終焉の刻
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仙台へ辿り着いた頃、城下では辻斬りが出没していた。
嘘か真か、"犯人は仙台城へ出入りしている" と囁かれる。
風間さんと共に、新撰組へ合流し、土方さん達に真相を問うと、仙台へ来てから、山南さん率いる羅刹隊と、平助君の消息が不明になっている事が明かされた。
「辻斬りの件…うちの羅刹隊じゃねぇだろうな…」
不安げに呟く土方さん。
「副長…! 山南さんが新政府軍に寝返ったかもしれません…綱道と共に、仙台城に出入りする山南さんを見たという人が、城下町に何名かいます…」
偵察に出ていた、山崎さんからの報告。
「そんな…まさか…」
噂は、耳を疑うものだった。
「俺は薩摩藩に属する鬼…ゆき、綱道がそこにいるやも知れぬ…俺と一緒に来い…俺なら城への侵入も容易い」
協力を申し出てくれた風間さん。
「私、行きます…山南さんの、真意を確かめたいです…」
土方さんは眉間に皺を寄せ、険しい表情を浮かべている。
「俺も連れて行ってくれ…山南さんも平助も、俺の大切な仲間だ…もし本当に寝返ったなら…ぶん殴ってでも連れ戻してぇ」
風間さんは、僅かに笑むと、静かに立ち上がった。
「貴様の好きにすればいい…ついて来たければ、勝手について来い…」
力強く頷いた土方さんは、彼の後に続いて、屋敷を後にした。
同日、深夜。
じっと息を潜め、闇へ紛れる私と土方さん。
門番と話をする、男の合図を待っていた。
「通っていいそうだ…行くぞ」
どんな手を使ったのか、不審がる兵士もおらず、すんなりと城の広間まで、侵入を許された私達。
広間の中央まで歩いた所で、足を止めた。
此方を振り返ることなく、正座する山南さん。
そして、その正面に鎮座する男。
「嘘…なん…で…」
私達は、言葉を失った。
「そろそろ…来る頃かと思っていましたよ」
落ち着いた様子で、静かに口を動かす男。
「城下の辻斬りは…あんたの仕業か?」
土方さんは、冷たく問う。
「いいえ…暴走する羅刹を斬った事ありますが、辻斬りは決して…」
瞼を閉じ、首を横に振る山南さん。
「なら何で…俺たちへの連絡を怠った…それに何故…綱道と一緒にいるんだ…」
溜息を吐き、男は視線を此方に向けた。
「仙台に、貴方達が求めるものはありません…奥羽同盟は戦争回避を目論んでいます…会津の惨敗に怖気づいたのでしょう…」
見た事も無い程、冷たい表情を浮かべている。
「敵を探るうちに…私は綱道さんが、新政府軍に不満を持っている事を知りました…そこで、私は彼と手を結び、彼の目指す鬼の王国と、我々羅刹隊の共存を目指すことにしたのです」
信じられない。
まるで、私の知ってる山南さんじゃない。
「なんだと…」
土方さんの肩が、震えている。
「そして、この城に乗り込み…仙台を掌握するに至りました」
男が語り終えたその瞬間、現れたのは、広間を囲う大勢の羅刹。
「この国全ての羅刹が…ここに集結しています…新政府軍を確実に打ち倒せるだけの最終兵器になります…どうです土方さん…この羅刹たちを率いて共に新政府軍と戦うつもりはありませんか?」
武士として、真っ直ぐに生きてきた土方さんが、そんな誘いに乗る事など、ある筈がない。
「俺たちの戦に…羅刹隊は必要ねえ…」
決別。
私の頬を、涙が伝った。
「…では仕方ありませんね」
互いに刀を抜き、対峙する山南さんと、土方さん。
「戦うことしか出来ない私たち羅刹に…戦いの場も残されていないというなら…」
そう呟いた瞬間、山南さんは刀を振り上げ、一刀のもとに羅刹の一人を切り伏せた。
