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第一章 蒼と青の世界

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主人公の名前です。
幼馴染の男の子

茜色の空に、薄っすらと浮かび上がる月。

永遠と戦いの訓練に明け暮れていた男達は、床に倒れ込み、起き上がれなくなっていた。

「みんな、最初から頑張り過ぎだよ…」

足元に転がる彼らを避けながら、私は甲板に干していた洗濯物を取り込んでいた。

「うぅ…腕が痛ェ…」

昼間の事もあってか、ずっと船長の相手をさせられていたシャチは、一番疲れ果てている様子だった。

「もう…動けねェ…」

帽子を脱ぎ捨て、息も絶え絶えになっているペンギン。

「お腹空いたよ〜」

ベポも、たくさん動いたからか、お腹の虫が鳴いている様子。

「だらしねェ…アイリス…飯にしてやれ」

ローはというと、彼等の傍らで、甲板の手摺にもたれ掛かり涼しい顔をしている。

「はーい…」

私は仕方なく洗濯物を一旦部屋に置いて、夕飯の支度に取り掛かった。

「料理習っておいてよかった…」

スワロー島で一番人気の食堂店主に教えてもらった甲斐あって、簡単なメニューなら素早く上手に作ることが出来る。

「よし!出来た!」

出来立ての料理を並べていると、漸く動けるようになった男達が、匂いに釣られ食堂に集まって来た。

「美味そう…!いただきまーす!」

沢山作った大皿料理は、あっという間に空になり、食事を終えた彼らは満足そうに部屋に戻って行った。

「ごちそうさま…アイリス

食器を下げてくれる優しい少年。

「ありがとうペンギン!今夜の見張り番頑張ってね」

船の見張りは男達が交代で行うことになり、今日の当番はペンギン。

「お前も早く休めよ」

彼を見送り、明日の朝食の仕込みまで終えると、既に船内は静まり返っていた。

音を立てないよう、静かに部屋の扉を開く。

「あー…忘れてた…」

部屋に入って、視界に飛び込んできたのは洗濯物の山。

「せめて…ローの分は持っていかなきゃ…」

足音を響かせないよう慎重に歩を進め、辿り着いた船長室の前で、ドアを軽くノックする。

「ロー起きてる?」

返事はない。

「ロー…開けるよ…」

静かに扉を開き、中の様子を探る。

小さな電球の灯の下、医学書を読み耽る彼がこちらに気付き視線を向けた。

「………なんだ」

「洗濯物! ここに置いておくね」

運んできた衣類を、ソファーの上に置き、邪魔をしないよう直ぐにドアノブに手をかけた。

「待て、アイリス…今日からここで寝ろ」

突然の船長命令に、驚いた私は勢い良く振り返る。

「な…!なんで?」

彼は視線を医学書に落としたまま、冷静な口調で口を開いた。

「まだ子供でもお前は女だ…」

確かにそうだ。

大部屋で彼らと一緒に寝るのは、これから大人の男や女に成長していく中で、危険な事なのかもしれない。

「また、ベポの下敷きになりたいなら別だが…ククッ」

「だっ誰が…!」

白熊に潰されて、笑われるのも正直二度と御免だ。

「ローは、私がここで寝ても…嫌じゃないの?」

口角を上げ医学書を置くと、徐ろに立ち上がった船長。

「嫌なら誘わねェ…ほら、こいよ」

ベットに潜り込み、布団を捲ると隣を指差す。

瞬間、私の心臓は鼓動を早めた。

大部屋なんかよりも、ずっと危険なんじゃないかと、頭の中に警鐘が鳴り響く。

「せっ洗濯物…!みんなの分も片付けないと!」

慌てて部屋を飛び出そうとした私の腕を素早く掴み、ベットに押し付けたロー。

「そんなもんどうでもいい…今すぐここで寝ろ…命令だ」

絡まった視線を外すことも許されない状況に、限界を感じた私は、諦めて彼に従うことにした。

「それでいい…」

疲れていたのか、そのまま隣で瞼を閉じると静かに寝息を立て始めた船長。

「なんなの…もう…」

逃げようと身動ぎしても、腰に回った腕が離してくれない。

仕方なく身を捩り、彼に背を向け眠りについた。

次の日、目が覚めると私の荷物が全て船長室に移されていて、 "命令は絶対だ" と笑うローの姿に、内心穏やかでない感情を抱いたことは誰にも言えない内緒の話。
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