終焉の刻
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窓際から、敵の様子を探る。
「沖田さん…この部屋に残り、侵入を許してしまった敵から、近藤さんを護ってください」
敵は今にも、屋敷の扉を蹴破ろうとしていた。
「君はいつもそうだね…でも、嫌だよ…僕も行く」
沖田さんは、首を横に振り、剣を抜く。
「この人数です…もし、侵入を許せば近藤さんは…」
口を閉ざした男は、懐から紅い液体が入った小瓶を、ゆっくりと取り出した。
「変若水…それを飲んだら…」
瞼を落とす沖田さん。
「総司…やめてくれ!」
近藤さんの声も、今は届かない。
「止めないでよ…僕は、僕の手で近藤さんを護りたいんだ…だから…ゆきちゃん、君の力を少し借りるよ」
僅かな笑みを浮かべ、彼は小瓶の中身を空にした。
「さぁ、行こうか」
唇を拭い、口角を上げる男。
「総司…!!」
近藤さんの悲痛な声が、背中に響く。
私達は、振り返ることなく、数百の敵の中へ飛び込んで行った。
人で無くなっても、局長を護る事が、彼の“誠”なのなら、私はそれを援護する迄。
「新撰組、一番組組長 沖田 総司… ここから先は一歩も通さないよ…」
二人は、互いの背を預け、剣を構えた。
「同じく、一ノ瀬 ゆき… 大切なモノを守る為、容赦は致しません」
一斉に攻撃を仕掛けてくる敵兵。
私は、彼と初めて出逢った日の事を、思い出しながら剣を振っていた。
浅葱色の羽織に、誠の一文字。
目を閉じれば浮かぶ光景。
沖田さんに助けられ、初めて新撰組の屯所へ入った日の事。
懐かしい幸せな日々が、次々と頭を巡る。
京の見廻り、夏祭りや甘味処、雪遊びに金平糖を渡した時のこと。
鬼だと明かした時、改めて知った皆の暖かさ。
そして、散って逝った隊士達のこと。
その全てを失いたくなくて、私は此処に残る事を決めた。
沖田さんも近藤さんも、皆の元へ必ず連れて帰る。
斬っても、斬っても、途切れる事なく襲ってくる敵。
少しずつ、体力は奪われる。
それでも絶対に、諦めたりしない。
「大丈夫ですか、沖田さん」
背中に感じる、彼の限界。
時間はかけられない。
「何言ってるの、ゆきちゃん…当たり前の事、聞かないでよ」
いつだって、そう。
沖田さんは、強がってばかり。
敵はまだ、半分以上残っている。
「一人も…逃がせなくなりました…」
正体を、隠してる場合じゃない。
「ゆきちゃん…何を…!」
制止する沖田さんを横目に、私は鬼と化した。
驚いた数十の敵が、一斉に襲い掛かって来る。
「沖田さん…!」
彼らは、私を通り抜け、背後の男を狙った。
瞬時に身を翻し、沖田さんの急所を庇う。
隙を見せた私達は、剣を受けきれず、地面に倒れる筈だった。
…が、暫く待っても何も起きない。
不思議に思いながら、閉じた瞼を上げる。
視界には、風に揺れる金色の髪。
「ゆき、無理をすれば赦さんと…言った筈だ」
不機嫌そうに、私を睨む紅い瞳。
「ご無沙汰しております」
そして、彼の隣に降り立った、二人の男。
「お転婆なお姫様だなぁ」
溢れそうになる涙を抑え、立ち尽くす。
「先に片付けるぞ…一人も逃がすな」
風間さんの命じる侭に、残りの敵を瞬時に一掃した鬼達。
只の人など、彼らの敵ではなかった。
「有難う御座います」
私は深く、頭を下げた。
「礼ならこいつに言いな」
ずっと、私を睨み続ける男を、指差す不知火さん。
「風間さん…御免なさい…有難う御座いました」
危険を侵した事を、謝ろうと思った。
それなのに、次の瞬間には、私は彼の温かい腕の中に、閉じ込められていた。
「おいおい…俺らが居る事忘れるなよ…」
半ば呆れた様子の不知火さんだったが、それを気にする様子もない男。
私を抱く腕に、更に力を込めた。
「風間さん…苦しいです…」
少し抵抗してみるが、何の効果もない。
「煩い…これは仕置だ…」
囁く彼に頷き、身を預けた。
「あのさ…そろそろいいかな、近藤さんを匿える場所を探さないと」
沖田さんの言葉に、我に返った私。
恥ずかしさから慌てて飛び退き、居た堪れなくなった私は、近藤さんの元へ急いで向かった。
「君…今の態とやったでしょ」
「…何の事だ」
「ふーん…まぁゆきちゃんも、君を想ってるようだったし…君が下手な事さえしなきゃ、奪ったりしないから安心しなよ」
「貴様…死にたいのか…」
部屋の窓から顔を出すと、何やら不穏な空気を漂わす二人が見えた。
「やめておきなさい…ほら、お二人を呼んでいますよ」
その間を、割るように入る天霧さん。
