戦乱の刻
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日は沈み、森は冷たい風に揺れる。
一面紅く染まった戦場で、散っていった彼等を宥めているように思えた。
井上さんを置いて行く事は、できない。
安らかに眠る隊士に、手を伸ばそうとした私を阻み、目を細めた風間さん。
「ゆき…ついて来い…その男は俺が運ぶ」
彼の申し出を断る理由も無く、私は素直に頷いた。
「‥‥はい」
冷たくなった男を、腕に担ぎ上げ、歩き出した風間さんの背を追う私。
空を見上げると、白い結晶が哀しみに暮れた私の上に、ゆらりと舞い落ちる。
それはまるで、弔いの様に思えた。
静かな山道を、二人は言葉を交わす事もなく、ただ前を向いて歩いた。
森を抜けた先に、小屋を見つけた私達。
裏手には、小さな丘が開いていた。
「明日の朝…埋葬する…今夜はここで休むぞ」
井上さんを地に降ろし、小屋の中へ入って行く風間さん。
私は緊張から、その場に張り付き、動けなくなっていた。
「何を考えているのか知らんが…無理やり襲おうなど…愚かな事をするつもりはない…早く入れ」
半ば呆れた様子の風間さんは、今度こそ扉を閉め、中へ入ってしまった。
恐る恐る、小屋の扉を開ける私。
背を向けて座っている彼とは、少し離れた場所へ、腰を降ろした。
そんな私とは対象的に、風間さんは平然と囲炉裏に火を焚べている。
「ゆき…傍に来い」
この男は何を言い出すのか。
「‥‥遠慮しておきます」
視線が絡まる寸前で、顔を膝に埋めた私。
「…囲炉裏の傍に来いと言っている」
溜息を吐き、立ち上がった風間さんはゆっくりとこちらに歩んで来る。
「どうした…ゆき…」
彼は、俯く私を軽々と抱き上げると、囲炉裏の側に降ろし、自らも隣に腰を下ろした。
暗闇の中、炎に浮かぶ妖艶な横顔。
紅い双眼に囚われ、心惹かれたのはいつの頃からだろう。
「風間さんが…好きです‥‥」
思わず溢れた心の声。
一瞬、自分の口から出た言葉が、わからなくなる。
慌てて、彼との距離を取ろうとした私。
しかし、既に手遅れだった。
「あの…!先程のは…!」
必死で言い訳を探そうと藻掻く。
僅かに微笑んだ男は、その腕に私を閉じ込め、そっと唇を重ねた。
「今日はこれで赦してやろう‥‥もう休め」
囲炉裏の側、温かい腕の中に抱かれたまま横たわる。
意識を完全に手放すまでの間、胸の鼓動は勢いを増し、頬の熱も、冷めることはなかった。
「ゆき…愛している」
彼の口から囁かれた、甘い言葉を耳にしながら、私は夢の中へと堕ちていった。
一面紅く染まった戦場で、散っていった彼等を宥めているように思えた。
井上さんを置いて行く事は、できない。
安らかに眠る隊士に、手を伸ばそうとした私を阻み、目を細めた風間さん。
「ゆき…ついて来い…その男は俺が運ぶ」
彼の申し出を断る理由も無く、私は素直に頷いた。
「‥‥はい」
冷たくなった男を、腕に担ぎ上げ、歩き出した風間さんの背を追う私。
空を見上げると、白い結晶が哀しみに暮れた私の上に、ゆらりと舞い落ちる。
それはまるで、弔いの様に思えた。
静かな山道を、二人は言葉を交わす事もなく、ただ前を向いて歩いた。
森を抜けた先に、小屋を見つけた私達。
裏手には、小さな丘が開いていた。
「明日の朝…埋葬する…今夜はここで休むぞ」
井上さんを地に降ろし、小屋の中へ入って行く風間さん。
私は緊張から、その場に張り付き、動けなくなっていた。
「何を考えているのか知らんが…無理やり襲おうなど…愚かな事をするつもりはない…早く入れ」
半ば呆れた様子の風間さんは、今度こそ扉を閉め、中へ入ってしまった。
恐る恐る、小屋の扉を開ける私。
背を向けて座っている彼とは、少し離れた場所へ、腰を降ろした。
そんな私とは対象的に、風間さんは平然と囲炉裏に火を焚べている。
「ゆき…傍に来い」
この男は何を言い出すのか。
「‥‥遠慮しておきます」
視線が絡まる寸前で、顔を膝に埋めた私。
「…囲炉裏の傍に来いと言っている」
溜息を吐き、立ち上がった風間さんはゆっくりとこちらに歩んで来る。
「どうした…ゆき…」
彼は、俯く私を軽々と抱き上げると、囲炉裏の側に降ろし、自らも隣に腰を下ろした。
暗闇の中、炎に浮かぶ妖艶な横顔。
紅い双眼に囚われ、心惹かれたのはいつの頃からだろう。
「風間さんが…好きです‥‥」
思わず溢れた心の声。
一瞬、自分の口から出た言葉が、わからなくなる。
慌てて、彼との距離を取ろうとした私。
しかし、既に手遅れだった。
「あの…!先程のは…!」
必死で言い訳を探そうと藻掻く。
僅かに微笑んだ男は、その腕に私を閉じ込め、そっと唇を重ねた。
「今日はこれで赦してやろう‥‥もう休め」
囲炉裏の側、温かい腕の中に抱かれたまま横たわる。
意識を完全に手放すまでの間、胸の鼓動は勢いを増し、頬の熱も、冷めることはなかった。
「ゆき…愛している」
彼の口から囁かれた、甘い言葉を耳にしながら、私は夢の中へと堕ちていった。