「ここで終わりにしてやるのが…せめてもの情けというものでしょう」
広間が静まり返り、一拍の間をおいて我に返った羅刹達は、殺されると感じ取ったのか、自ら抜刀し剣を構えた。
「何故だ山南君…!」
一番の焦りを見せたのは、今までその場に鎮座し、お茶を啜る余裕すら見せていた 雪村 綱道 だった。
「申し訳ありません綱道さん…新撰組の副長命令は絶対なものですから」
口角を上げる、土方さん。
「寝返った訳じゃねぇみたいだな…」
瞬間、男の背後から現れた人影。
「ゆき、無事だったか!」
緊張が嘘のように溶け、頬が緩むのを感じる。
「 "敵を欺くにはまず味方から" と…」
羅刹化した山南さん。
「山南さん、格好つけすぎだって」
面白そうに笑う平助君も、続けて羅刹と化した。
「では…行きますよ!」
一人、また一人と、敵を斬り伏せていく二人。
「やめろ…やめてくれ…!羅刹がいなくては私の計画が無駄になってしまう…!」
土方さんも加わり、次々と斬り捨てられる羅刹達を見て、絶望する綱道。
「貴様…先程から聞いていたが、計画だの鬼の王国だの…一体何をするつもりだ」
これ迄、黙って見ていた風間さんが、口を開き、彼に真意を問う。
「総本家の鬼など、絶やしてしまえばいいと…薫が言っていただろう…ゆき、いや…一ノ瀬 千冬 …お前の親は娘可愛さに、本家の鬼と悟られないよう…お前を"ゆき"という愛称で呼んでいた」
私を睨み、綱道は言葉を続ける。
「お前も…お前の両親も俺にとっては邪魔なだけだった…雪村に女鬼が産まれた時から、千鶴を使い、俺が総本家の頭領となる為に…いろんな手を使った…お前が生き残ったのは計算違いだったよ…態々、お前達がいる間に里を襲わせたのに…役立たずな連中だ」
信じられない程に、非道な言葉を綴る綱道。
私は、自らに湧き上がる怒りと、殺意を必死に抑えていた。
「貴方が人間に指示したんですね…里を…両親を…皆を殺せと…」
自分勝手な欲望の為。
「そうだ…だが計画は失敗だ…薫も、役には立たなかったようだな…お前を殺して、千鶴を迎えに行くまで成功とはいえんのだよ」
薫の死すら、綱道によって操られていたものと知った私は、涙を堪えることが出来なかった。
「覚悟を決める暇すら…与える価値もない非道な男…両親の無念、同胞の無念、そして…薫君の無念も…この手で晴らしてみせます」
剣を抜き、構える事すらせずに、綱道へ斬りかかる。
冷静さを失い、浸すら撃ち込む私の剣筋を巧みに避け、嘲笑う非道な男。
転がる羅刹の死体に躓いた瞬間、彼の身体を抑えつけた風間さん。
「何だ…!西の里の…お前には関係のない話だろう!離せ!」
逃れようと暴れる綱道を冷酷な瞳で見遣り、静かに口を開く。
「ゆき、こんな下衆な男の為にお前が、手を汚す事はない…」
彼の優しさに、甘えてしまったら、いずれ後悔する。
「…半分、私の痛みを背負ってくださいますか…」
骨張った彼の手の甲に、そっと自身の掌を重ね、問い掛ける。
「当然だ…」
それなら、一緒に。
散り逝く間際、目に涙を溜め、命を乞うていた綱道。
悲しむであろう、千鶴の顔を想い浮かべながら、風間さんと共に彼の心臓に刀を突き立てた。
「新撰組は…多大な兵力を失ってしまいましたね…今後の戦いは、勝ち抜けると思いますか?」
全ての羅刹を倒し、静けさを取り戻した広間で、山南さんが問いかける。
「負けるつもりで戦う奴はいねえよ」
土方さんは、自信に満ちた言葉を口にする。
「土方さんは負けず嫌いだからな」
彼の答えに、満足げに微笑む平助君。
「私たちは時代の仇花…羅刹は生み出されてはならないものでした…」
