終焉の刻
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私達は、会津ヘ行く準備が整うまで、下総・流山へ身を隠す事となった。
山南さん率いる羅刹隊は、平助君と共に一足先に会津ヘと向かい、斎藤さんは、市川で新武装備の訓練を行っていた。
その日、沖田さんと共に、潜伏先の庭で、鍛錬に励んでいた私。
正門へ視線を移した瞬間、島田さんが、慌てた様子で局長の元へ、駆けて行くのが見えた。
不安になった私達は、彼の後を追う。
「俺が相手の本陣へ行こう…勿論、新撰組の近藤だとは名乗らんよ…お前たちが逃げる時間くらいは…稼げるはずだ」
部屋から漏れる、近藤さんの声。
「そんなのバレるに決まってる!俺なら…心臓を貫かれない限り死なねぇ!時間稼ぎなら俺が適任だ!」
男達は、何を言っているのか。
理解し難い口論を、続ける二人。
「どういう事ですか…」
最悪の事態を想定しながら、その場に居合わせた千鶴に、状況を問う。
「窓の外を見てください…」
言われた通り、外に視線を移すと、数百の新政府軍が、私達が居る建物を取り囲んでいた。
「もう決めた事だ…トシ…これは命令だ…皆を連れ、市川の隊と合流するんだ」
時間は限られている。
土方さんを、説得する近藤さん。
「…俺に命令するのか…何…似合わない真似してるんだよ…」
震える唇で、絞り出した言葉。
「局長の命令は絶対なんだろう? 隊士達に切腹や羅刹化をさせておいて…自分だけは特別扱いか? それが、俺たちの望んだ武士の姿か?」
口を閉じたままの男に、語りかける。
「なあ、トシ…そろそろ楽にさせてくれないか…俺を担ぎ上げる為にあちこち走り回って、しまいには羅刹にまでなっちまって…そんなお前の姿を…見ている方が…俺は辛いんだ…」
近藤さんの言っている事は、勝手だと思う。
けれど、それも人の心。
「俺は…俺のした事は何だったんだ…侍になって御上に仕えて…戦いに勝ち続けて…そうすりゃあんたは一緒に喜んでくれると思って、俺は…」
彼は、きっと分かってる。
「すまん、お前にそこまでさせたのは俺だな…」
息を殺し、涙を必死に堪え、目を閉じる。
「…局長命令なんだろ」
顔を上げた彼の瞳に、もう迷いは無かった。
「そうだ」
副長としての、苦渋の選択。
隊士達を連れ、逃げることを選んだ土方さん。
「近藤さん…僕はここに残るよ…あなたの側から離れない」
沖田さんは、真っ直ぐ近藤さんを見据え、その場を動こうとしない。
「総司…」
敵は、数百。
幾ら沖田さんでも、闘って勝つ事なんて不可能。
「私も残ります…」
土方さんの想いと、沖田さんの想い。
そして、局長を失うことになる新撰組を、見捨てる事なんて出来なかった。
「ゆき!お前はまた…!」
土方さんの背を強引に押し、裏口の戸を固く閉ざした。
「土方さん、近藤さんは死なせません…必ずまた再会できます」
扉の向こうに在る、大切なモノ。
凛と前を向き、身を翻した。
必ず全部、護ってみせる。
山南さん率いる羅刹隊は、平助君と共に一足先に会津ヘと向かい、斎藤さんは、市川で新武装備の訓練を行っていた。
その日、沖田さんと共に、潜伏先の庭で、鍛錬に励んでいた私。
正門へ視線を移した瞬間、島田さんが、慌てた様子で局長の元へ、駆けて行くのが見えた。
不安になった私達は、彼の後を追う。
「俺が相手の本陣へ行こう…勿論、新撰組の近藤だとは名乗らんよ…お前たちが逃げる時間くらいは…稼げるはずだ」
部屋から漏れる、近藤さんの声。
「そんなのバレるに決まってる!俺なら…心臓を貫かれない限り死なねぇ!時間稼ぎなら俺が適任だ!」
男達は、何を言っているのか。
理解し難い口論を、続ける二人。
「どういう事ですか…」
最悪の事態を想定しながら、その場に居合わせた千鶴に、状況を問う。
「窓の外を見てください…」
言われた通り、外に視線を移すと、数百の新政府軍が、私達が居る建物を取り囲んでいた。
「もう決めた事だ…トシ…これは命令だ…皆を連れ、市川の隊と合流するんだ」
時間は限られている。
土方さんを、説得する近藤さん。
「…俺に命令するのか…何…似合わない真似してるんだよ…」
震える唇で、絞り出した言葉。
「局長の命令は絶対なんだろう? 隊士達に切腹や羅刹化をさせておいて…自分だけは特別扱いか? それが、俺たちの望んだ武士の姿か?」
口を閉じたままの男に、語りかける。
「なあ、トシ…そろそろ楽にさせてくれないか…俺を担ぎ上げる為にあちこち走り回って、しまいには羅刹にまでなっちまって…そんなお前の姿を…見ている方が…俺は辛いんだ…」
近藤さんの言っている事は、勝手だと思う。
けれど、それも人の心。
「俺は…俺のした事は何だったんだ…侍になって御上に仕えて…戦いに勝ち続けて…そうすりゃあんたは一緒に喜んでくれると思って、俺は…」
彼は、きっと分かってる。
「すまん、お前にそこまでさせたのは俺だな…」
息を殺し、涙を必死に堪え、目を閉じる。
「…局長命令なんだろ」
顔を上げた彼の瞳に、もう迷いは無かった。
「そうだ」
副長としての、苦渋の選択。
隊士達を連れ、逃げることを選んだ土方さん。
「近藤さん…僕はここに残るよ…あなたの側から離れない」
沖田さんは、真っ直ぐ近藤さんを見据え、その場を動こうとしない。
「総司…」
敵は、数百。
幾ら沖田さんでも、闘って勝つ事なんて不可能。
「私も残ります…」
土方さんの想いと、沖田さんの想い。
そして、局長を失うことになる新撰組を、見捨てる事なんて出来なかった。
「ゆき!お前はまた…!」
土方さんの背を強引に押し、裏口の戸を固く閉ざした。
「土方さん、近藤さんは死なせません…必ずまた再会できます」
扉の向こうに在る、大切なモノ。
凛と前を向き、身を翻した。
必ず全部、護ってみせる。