終焉の刻
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「副長、率直にお聞きします…今回の戦い…勝てると思いますか」
斎藤さんは、静かに問う。
「幕府のお偉いさんから、武器や大砲は預かってきたが…敵は外国から新型の武器を買い入れてやがる…その上、鳥羽伏見で見せた指揮や練度の高さ、今のままじゃ敵わねぇ」
核心をついた問に、包み隠さず本音で応える副長。
新政府軍と、真正面から戦っても勝てない。
土方さんの答えに、幹部達は揃って、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべた。
「失礼します!伝令です…」
更に追討ちをかけるように、飛び込んで来た島田さん。
"甲府城に敵が入った"
それは新撰組が、圧倒的に不利になったという事。
「ここは退くべきなんじゃないのか」
永倉さんが、俯いたまま口を開いた。
「臆したのか?」
彼の言葉に、納得がいかない様子の近藤さんは、怒りを顕にする。
睨み合う二人は、一触即発の危機に陥った。
「待ってくれ…!俺が江戸ヘ行って、援軍を連れて来る…皆それまでもう少し辛抱してくれねぇか…」
副長の機転により、取り巻く空気が変わる。
「あんたにそこまで言われちゃ、仕方ねぇな」
皆も納得し、土方さんは早々に出発する事となった。
別れ際、 "近藤さんの盾になる" と言った千鶴に、 "絶対に死ぬな" と告げた土方さん。
金打を交わす二人の姿。
(新撰組も、千鶴も、必ず私が護ります)
想い合う二人を背に、私はその場から引き返した。
皆が、暫しの眠りについた頃。
辺りに、敵が潜んでいないか警戒し、野営を敷いている森の周りを見て廻る。
木々の間に潜んだ、影を目撃した私は、気付かれないよう気配を消して近づいた。
「ゆきか…」
存在に気付かれ、僅かに動揺する。
けれど、影の正体は見知った顔で、私は胸を撫で下ろした。
「斎藤さん…こんな場所で一体何を…」
月を見上げ、儚げに呟く男。
「…少し考え事をしていただけだ」
彼は、ゆっくりと自分の過去を語り始めた。
旗本の師弟との仕合いで、相手を斬り殺してしまい、罪に問われて京へ逃れたこと。
新選組と出会い、見失ったもの、武士としての信念を取り戻したこと。
「勝つために、己が生き残るために刀を振るう」
純粋で、とても真っ直ぐな人。
「それが斎藤さんの思う姿なら…それを貫く事こそが、誠の武士なのだと思います」
確かに貫く誠の信念に、心が震える。
「そうか…」
私に無いモノを、持っている彼に問う。
「斎藤さん…死ぬのは恐いですか…」
此方に背を向け、静かに語る斎藤さん。
「死ぬこと自体は恐くはない…ただ、信じているものを見失うのが怖ろしい…」
彼の思う武士の姿は、時代遅れなのかもしれない。
けれど、その魂が変わらない事こそ、信じるべきモノなのだと私は思った。
「斎藤さん、貴方の剣は人を斬ることも、助けることもできる剣です…」
僅かに微笑む斎藤さん。
「今は只、微衷を尽くすのみか…」
彼の瞳の奥に、静かな闘志が灯された。
「そうですね…私も同じ想いです」
二人は共に頷き合い、夜明けと共に、戦場へ向かうべく、休息についた。
斎藤さんは、静かに問う。
「幕府のお偉いさんから、武器や大砲は預かってきたが…敵は外国から新型の武器を買い入れてやがる…その上、鳥羽伏見で見せた指揮や練度の高さ、今のままじゃ敵わねぇ」
核心をついた問に、包み隠さず本音で応える副長。
新政府軍と、真正面から戦っても勝てない。
土方さんの答えに、幹部達は揃って、苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべた。
「失礼します!伝令です…」
更に追討ちをかけるように、飛び込んで来た島田さん。
"甲府城に敵が入った"
それは新撰組が、圧倒的に不利になったという事。
「ここは退くべきなんじゃないのか」
永倉さんが、俯いたまま口を開いた。
「臆したのか?」
彼の言葉に、納得がいかない様子の近藤さんは、怒りを顕にする。
睨み合う二人は、一触即発の危機に陥った。
「待ってくれ…!俺が江戸ヘ行って、援軍を連れて来る…皆それまでもう少し辛抱してくれねぇか…」
副長の機転により、取り巻く空気が変わる。
「あんたにそこまで言われちゃ、仕方ねぇな」
皆も納得し、土方さんは早々に出発する事となった。
別れ際、 "近藤さんの盾になる" と言った千鶴に、 "絶対に死ぬな" と告げた土方さん。
金打を交わす二人の姿。
(新撰組も、千鶴も、必ず私が護ります)
想い合う二人を背に、私はその場から引き返した。
皆が、暫しの眠りについた頃。
辺りに、敵が潜んでいないか警戒し、野営を敷いている森の周りを見て廻る。
木々の間に潜んだ、影を目撃した私は、気付かれないよう気配を消して近づいた。
「ゆきか…」
存在に気付かれ、僅かに動揺する。
けれど、影の正体は見知った顔で、私は胸を撫で下ろした。
「斎藤さん…こんな場所で一体何を…」
月を見上げ、儚げに呟く男。
「…少し考え事をしていただけだ」
彼は、ゆっくりと自分の過去を語り始めた。
旗本の師弟との仕合いで、相手を斬り殺してしまい、罪に問われて京へ逃れたこと。
新選組と出会い、見失ったもの、武士としての信念を取り戻したこと。
「勝つために、己が生き残るために刀を振るう」
純粋で、とても真っ直ぐな人。
「それが斎藤さんの思う姿なら…それを貫く事こそが、誠の武士なのだと思います」
確かに貫く誠の信念に、心が震える。
「そうか…」
私に無いモノを、持っている彼に問う。
「斎藤さん…死ぬのは恐いですか…」
此方に背を向け、静かに語る斎藤さん。
「死ぬこと自体は恐くはない…ただ、信じているものを見失うのが怖ろしい…」
彼の思う武士の姿は、時代遅れなのかもしれない。
けれど、その魂が変わらない事こそ、信じるべきモノなのだと私は思った。
「斎藤さん、貴方の剣は人を斬ることも、助けることもできる剣です…」
僅かに微笑む斎藤さん。
「今は只、微衷を尽くすのみか…」
彼の瞳の奥に、静かな闘志が灯された。
「そうですね…私も同じ想いです」
二人は共に頷き合い、夜明けと共に、戦場へ向かうべく、休息についた。