穏やかな表情を浮かべ、刀を納める男達。
「土方さんとは互いに反目することもありました…でも、貴方の事は認めていましたよ…新撰組で貴方と共に戦えたこと…誇りに思います…」
身を翻した山南さんは、背を向けたまま言葉を続け、口を動かした。
「ああ、俺もだ山南さん」
彼の背を軽く叩き、微笑む土方さん。
「土方さん…感謝してるよ…一度は離隊した俺を受け入れてくれて…」
俯いた平助君は、小さな声で呟いた。
「俺だけじゃねえ…みんな心配していたさ…お前は、若くて単純で熱くなりやすくて…」
そんな彼を、土方さんは優しく見つめる。
「…少しは役に立ったかな…俺」
顔を上げ、首を傾げる平助君。
「まだ、お前達の力が必要だ…最期までついて来てくれるか…」
土方さん、やっぱり貴方は凄い人です。
「当たり前です」
力一杯、頷いた私。
「俺も最期まで付き合うぜ!」
平助君も手を上げ、山南さんも静かに頷いた。
こうして、仙台城は無事、 雪村 綱道 の制圧下から開放される。
けれど、仙台藩が新政府軍への恭順の姿勢を変えることはなく、本州決戦を諦めた旧幕府軍は、海峡を渡り蝦夷地へ向かう事となった。
「ゆき、お前は戦いから離れろ…蝦夷地への同行は許さん」
冷たい風が、私と新撰組の間を分かつ様に、激しく吹き抜ける。
「何故ですか…?」
納得なんて、出来る筈がない。
「これ以上俺たちに縛られるな…お前は、お前の愛する男と、未来を生きろ…これは新撰組 副長としての命令だ」
彼らは私を冷たく突き放し、背を向け、歩き出した。
冬の厳しい寒さが船を揺らす。
彼らを乗せた船体が、遥か彼方へ消えた後も、その場を動けずにいた私。
そんな私の肩に手を添え、柔らかな笑みを浮かべる風間さん。
鬼達の里へ戻る前に、私達は江戸へ引き返す事にした。
新撰組の未来を見届ける為。
千鶴に全てを伝える為に。
嘘か真か、"犯人は仙台城へ出入りしている" と囁かれる。
風間さんと共に、新撰組へ合流し、土方さん達に真相を問うと、仙台へ来てから、山南さん率いる羅刹隊と、平助君の消息が不明になっている事が明かされた。
「辻斬りの件…うちの羅刹隊じゃねぇだろうな…」
不安げに呟く土方さん。
「副長…! 山南さんが新政府軍に寝返ったかもしれません…綱道と共に、仙台城に出入りする山南さんを見たという人が、城下町に何名かいます…」
偵察に出ていた、山崎さんからの報告。
「そんな…まさか…」
噂は、耳を疑うものだった。
「俺は薩摩藩に属する鬼…ゆき、綱道がそこにいるやも知れぬ…俺と一緒に来い…俺なら城への侵入も容易い」
協力を申し出てくれた風間さん。
「私、行きます…山南さんの、真意を確かめたいです…」
土方さんは眉間に皺を寄せ、険しい表情を浮かべている。
「俺も連れて行ってくれ…山南さんも平助も、俺の大切な仲間だ…もし本当に寝返ったなら…ぶん殴ってでも連れ戻してぇ」
風間さんは、僅かに笑むと、静かに立ち上がった。
「貴様の好きにすればいい…ついて来たければ、勝手について来い…」
力強く頷いた土方さんは、彼の後に続いて、屋敷を後にした。
同日、深夜。
じっと息を潜め、闇へ紛れる私と土方さん。
門番と話をする、男の合図を待っていた。
「通っていいそうだ…行くぞ」
どんな手を使ったのか、不審がる兵士もおらず、すんなりと城の広間まで、侵入を許された私達。
広間の中央まで歩いた所で、足を止めた。
此方を振り返ることなく、正座する山南さん。
そして、その正面に鎮座する男。
「嘘…なん…で…」
私達は、言葉を失った。
