いた私。
通行の邪魔にならないよう、階段の端の方に腰を下ろした。
「疲れた…なんなの…もう…」
短時間に起きた、あり得ない事件。
そして、海軍からの尋問。
疲れ果てた私は、暫く休息を取ることにした。
ぼーっと広場を眺めていると、頭上から突然、影が落とされた。
「さっきは災難だったな…ほら、これ」
差し出されたのは、近くの売店で売っているフルーツジュース。
「ありがとう…」
私が飲み物を受け取ると、彼は隣に腰掛けた。
「俺はクジラ、宜しくな」
差し出された掌を握り返し、名を名乗る。
「アイリスです…宜しく」
少年はジュースを飲みながら、先程起きた事件について語り始めた。
「驚いただろう…あれは、この街の闇だ」
「闇って何? あの人達、小さい子を拐ってどうするつもりだったの…?」
それは私の知らない、光の裏側。
「売るんだ…マーケットで」
返ってきた答えは、衝撃的なものだった。
「売る…? 売るって…人間を…売ってるの?」
睫毛を伏せ、頷く少年。
「この街で拐って…他の島で売るんだ…この間も、男の子が捕まって連れて行かれたよ…」
「その男の子は…この街の人? 知り合いなの?」
悲しそうな表情を浮かべる男の子。
「いや…わからねェ…助けに行ったけど、間にあわなかったんだ…」
彼は空を見上げて、言葉を紡いだ。
「自分で天使族だって言い回ってたんだ…そんな事するから…すぐに目を付けられて連れ去られたよ…高値で取引されるだろうな」
私は自分の耳を疑った。
「天使族…? その子…天使族って言ったの!?」
幼馴染が、人身売買を行う組織に拐われた。
「カイル…カイルだ…私、行かなきゃ…!」
漸く見つけた、彼の痕跡。
静止する男の子を振り払って、走り出す。
「助けてくれてありがとう!ジュースも、ごちそうさま!」
逸る気持ちを抑え、一目散に港まで走って向かった。