終焉の刻
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「ゆき、何をしている…早く追わねば置いて行かれるぞ」
斎藤さんは、怪訝そうな顔で忠告する。
「あなたと共に…私は、ここで戦います」
彼に背を向け、応える私。
「何を言っている!駄目だ、早く皆を追いかけろ!」
焦る彼の前に、差し出したいつかの簪。
「覚えていますか…」
今でも、瞼を閉じれば聴こえる祭囃子。
「私は長い間、男の姿で暮らしてきました…そんな私に、貴方がこの簪を贈ってくれた事で、初めて女として認められた気がして、本当に嬉しかったんです…」
少し照れながら、あの日の想いを口にする。
「ならば…余計にお前は残るべきではない…すぐに土方さん達を追え…」
そんな私を、突き放すように、冷たく言葉を放つ斎藤さん。
「ここに貴方を残して行けば…私は、この簪を見る度に、後悔する事になります」
丁寧に布に包み、簪を懐に戻した私。
「貴方が掲げる誠の旗を、私にも半分持たせてください」
強い瞳で、彼を見据える。
「ゆき…」
漸く、折れた様子の斎藤さんは、静かに口を開いた。
「ずっと…それがいつからなのか…自分でもわからない…ただ、気がついた時には既に手遅れだった…」
優しく私を包むと、男は耳元で小さく囁いた。
「好きだ…ゆき、もうずっと…お前を想っている」
切なくて、苦しい。
気が付くと、自然に涙が溢れていた。
「斎藤さん…私は…」
強い力で、彼を押し返す私。
「ただ、想いを伝えたかった…それだけだ…お前が幸せなら、俺はそれでいい」
穏やかな微笑みを浮かべる、斎藤さん。
その瞬間、私達の前に突如現れた人影。
「盗み聞きするつもりはなかったんだけど、一君て本当、格好良いよね…妬けるよ」
近くの木に寄り掛かり、此方を眺めていたのは、沖田さんだった。
「総司…」
新撰組は、既に撤退した筈。
「沖田さん…何故…」
罰の悪そうな表情を浮かべ、緩りと此方に歩み寄る沖田さん。
「何故って…君を守るために決まってるでしょ、ゆきちゃん」
私の頭に掌を乗せ、隣に立つ男を横目に見遣る。
「総司…」
そんな彼の姿を映し、静かな怒りを顕にした斎藤さん。
「冗談だよ、冗談…全く、一君は真面目だね…僕だって、最期まで剣を振って戦いたいんだよ…君達だけ残るなんて、狡いよ」
沖田さんは肩を竦め、後を振り向いた。
「僕は必ず…君達を、近藤さんの元へ連れて帰る」
紛れもない、彼の本音。
「総司…ゆき、無事でいられるなんて保証はできないが、それでも…俺と共に最期まで戦ってくれるか」
私達は、口角を上げる。
「当たり前だよ…一君、僕は必ず最期まで近藤さんの、僕達の…誠の旗を背負って、戦ってみせるよ」
真上に登った太陽が、旗を照らす。
「はい…私も貴方達と共に、必ず最期まで戦い抜くと、誠の旗の下に誓います」
光の下、三つの掌を重ね合い、誓った想い。
誠の旗を空高く掲げ、今、戦場へと歩き出した。
斎藤さんは、怪訝そうな顔で忠告する。
「あなたと共に…私は、ここで戦います」
彼に背を向け、応える私。
「何を言っている!駄目だ、早く皆を追いかけろ!」
焦る彼の前に、差し出したいつかの簪。
「覚えていますか…」
今でも、瞼を閉じれば聴こえる祭囃子。
「私は長い間、男の姿で暮らしてきました…そんな私に、貴方がこの簪を贈ってくれた事で、初めて女として認められた気がして、本当に嬉しかったんです…」
少し照れながら、あの日の想いを口にする。
「ならば…余計にお前は残るべきではない…すぐに土方さん達を追え…」
そんな私を、突き放すように、冷たく言葉を放つ斎藤さん。
「ここに貴方を残して行けば…私は、この簪を見る度に、後悔する事になります」
丁寧に布に包み、簪を懐に戻した私。
「貴方が掲げる誠の旗を、私にも半分持たせてください」
強い瞳で、彼を見据える。
「ゆき…」
漸く、折れた様子の斎藤さんは、静かに口を開いた。
「ずっと…それがいつからなのか…自分でもわからない…ただ、気がついた時には既に手遅れだった…」
優しく私を包むと、男は耳元で小さく囁いた。
「好きだ…ゆき、もうずっと…お前を想っている」
切なくて、苦しい。
気が付くと、自然に涙が溢れていた。
「斎藤さん…私は…」
強い力で、彼を押し返す私。
「ただ、想いを伝えたかった…それだけだ…お前が幸せなら、俺はそれでいい」
穏やかな微笑みを浮かべる、斎藤さん。
その瞬間、私達の前に突如現れた人影。
「盗み聞きするつもりはなかったんだけど、一君て本当、格好良いよね…妬けるよ」
近くの木に寄り掛かり、此方を眺めていたのは、沖田さんだった。
「総司…」
新撰組は、既に撤退した筈。
「沖田さん…何故…」
罰の悪そうな表情を浮かべ、緩りと此方に歩み寄る沖田さん。
「何故って…君を守るために決まってるでしょ、ゆきちゃん」
私の頭に掌を乗せ、隣に立つ男を横目に見遣る。
「総司…」
そんな彼の姿を映し、静かな怒りを顕にした斎藤さん。
「冗談だよ、冗談…全く、一君は真面目だね…僕だって、最期まで剣を振って戦いたいんだよ…君達だけ残るなんて、狡いよ」
沖田さんは肩を竦め、後を振り向いた。
「僕は必ず…君達を、近藤さんの元へ連れて帰る」
紛れもない、彼の本音。
「総司…ゆき、無事でいられるなんて保証はできないが、それでも…俺と共に最期まで戦ってくれるか」
私達は、口角を上げる。
「当たり前だよ…一君、僕は必ず最期まで近藤さんの、僕達の…誠の旗を背負って、戦ってみせるよ」
真上に登った太陽が、旗を照らす。
「はい…私も貴方達と共に、必ず最期まで戦い抜くと、誠の旗の下に誓います」
光の下、三つの掌を重ね合い、誓った想い。
誠の旗を空高く掲げ、今、戦場へと歩き出した。