「そろそろ…来る頃かと思っていましたよ」
落ち着いた様子で、静かに口を動かす男。
「城下の辻斬りは…あんたの仕業か?」
土方さんは、冷たく問う。
「いいえ…暴走する羅刹を斬った事ありますが、辻斬りは決して…」
瞼を閉じ、首を横に振る山南さん。
「なら何で…俺たちへの連絡を怠った…それに何故…綱道と一緒にいるんだ…」
溜息を吐き、男は視線を此方に向けた。
「仙台に、貴方達が求めるものはありません…奥羽同盟は戦争回避を目論んでいます…会津の惨敗に怖気づいたのでしょう…」
見た事も無い程、冷たい表情を浮かべている。
「敵を探るうちに…私は綱道さんが、新政府軍に不満を持っている事を知りました…そこで、私は彼と手を結び、彼の目指す鬼の王国と、我々羅刹隊の共存を目指すことにしたのです」
信じられない。
まるで、私の知ってる山南さんじゃない。
「なんだと…」
土方さんの肩が、震えている。
「そして、この城に乗り込み…仙台を掌握するに至りました」
男が語り終えたその瞬間、現れたのは、広間を囲う大勢の羅刹。
「この国全ての羅刹が…ここに集結しています…新政府軍を確実に打ち倒せるだけの最終兵器になります…どうです土方さん…この羅刹たちを率いて共に新政府軍と戦うつもりはありませんか?」
武士として、真っ直ぐに生きてきた土方さんが、そんな誘いに乗る事など、ある筈がない。
「俺たちの戦に…羅刹隊は必要ねえ…」
決別。
私の頬を、涙が伝った。
「…では仕方ありませんね」
互いに刀を抜き、対峙する山南さんと、土方さん。
「戦うことしか出来ない私たち羅刹に…戦いの場も残されていないというなら…」
そう呟いた瞬間、山南さんは刀を振り上げ、一刀のもとに羅刹の一人を切り伏せた。
「ここで終わりにしてやるのが…せめてもの情けというものでしょう」
広間が静まり返り、一拍の間をおいて我に返った羅刹達は、殺されると感じ取ったのか、自ら抜刀し剣を構えた。
「何故だ山南君…!」
一番の焦りを見せたのは、今までその場に鎮座し、お茶を啜る余裕すら見せていた 雪村 綱道 だった。
「申し訳ありません綱道さん…新撰組の副長命令は絶対なものですから」
口角を上げる、土方さん。
「寝返った訳じゃねぇみたいだな…」
瞬間、男の背後から現れた人影。
「ゆき、無事だったか!」
緊張が嘘のように溶け、頬が緩むのを感じる。
「 "敵を欺くにはまず味方から" と…」
羅刹化した山南さん。
「山南さん、格好つけすぎだって」
面白そうに笑う平助君も、続けて羅刹と化した。
「では…行きますよ!」
一人、また一人と、敵を斬り伏せていく二人。
「やめろ…やめてくれ…!羅刹がいなくては私の計画が無駄になってしまう…!」
土方さんも加わり、次々と斬り捨てられる羅刹達を見て、絶望する綱道。
「貴様…先程から聞いていたが、計画だの鬼の王国だの…一体何をするつもりだ」
これ迄、黙って見ていた風間さんが、口を開き、彼に真意を問う。
「総本家の鬼など、絶やしてしまえばいいと…薫が言っていただろう…ゆき、いや…一ノ瀬 千冬 …お前の親は娘可愛さに、本家の鬼と悟られないよう…お前を"ゆき"という愛称で呼んでいた」
私を睨み、綱道は言葉を続ける。
「お前も…お前の両親も俺にとっては邪魔なだけだった…雪村に女鬼が産まれた時から、千鶴を使い、俺が総本家の頭領となる為に…いろんな手を使った…お前が生き残ったのは計算違いだったよ…態々、お前達がいる間に里を襲わせたのに…役立たずな連中だ」
信じられない程に、非道な言葉を綴る綱道。
私は、自らに湧き上がる怒りと、殺意を必死に抑えていた。
