終焉の刻
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異様な雰囲気の中、静かな山道を歩く私達。
「お前、本当にこんなところに住んでたのか?」
周囲を何度も見回しながら、不知火さんが問う。
「はい…もう少しで着くはずです」
江戸から少し離れた、山の奥深く。
「ここです…」
森の奥に隠れる様に建つ、一軒の家屋に到着した。
扉に手を掛けると、中から現れた懐かしい顔。
「ゆき…! ゆきじゃないか…」
涙を零し、私を抱き締める育ての親。
私は二人に、戻って来た理由を語った。
「何もない所だけど…好きなだけ居るといいよ」
優しく微笑み、知りもしない筈の男を、受け入れてくれた夫婦。
「突然押しかけて…何と言ったらいいのか…」
近藤さんは、彼らに深く頭を下げ、礼を延べた。
「宜しくお願いします」
近藤さんを二人に預け、新撰組の後を追い掛って、私達は江戸へと向かった。
「先程の御老人、どこかで見た覚えがある…」
難しい顔で、頭を悩ませる天霧さん。
「まぁ…そのうち思い出すだろ、俺様は用があるんで先に行くぜ!ゆき、あんまり心配かけるなよ!」
江戸へ差し掛かる少し手前で、去って行った不知火さん。
「有難う御座いました…」
姿が見えなくなるまで、私は彼の背中に頭を下げた。
「さて…土方さん達を見つけるよ」
以前屯所が在った方角へ、足早に歩を進める沖田さん。
「待って…沖田さん…!」
私は必死で、彼の後ろを付いて歩いた。
「お待ちしていました」
突然降ってきた声に、驚き立ち竦む。
声の主は、一人江戸に残り、敵の動向を探っていた、山崎さんだった。
「お二人ともよくご無事で…副長達の所まで、お連れします」
安堵の表情を浮かべる私達。
先を歩く男を、追いかけようとした時、不意に腕を引かれた。
「俺達は一度、江戸を離れる」
私を見つめる、紅い双眼。
「風間さん…助けに来てくれて、本当に有難うございました」
名残惜しい気持ちを捨てて、別れの挨拶を交わす。
「ゆき…無理はするな」
心配してくれる風間さんに、大きく頷いた私。
「あなた方も…どうかご無事で…」
僅かな笑みを浮かべた男は、天霧さんを連れ、賑やかな江戸の町へと、溶けていった。
無事、新撰組に合流した私達。
彼らに、近藤さんの無事を伝えると、皆歓喜の涙を流して喜んだ。
「総司…ゆき…すまなかった」
頭を下げる副長を、慌てて止める。
「辞めてください!もし…近藤さんに何かあった場合、貴方まで失ってしまえば、新撰組はそれこそ終わりです…あの時、他に方法なんて…ありませんでした」
悔しそうに下唇を噛み、顔を上げた男。
「まぁ僕は…珍しい土方さんが見れて、面白いけどね」
普段と変わらない憎まれ口を叩く沖田さん。
呆れた様子の土方さんは、彼を叱った。
「総司、てめぇ…いい加減にしろ!」
他の隊士達は、お腹を抱えて笑い始める。
平穏な時間。
幻であったとしても。
皆と一緒に笑っていたい。
そんな、儚い想いを噛み締めながら、私達は、束の間の幸せな時を過ごした。
「お前、本当にこんなところに住んでたのか?」
周囲を何度も見回しながら、不知火さんが問う。
「はい…もう少しで着くはずです」
江戸から少し離れた、山の奥深く。
「ここです…」
森の奥に隠れる様に建つ、一軒の家屋に到着した。
扉に手を掛けると、中から現れた懐かしい顔。
「ゆき…! ゆきじゃないか…」
涙を零し、私を抱き締める育ての親。
私は二人に、戻って来た理由を語った。
「何もない所だけど…好きなだけ居るといいよ」
優しく微笑み、知りもしない筈の男を、受け入れてくれた夫婦。
「突然押しかけて…何と言ったらいいのか…」
近藤さんは、彼らに深く頭を下げ、礼を延べた。
「宜しくお願いします」
近藤さんを二人に預け、新撰組の後を追い掛って、私達は江戸へと向かった。
「先程の御老人、どこかで見た覚えがある…」
難しい顔で、頭を悩ませる天霧さん。
「まぁ…そのうち思い出すだろ、俺様は用があるんで先に行くぜ!ゆき、あんまり心配かけるなよ!」
江戸へ差し掛かる少し手前で、去って行った不知火さん。
「有難う御座いました…」
姿が見えなくなるまで、私は彼の背中に頭を下げた。
「さて…土方さん達を見つけるよ」
以前屯所が在った方角へ、足早に歩を進める沖田さん。
「待って…沖田さん…!」
私は必死で、彼の後ろを付いて歩いた。
「お待ちしていました」
突然降ってきた声に、驚き立ち竦む。
声の主は、一人江戸に残り、敵の動向を探っていた、山崎さんだった。
「お二人ともよくご無事で…副長達の所まで、お連れします」
安堵の表情を浮かべる私達。
先を歩く男を、追いかけようとした時、不意に腕を引かれた。
「俺達は一度、江戸を離れる」
私を見つめる、紅い双眼。
「風間さん…助けに来てくれて、本当に有難うございました」
名残惜しい気持ちを捨てて、別れの挨拶を交わす。
「ゆき…無理はするな」
心配してくれる風間さんに、大きく頷いた私。
「あなた方も…どうかご無事で…」
僅かな笑みを浮かべた男は、天霧さんを連れ、賑やかな江戸の町へと、溶けていった。
無事、新撰組に合流した私達。
彼らに、近藤さんの無事を伝えると、皆歓喜の涙を流して喜んだ。
「総司…ゆき…すまなかった」
頭を下げる副長を、慌てて止める。
「辞めてください!もし…近藤さんに何かあった場合、貴方まで失ってしまえば、新撰組はそれこそ終わりです…あの時、他に方法なんて…ありませんでした」
悔しそうに下唇を噛み、顔を上げた男。
「まぁ僕は…珍しい土方さんが見れて、面白いけどね」
普段と変わらない憎まれ口を叩く沖田さん。
呆れた様子の土方さんは、彼を叱った。
「総司、てめぇ…いい加減にしろ!」
他の隊士達は、お腹を抱えて笑い始める。
平穏な時間。
幻であったとしても。
皆と一緒に笑っていたい。
そんな、儚い想いを噛み締めながら、私達は、束の間の幸せな時を過ごした。