その顔が、聞いてはいけないと言っている様だったので、何も聞かない事にした。
「沖田さん…この部屋に残り、侵入を許してしまった敵から、近藤さんを護ってください」
敵は今にも、屋敷の扉を蹴破ろうとしていた。
「君はいつもそうだね…でも、嫌だよ…僕も行く」
沖田さんは、首を横に振り、剣を抜く。
「この人数です…もし、侵入を許せば近藤さんは…」
口を閉ざした男は、懐から紅い液体が入った小瓶を、ゆっくりと取り出した。
「変若水…それを飲んだら…」
瞼を落とす沖田さん。
「総司…やめてくれ!」
近藤さんの声も、今は届かない。
「止めないでよ…僕は、僕の手で近藤さんを護りたいんだ…だから…ゆきちゃん、君の力を少し借りるよ」
僅かな笑みを浮かべ、彼は小瓶の中身を空にした。
「さぁ、行こうか」
唇を拭い、口角を上げる男。
「総司…!!」
近藤さんの悲痛な声が、背中に響く。
私達は、振り返ることなく、数百の敵の中へ飛び込んで行った。
人で無くなっても、局長を護る事が、彼の“誠”なのなら、私はそれを援護する迄。
「新撰組、一番組組長 沖田 総司… ここから先は一歩も通さないよ…」
二人は、互いの背を預け、剣を構えた。
「同じく、一ノ瀬 ゆき… 大切なモノを守る為、容赦は致しません」
一斉に攻撃を仕掛けてくる敵兵。
私は、彼と初めて出逢った日の事を、思い出しながら剣を振っていた。
浅葱色の羽織に、誠の一文字。
目を閉じれば浮かぶ光景。
沖田さんに助けられ、初めて新撰組の屯所へ入った日の事。
懐かしい幸せな日々が、次々と頭を巡る。
京の見廻り、夏祭りや甘味処、雪遊びに金平糖を渡した時のこと。
鬼だと明かした時、改めて知った皆の暖かさ。
そして、散って逝った隊士達のこと。
その全てを失いたくなくて、私は此処に残る事を決めた。
沖田さんも近藤さんも、皆の元へ必ず連れて帰る。
斬っても、斬っても、途切れる事なく襲ってくる敵。
少しずつ、体力は奪われる。
それでも絶対に、諦めたりしない。
「大丈夫ですか、沖田さん」
背中に感じる、彼の限界。
時間はかけられない。
「何言ってるの、ゆきちゃん…当たり前の事、聞かないでよ」
いつだって、そう。
沖田さんは、強がってばかり。
敵はまだ、半分以上残っている。
「一人も…逃がせなくなりました…」
正体を、隠してる場合じゃない。
「ゆきちゃん…何を…!」
制止する沖田さんを横目に、私は鬼と化した。
驚いた数十の敵が、一斉に襲い掛かって来る。
「沖田さん…!」
彼らは、私を通り抜け、背後の男を狙った。
瞬時に身を翻し、沖田さんの急所を庇う。
隙を見せた私達は、剣を受けきれず、地面に倒れる筈だった。
…が、暫く待っても何も起きない。
不思議に思いながら、閉じた瞼を上げる。
視界には、風に揺れる金色の髪。
「ゆき、無理をすれば赦さんと…言った筈だ」
不機嫌そうに、私を睨む紅い瞳。
「ご無沙汰しております」
そして、彼の隣に降り立った、二人の男。
「お転婆なお姫様だなぁ」
溢れそうになる涙を抑え、立ち尽くす。
「先に片付けるぞ…一人も逃がすな」
風間さんの命じる侭に、残りの敵を瞬時に一掃した鬼達。
只の人など、彼らの敵ではなかった。
「有難う御座います」
私は深く、頭を下げた。
「礼ならこいつに言いな」
ずっと、私を睨み続ける男を、指差す不知火さん。
「風間さん…御免なさい…有難う御座いました」
危険を侵した事を、謝ろうと思った。
それなのに、次の瞬間には、私は彼の温かい腕の中に、閉じ込められていた。
「おいおい…俺らが居る事忘れるなよ…」
半ば呆れた様子の不知火さんだったが、それを気にする様子もない男。
私を抱く腕に、更に力を込めた。
「風間さん…苦しいです…」
少し抵抗してみるが、何の効果もない。
「煩い…これは仕置だ…」
囁く彼に頷き、身を預けた。
「あのさ…そろそろいいかな、近藤さんを匿える場所を探さないと」
沖田さんの言葉に、我に返った私。
恥ずかしさから慌てて飛び退き、居た堪れなくなった私は、近藤さんの元へ急いで向かった。
「君…今の態とやったでしょ」
「…何の事だ」
「ふーん…まぁゆきちゃんも、君を想ってるようだったし…君が下手な事さえしなきゃ、奪ったりしないから安心しなよ」
「貴様…死にたいのか…」
部屋の窓から顔を出すと、何やら不穏な空気を漂わす二人が見えた。
「やめておきなさい…ほら、お二人を呼んでいますよ」
その間を、割るように入る天霧さん。
その顔が、聞いてはいけないと言っている様だったので、何も聞かない事にした。