「貴方が人間に指示したんですね…里を…両親を…皆を殺せと…」
自分勝手な欲望の為。
「そうだ…だが計画は失敗だ…薫も、役には立たなかったようだな…お前を殺して、千鶴を迎えに行くまで成功とはいえんのだよ」
薫の死すら、綱道によって操られていたものと知った私は、涙を堪えることが出来なかった。
「覚悟を決める暇すら…与える価値もない非道な男…両親の無念、同胞の無念、そして…薫君の無念も…この手で晴らしてみせます」
剣を抜き、構える事すらせずに、綱道へ斬りかかる。
冷静さを失い、浸すら撃ち込む私の剣筋を巧みに避け、嘲笑う非道な男。
転がる羅刹の死体に躓いた瞬間、彼の身体を抑えつけた風間さん。
「何だ…!西の里の…お前には関係のない話だろう!離せ!」
逃れようと暴れる綱道を冷酷な瞳で見遣り、静かに口を開く。
「ゆき、こんな下衆な男の為にお前が、手を汚す事はない…」
彼の優しさに、甘えてしまったら、いずれ後悔する。
「…半分、私の痛みを背負ってくださいますか…」
骨張った彼の手の甲に、そっと自身の掌を重ね、問い掛ける。
「当然だ…」
それなら、一緒に。
散り逝く間際、目に涙を溜め、命を乞うていた綱道。
悲しむであろう、千鶴の顔を想い浮かべながら、風間さんと共に彼の心臓に刀を突き立てた。
「新撰組は…多大な兵力を失ってしまいましたね…今後の戦いは、勝ち抜けると思いますか?」
全ての羅刹を倒し、静けさを取り戻した広間で、山南さんが問いかける。
「負けるつもりで戦う奴はいねえよ」
土方さんは、自信に満ちた言葉を口にする。
「土方さんは負けず嫌いだからな」
彼の答えに、満足げに微笑む平助君。
「私たちは時代の仇花…羅刹は生み出されてはならないものでした…」
穏やかな表情を浮かべ、刀を納める男達。
「土方さんとは互いに反目することもありました…でも、貴方の事は認めていましたよ…新撰組で貴方と共に戦えたこと…誇りに思います…」
身を翻した山南さんは、背を向けたまま言葉を続け、口を動かした。
「ああ、俺もだ山南さん」
彼の背を軽く叩き、微笑む土方さん。
「土方さん…感謝してるよ…一度は離隊した俺を受け入れてくれて…」
俯いた平助君は、小さな声で呟いた。
「俺だけじゃねえ…みんな心配していたさ…お前は、若くて単純で熱くなりやすくて…」
そんな彼を、土方さんは優しく見つめる。
「…少しは役に立ったかな…俺」
顔を上げ、首を傾げる平助君。
「まだ、お前達の力が必要だ…最期までついて来てくれるか…」
土方さん、やっぱり貴方は凄い人です。
「当たり前です」
力一杯、頷いた私。
「俺も最期まで付き合うぜ!」
平助君も手を上げ、山南さんも静かに頷いた。
こうして、仙台城は無事、 雪村 綱道 の制圧下から開放される。
けれど、仙台藩が新政府軍への恭順の姿勢を変えることはなく、本州決戦を諦めた旧幕府軍は、海峡を渡り蝦夷地へ向かう事となった。
「ゆき、お前は戦いから離れろ…蝦夷地への同行は許さん」
冷たい風が、私と新撰組の間を分かつ様に、激しく吹き抜ける。
「何故ですか…?」
納得なんて、出来る筈がない。
「これ以上俺たちに縛られるな…お前は、お前の愛する男と、未来を生きろ…これは新撰組 副長としての命令だ」
彼らは私を冷たく突き放し、背を向け、歩き出した。
冬の厳しい寒さが船を揺らす。
彼らを乗せた船体が、遥か彼方へ消えた後も、その場を動けずにいた私。
そんな私の肩に手を添え、柔らかな笑みを浮かべる風間さん。
鬼達の里へ戻る前に、私達は江戸へ引き返す事にした。
新撰組の未来を見届ける為。
千鶴に全てを伝える為に。