桜花乱舞の刻
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様々な生物が活動を始め、植物が自身を主張するかの様に蕾を開いて逝く。
一年で一番、色鮮やかなこの季節。
私達夫婦と新撰組が、決まって集まり向かう場所が在る。
まだ遠出は出来ない子供達を、天霧さんと不知火さんに預け、里を出る。
男二人で子守は大変だと、いつも駆け付けてくれる千姫と君菊さん。
「宜しくお願い致します…」
大切な二人を任せ、江戸を越え、西に向かい歩いて行く。
懐かしい京の町。
近くに、悠々と聳える山を登り、森の奥深くまで足を運ぶ。
普通の人間は、決して足を踏み入れない領域。
私達は、其処に隠れる様に建っている、小屋へと辿り着いた。
「あぁー疲れたー」
囲炉裏の前に、座り込む平助君。
「平助!日頃から鍛えようとしないからだぞ!見ろこの俺を!」
相変わらずの筋肉を自慢気に披露する永倉さん。
「そうだな…平和になったからって、だらけ過ぎなんだよお前」
原田さんは二人を横目に、呆れたように呟いた。
「左之さん…つーか、新八っつぁんは肉体自慢したいだけだろーよ!」
昔と変わらない遣り取り。
京の屯所で、皆と過ごした楽しい日々を思い出す。
「今更だが、皆無事で…本当に良かった…トシありがとう」
毎年、同じ事を口にする近藤さん。
「おいおい近藤さん、やめてくれよ…俺達は、あんたに感謝される為に…生きて帰ってきたんじゃねぇんだ」
肩を落とし、溜息を吐く土方さん。
「副長の言う通りです…局長こそ、生きていてくれて良かったと、俺は今でも思っています」
斎藤さんの言葉に、土方さんも、近藤さんも嬉しそうに微笑んだ。
「さぁ用意出来ましたよ!皆、行きましょう」
千鶴の掛け声で、皆が一斉に小屋の外へ、歩を進める。
満開に咲き誇る、桜の木の下。
堂々たる姿で立ち続ける、一本の刀。
そこは、井上 源三郎 の墓。
「ただいま…井上さん…」
皆で揃って手を合わせ、亡き彼への想いを馳せる。
「此処から見える景色は、あの頃とはすっかり変わってしまいましたね…」
京が見渡せる丘の上、時代と共に変わって逝く景色を、ぼんやりと眺める。
「ゆき…周りを見てみろ」
そっと肩へ手を添え、私を促す千景さん。
言わるままに、辺りを見回した。
満開の桜の下、何時までも変わらない皆の笑顔。
「ゆき…案ずるな…俺も、お前の周りにいる人間も、この桜も、変わらないものが、ここに在る」
"変わらないものこそ、信じるべきもの"
いつか、斎藤さんが言っていた言葉が頭を過る。
「千景さん…その通りです…私達の心は変わらない…つい、無駄な事を考えてしまいました」
いつだって、大切な事を教えてくれる皆の傍で。
「さぁ、お花見を始めましょう!」
料理を囲み、酒を煽りながら、昔の思い出話に花を咲かす。
此れから先、幾つ時代が巡ろうと。
変わることの無い、誠の旗が風に揺らめく。
時代の徒花が咲き誇る。
『新撰組』
散り逝く運命だった男達は、今も此の場所で生きている。
気高く、他に媚びず、誇り高く。
純粋に、貫き通した剣の道を。
ー完ー
一年で一番、色鮮やかなこの季節。
私達夫婦と新撰組が、決まって集まり向かう場所が在る。
まだ遠出は出来ない子供達を、天霧さんと不知火さんに預け、里を出る。
男二人で子守は大変だと、いつも駆け付けてくれる千姫と君菊さん。
「宜しくお願い致します…」
大切な二人を任せ、江戸を越え、西に向かい歩いて行く。
懐かしい京の町。
近くに、悠々と聳える山を登り、森の奥深くまで足を運ぶ。
普通の人間は、決して足を踏み入れない領域。
私達は、其処に隠れる様に建っている、小屋へと辿り着いた。
「あぁー疲れたー」
囲炉裏の前に、座り込む平助君。
「平助!日頃から鍛えようとしないからだぞ!見ろこの俺を!」
相変わらずの筋肉を自慢気に披露する永倉さん。
「そうだな…平和になったからって、だらけ過ぎなんだよお前」
原田さんは二人を横目に、呆れたように呟いた。
「左之さん…つーか、新八っつぁんは肉体自慢したいだけだろーよ!」
昔と変わらない遣り取り。
京の屯所で、皆と過ごした楽しい日々を思い出す。
「今更だが、皆無事で…本当に良かった…トシありがとう」
毎年、同じ事を口にする近藤さん。
「おいおい近藤さん、やめてくれよ…俺達は、あんたに感謝される為に…生きて帰ってきたんじゃねぇんだ」
肩を落とし、溜息を吐く土方さん。
「副長の言う通りです…局長こそ、生きていてくれて良かったと、俺は今でも思っています」
斎藤さんの言葉に、土方さんも、近藤さんも嬉しそうに微笑んだ。
「さぁ用意出来ましたよ!皆、行きましょう」
千鶴の掛け声で、皆が一斉に小屋の外へ、歩を進める。
満開に咲き誇る、桜の木の下。
堂々たる姿で立ち続ける、一本の刀。
そこは、井上 源三郎 の墓。
「ただいま…井上さん…」
皆で揃って手を合わせ、亡き彼への想いを馳せる。
「此処から見える景色は、あの頃とはすっかり変わってしまいましたね…」
京が見渡せる丘の上、時代と共に変わって逝く景色を、ぼんやりと眺める。
「ゆき…周りを見てみろ」
そっと肩へ手を添え、私を促す千景さん。
言わるままに、辺りを見回した。
満開の桜の下、何時までも変わらない皆の笑顔。
「ゆき…案ずるな…俺も、お前の周りにいる人間も、この桜も、変わらないものが、ここに在る」
"変わらないものこそ、信じるべきもの"
いつか、斎藤さんが言っていた言葉が頭を過る。
「千景さん…その通りです…私達の心は変わらない…つい、無駄な事を考えてしまいました」
いつだって、大切な事を教えてくれる皆の傍で。
「さぁ、お花見を始めましょう!」
料理を囲み、酒を煽りながら、昔の思い出話に花を咲かす。
此れから先、幾つ時代が巡ろうと。
変わることの無い、誠の旗が風に揺らめく。
時代の徒花が咲き誇る。
『新撰組』
散り逝く運命だった男達は、今も此の場所で生きている。
気高く、他に媚びず、誇り高く。
純粋に、貫き通した剣の道を。
ー完ー
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