終焉の刻
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「凄い数の羅刹だね…一君どうする?」
“南雲 薫” の置土産に、顔を顰める私達。
「ここで話していても数は減らん…行くぞ」
斎藤さんの号令を合図に、三人は同時に、押し寄せる羅刹の波に飛び込んで行った。
「面倒臭いなあ…!」
戦闘能力は、人間よりも遙に高く、加えて心臓を貫くか、首を落とさない限り、倒れないのが彼等の特徴。
時間を要する上に、数が多すぎて埒があかない状況に、私達は憤りを感じていた。
「人として戦うには、もう…限界か…」
呟いた、男の手に握られるのは、紅い液体の入った小瓶。
彼は、その液体を躊躇なく飲み干し、その場に張り付いた。
「斎藤さん…!」
次々と敵が襲い来る中、傍に駆け寄る事も出来ない私。
男は、空を見上げ口を開いた。
「大丈夫だ…例え羅刹に成り果てようと、己の信念は何も変わらん…この刀で敵を斬り、そしていつの日か俺が斬られ、剣に倒れる…人でなくなった今も、誠の旗は、俺に武士とは何かを教えてくれる」
その言葉に、口角を上げる沖田さん。
「当たり前だよ…羅刹だろうと、人だろうと…君は君なんだから」
敵を斬り伏せながら、ゆっくりと歩み寄り、彼の隣に並ぶ。
「一君と共闘なんて久しぶりだね…昔を思い出すよ」
こんな状況で、嬉しそうに笑う男を、横目に見遣り、僅かに微笑んだ斎藤さん。
敵に向かい、凛と言葉を放つ。
「新撰組 三番組 組長 斎藤 一 …誠の旗に誓ってここから先は通さん!」
二人の凛々しい姿を視界に捉え、私は息を呑んだ。
彼等の背に、重なり視える幻。
浅葱色の羽織が夜風に舞い、浮かぶ誠の一文字。
懐かしい幻影に、思わず目尻が熱くなる。
「何を泣いている…勝機はまだ見えておらんぞ、ゆき」
突然現れたその人は、私の頬を優しく包み、零れ落ちる一筋の雫を、そっと拭い払ってくれた。
「どうしてここに…」
男の手に、自身の掌を重ね、潤んだ瞳で彼を見上げる。
「愚問だな…ゆき…お前を守る為…それ以外に何の理由がある…」
もう何度、この愛しい人に救われたのだろう。
重ねる私の手を引き寄せ、優しく口付けを落とす風間さん。
唇を離し、私を片腕に収めた彼は、羅刹たちを鋭く睨みつけた。
「紛い物無勢が…幾ら束になろうと…この俺の敵ではない」
力を開放した男は、私達を取り囲んでいた羅刹を全て一掃し、低い声で呟く。
「正気すら、失った虫けら以下の紛い物の分際で…この俺の手を煩わせるな…」
唖然とする斎藤さんと、沖田さん。
彼らの視線を余所に、敵が列を成す道の、その真ん中を堂々と歩む風間さん。
私は急いで、その歩みに寄り添い、微笑んだ。
「貴方の隣で、私は誓いを果たし、新撰組の未来を見届けたいです…」
彼も、後ろで立ち尽くしていた二人も、私の言葉に目を細め、穏やかな笑みを浮かべる。
歩む道の左右に、次々と積み重なって逝く羅刹達。
朝日が登り始めた頃、会津での死闘は私達の勝利で幕を閉じた。
“南雲 薫” の置土産に、顔を顰める私達。
「ここで話していても数は減らん…行くぞ」
斎藤さんの号令を合図に、三人は同時に、押し寄せる羅刹の波に飛び込んで行った。
「面倒臭いなあ…!」
戦闘能力は、人間よりも遙に高く、加えて心臓を貫くか、首を落とさない限り、倒れないのが彼等の特徴。
時間を要する上に、数が多すぎて埒があかない状況に、私達は憤りを感じていた。
「人として戦うには、もう…限界か…」
呟いた、男の手に握られるのは、紅い液体の入った小瓶。
彼は、その液体を躊躇なく飲み干し、その場に張り付いた。
「斎藤さん…!」
次々と敵が襲い来る中、傍に駆け寄る事も出来ない私。
男は、空を見上げ口を開いた。
「大丈夫だ…例え羅刹に成り果てようと、己の信念は何も変わらん…この刀で敵を斬り、そしていつの日か俺が斬られ、剣に倒れる…人でなくなった今も、誠の旗は、俺に武士とは何かを教えてくれる」
その言葉に、口角を上げる沖田さん。
「当たり前だよ…羅刹だろうと、人だろうと…君は君なんだから」
敵を斬り伏せながら、ゆっくりと歩み寄り、彼の隣に並ぶ。
「一君と共闘なんて久しぶりだね…昔を思い出すよ」
こんな状況で、嬉しそうに笑う男を、横目に見遣り、僅かに微笑んだ斎藤さん。
敵に向かい、凛と言葉を放つ。
「新撰組 三番組 組長 斎藤 一 …誠の旗に誓ってここから先は通さん!」
二人の凛々しい姿を視界に捉え、私は息を呑んだ。
彼等の背に、重なり視える幻。
浅葱色の羽織が夜風に舞い、浮かぶ誠の一文字。
懐かしい幻影に、思わず目尻が熱くなる。
「何を泣いている…勝機はまだ見えておらんぞ、ゆき」
突然現れたその人は、私の頬を優しく包み、零れ落ちる一筋の雫を、そっと拭い払ってくれた。
「どうしてここに…」
男の手に、自身の掌を重ね、潤んだ瞳で彼を見上げる。
「愚問だな…ゆき…お前を守る為…それ以外に何の理由がある…」
もう何度、この愛しい人に救われたのだろう。
重ねる私の手を引き寄せ、優しく口付けを落とす風間さん。
唇を離し、私を片腕に収めた彼は、羅刹たちを鋭く睨みつけた。
「紛い物無勢が…幾ら束になろうと…この俺の敵ではない」
力を開放した男は、私達を取り囲んでいた羅刹を全て一掃し、低い声で呟く。
「正気すら、失った虫けら以下の紛い物の分際で…この俺の手を煩わせるな…」
唖然とする斎藤さんと、沖田さん。
彼らの視線を余所に、敵が列を成す道の、その真ん中を堂々と歩む風間さん。
私は急いで、その歩みに寄り添い、微笑んだ。
「貴方の隣で、私は誓いを果たし、新撰組の未来を見届けたいです…」
彼も、後ろで立ち尽くしていた二人も、私の言葉に目を細め、穏やかな笑みを浮かべる。
歩む道の左右に、次々と積み重なって逝く羅刹達。
朝日が登り始めた頃、会津での死闘は私達の勝利で幕を閉じた。